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『君と出会った春に』  作者: ともり。


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学食

# 第八話 学食


高校生活にも、

少しずつ慣れ始めていた。


朝、

教室へ入る。


授業を受ける。


昼休みになる。


放課後に帰る。


毎日同じことの繰り返し。


でも、

中学とは少し違った。


知らない人ばかりだった教室にも、

少しずつ話せるやつが増えてきて。


名前を呼ばれることも増えた。


高校という場所に、

ゆうまは少しずつ馴染み始めていた。


---


昼休み。


「西條、学食行く?」


クラスメイトに声をかけられる。


「あー……。」


ゆうまは少し迷ったあと、

スマホを見る。


『今から行く』


まさきからLINEが来ていた。


自然と口元が緩む。


「ごめん、

先約ある。」


「おー、彼女?」


「違う。」


周りが笑う。


ゆうまは適当に誤魔化して、

席を立った。


---


学食は、

今日も騒がしかった。


トレーの音。


笑い声。


席を探して歩く生徒たち。


その奥で、

まさきが手を上げる。


「ゆうま、こっち。」


その瞬間。


なぜか少し安心する。


「今日混んでるな。」


席に座りながら、

ゆうまが言う。


「新入生多いからじゃね。」


まさきはうどんを食べながら笑った。


「お前また麺。」


「美味いし。」


「偏りすぎ。」


そんな会話をしながら、

ゆうまは周りをぼんやり見る。


すると。


「あ、高瀬。」


知らない男子が、

まさきへ声をかけた。


「今日放課後カラオケ行く?」


「あー、どうしよ。」


「来いって。」


まさきは少し困ったように笑う。


「西條も来る?」


急に話を振られて、

ゆうまは少し戸惑った。


「あ、いや……。」


人が多い場所は、

あまり得意じゃない。


すると、

まさきが笑った。


「こいつそういうの苦手だから。」


“こいつ”


その呼び方が、

なんだか嬉しかった。


でも。


「じゃあ高瀬だけでも来いよ。」


「んー、考えとく。」


男子たちは笑いながら去っていく。


その背中を見ながら、

ゆうまは少しだけ黙った。


「……友達増えたな。」


小さく言う。


まさきは不思議そうに顔を上げた。


「まぁ高校だし。」


「ふーん。」


胸の奥が、

少しだけざわつく。


別に悪いことじゃない。


むしろ普通だ。


でも。


自分の知らない場所で、

まさきの世界が広がっていく感じがした。


---


放課後。


教室では、

みんなが騒いでいた。


「今日どっか行く?」

「ゲーセン行こうぜ。」


そんな声が飛び交う。


ゆうまは荷物をまとめながら、

スマホを見る。


『ごめん、今日クラスのやつらと帰る!』


まさきからLINEが来ていた。


その短い文を見て、

少しだけ動きが止まる。


『りょーかい』


短く返す。


すぐに既読がついた。


『また明日!』


その言葉に、

少しだけ安心する。


でも。


胸の奥に、

小さな違和感が残った。


---


一人で校門を出る。


夕方の風。


少し赤くなった空。


中学の頃は、

毎日のように一緒に帰っていた。


それが当たり前だった。


でも、

高校に入ってから、

少しずつ変わってきている。


嫌いになったわけじゃない。


話さなくなったわけでもない。


でも。


“ずっと一緒”では、

なくなってきていた。


---


夜。


ベッドに寝転びながら、

ゆうまはスマホを見る。


SNSには、

クラスメイトたちの写真。


笑っているまさきも映っていた。


知らないやつらに囲まれて、

楽しそうに笑っている。


その顔を見て。


安心した。


同時に。


少しだけ、

苦しくなった。


スマホが震える。


『今日うるさすぎて疲れた』


まさきからだった。


思わず笑う。


『自分で行ったんだろ』


『それな』


すぐに返信が来る。


そのテンポが、

少し嬉しかった。


『でも』


通知が続く。


『ゆうまと帰る方が楽』


その一文を見た瞬間。


胸の奥が、

熱くなる。


ゆうまはスマホを胸に押し当てて、

小さく息を吐いた。


期待するな。


そう思うのに。


その言葉だけで、

また嬉しくなってしまう自分がいた。


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