表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『君と出会った春に』  作者: ともり。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/18

進路

# 第十六話 進路


四月。


高校三年生になった。


校舎も。


制服も。


隣にいるまさきも。


何も変わっていないはずなのに。


“最後の一年”


その言葉だけが、

妙に重かった。


---


「三年とか早すぎ。」


朝の教室。


ゆうまは机に突っ伏しながら呟く。


「去年も同じこと言ってた。」


隣で、

まさきが笑った。


三年になっても、

二人は同じクラスだった。


クラス表を見た瞬間、

二人とも少し笑ってしまったくらいには。


「また一緒じゃん。」


「腐れ縁すぎる。」


そう言いながら。


内心、

嬉しかった。


---


でも。


三年になってから、

周りの空気は少し変わった。


「オープンキャンパスどうする?」

「推薦考えてる?」


そんな会話が増える。


進路。


将来。


卒業後。


みんな、

少しずつ“その先”を見始めていた。


「まさき、

大学どこ考えてんの?」


昼休み。


クラスメイトに聞かれて、

ゆうまの手が止まる。


まさきは少しだけ考えてから、

口を開いた。


「県外かな。」


その瞬間。


胸が、

大きく鳴った。


「え。」


思わず声が漏れる。


まさきが振り返った。


「あ。」


気まずそうに笑う。


「まだ決定じゃないけど。」


周りは普通に会話を続けている。


「すげー。」

「一人暮らし?」


そんな声が聞こえる中、

ゆうまだけが言葉を失っていた。


県外。


つまり。


離れる。


今までみたいには、

会えなくなる。


頭では理解しているのに、

胸がうまく追いつかなかった。


---


放課後。


夕焼けの教室。


クラスメイトたちは、

ほとんど帰っていた。


「……なんで言わなかったの。」


気づけば、

そんな言葉が出ていた。


まさきは少し黙る。


窓の外から、

運動部の声が聞こえる。


「まだ決まってないし。」


「でも考えてたんだろ。」


「……うん。」


沈黙。


ゆうまは視線を落とす。


別に、

怒ってるわけじゃない。


ただ。


怖かった。


また、

離れてしまう気がして。


「ゆうま。」


まさきが小さく呼ぶ。


「俺さ。」


少しだけ困ったように笑った。


「去年みたいになるの、

嫌なんだよね。」


胸がぎゅっと締めつけられる。


「だから、

ちゃんと言おうと思ってた。」


その言葉が、

やけに優しかった。


ゆうまは何も言えなかった。


“嫌だ”


その一言だけが、

喉まで出かかっていた。


---


帰り道。


春の夜風が、

少し冷たかった。


二人で並んで歩く。


でも今日は、

会話が少ない。


「県外、

行きたいの。」


ゆうまが小さく聞く。


まさきは少し考える。


「……わかんない。」


正直な声だった。


「でも、

挑戦したい気持ちはある。」


その答えが、

余計に苦しかった。


まさきは、

ちゃんと前を見ている。


未来を考えている。


その横で。


自分だけが、

“離れたくない”ばかり考えていた。


「ゆうまは?」


「え。」


「将来どうしたいの。」


急に聞かれて、

言葉に詰まる。


考えていなかったわけじゃない。


でも。


まさきがいる未来ばかり、

考えていた。


「……まだわかんない。」


小さく答える。


まさきは笑わなかった。


「そっか。」


それだけ言って、

前を向く。


沈黙。


でも、

嫌な沈黙じゃなかった。


ただ。


“未来”が、

少しだけ怖かった。


---


別れ道。


「じゃあまた明日。」


まさきが言う。


「ん。」


いつもの会話。


いつもの距離。


なのに。


“いつか終わる”


その現実だけが、

急に近づいてきた気がした。


まさきが手を振る。


ゆうまも小さく振り返す。


離れていく背中を見ながら、

胸が苦しくなる。


好きだ。


離れたくない。


でも。


その言葉を伝えたら。


今の関係が、

終わってしまいそうで怖かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ