別クラス
# 第七話 別クラス
四月。
高校の入学式。
真新しい制服。
知らない校舎。
人で埋まった昇降口。
中学とは違う空気に、
ゆうまは少しだけ緊張していた。
「ネクタイ曲がってる。」
隣で、
まさきが笑う。
「うるさ。」
「だから言ったじゃん。」
まさきが手を伸ばして、
ゆうまのネクタイを直す。
距離が近い。
中学の頃から慣れているはずなのに、
高校の制服を着ているだけで、
妙に意識してしまう。
「はい、完成。」
「……どうも。」
まさきは満足そうに笑った。
その笑顔を見て、
少しだけ緊張が和らぐ。
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昇降口の前には、
クラス分け表が貼られていた。
新入生たちが集まって、
ざわざわ騒いでいる。
「見える?」
「押すなって!」
ゆうまは人混みの後ろから、
ぼんやり表を見る。
『一年二組 西條 悠真』
自分の名前を見つける。
そのまま、
視線を下へ動かす。
『一年五組 高瀬 まさき』
一瞬、
思考が止まった。
「……え。」
何度見ても、
クラス番号は違っていた。
別クラス。
その二文字が、
妙に胸に引っかかる。
「ゆうま。」
後ろから声がする。
振り返ると、
まさきがいた。
「見た?」
「……見た。」
「別だったな。」
まさきは少し困ったように笑う。
「まぁでも、
休み時間あるし。」
そう言ってくれたことに、
少しだけ安心する。
「……だな。」
ゆうまも笑った。
その時はまだ。
高校でも、
今までみたいに一緒にいられると、
どこかで思っていた。
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教室へ入る。
中学とは違う顔ぶれ。
知らない声。
知らない空気。
ゆうまは窓側の席へ座り、
小さく息を吐いた。
「西條って、
中学どこ?」
前の席の男子が振り返る。
「あー、南中。」
「マジ?
俺北中。」
そんな会話が始まる。
周りでも、
自己紹介みたいな話が続いていた。
みんな、
新しい関係を作ろうとしている。
その空気に、
少し疲れる。
ふと、
廊下を見る。
そこに、
まさきはいない。
当たり前なのに。
少しだけ、
変な感じがした。
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昼休み。
「ゆうま!」
教室のドアから、
まさきが顔を出した。
その瞬間、
胸が少し軽くなる。
「飯行こ。」
「ん。」
二人で学食へ向かう。
廊下には、
同じように移動する生徒たち。
「どうだった?」
まさきが聞く。
「疲れた。」
「わかる。」
「知らんやつ多すぎ。」
「高校だからな。」
まさきが笑う。
その声を聞くだけで、
少し落ち着く。
学食は思っていたより広くて、
人も多かった。
「高校って感じする。」
「それっぽいな。」
二人で席に座る。
周りは騒がしい。
でも、
向かいにまさきがいるだけで、
少し安心した。
「友達できそう?」
まさきが聞く。
「無理。」
「即答じゃん。」
「まさきは?」
「まぁ、
なんとかなるんじゃね。」
実際、
まさきはすぐ周りと話していた。
誰とでも自然に話せる。
そういうところ、
やっぱりすごいと思う。
「ゆうま。」
「ん?」
「なんか安心した。」
「なにが。」
「同じ学校で。」
その言葉に、
胸が少し熱くなる。
ゆうまは誤魔化すように、
ジュースを飲んだ。
「……今さら。」
「まぁな。」
まさきが笑う。
その笑顔を見ながら、
ゆうまは思う。
別クラスでも。
きっと大丈夫だ。
まだこの時は、
本気でそう思っていた。
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放課後。
校門前。
夕方の風が、
新しい制服を揺らしていた。
「高校広すぎ。」
ゆうまが言う。
「迷子になるよな。」
「お前絶対一回迷う。」
「もう迷った。」
「早。」
二人で笑う。
中学の頃と、
変わらない帰り道。
変わったのは、
制服だけ。
そう思っていた。
「明日も昼行く?」
まさきが聞く。
「いいよ。」
「じゃ、
また明日。」
軽く手を振る。
その姿を見ながら、
ゆうまも手を上げた。
“また明日”
その言葉が、
まだ当たり前だった頃。




