隣
# 第十三話 隣
高校二年になってから。
まさきと一緒にいる時間が、
また少しずつ増えていた。
昼休み。
移動教室。
放課後。
去年、
空いてしまった距離を埋めるみたいに。
自然と隣にいることが増えていく。
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「ゆうまー。」
昼休み。
机に突っ伏していた背中を、
軽く叩かれる。
「なに。」
「購買。」
「また?」
「腹減った。」
「さっき食っただろ。」
「別腹。」
「女子か。」
まさきが笑う。
その笑い声を聞くだけで、
胸の奥が少し軽くなる。
二人で廊下を歩く。
窓から入る春の風。
騒がしい昼休み。
そんな何でもない時間が、
やけに心地よかった。
「そういえば。」
まさきが言う。
「去年、
全然一緒にいなかったな。」
ゆうまの足が少し止まりそうになる。
でも。
まさきは前を向いたままだった。
「……まぁ。」
曖昧に返す。
「なんか、
気づいたら離れてた。」
その言葉が、
静かに胸へ刺さる。
気づいたら。
本当に、
そうだった。
喧嘩したわけじゃない。
嫌いになったわけでもない。
でも。
少しずつ、
距離だけが空いていった。
「ごめんな。」
突然、
まさきが小さく言った。
ゆうまは思わず顔を上げる。
「え。」
「いや、
なんとなく。」
まさきは少し困ったように笑った。
「もっと話しかければよかった。」
その言葉に、
胸が苦しくなる。
たぶん。
同じだった。
ゆうまも。
話しかけたかった。
戻りたかった。
でも、
前みたいにできなくて。
少しずつ、
時間だけが過ぎていった。
「……俺も。」
ゆうまが小さく言う。
「え?」
「俺も、
話しかければよかった。」
まさきは少し目を丸くして。
それから、
安心したみたいに笑った。
「そっか。」
春の風が吹く。
去年の冬より、
少しだけ暖かかった。
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放課後。
夕焼けが、
教室をオレンジ色に染めていた。
「ここわかんね。」
ゆうまが問題集を見ながら言う。
「どれ。」
まさきが隣へ来る。
肩が近い。
ノートを覗き込む横顔。
近づくたび、
胸がうるさくなる。
去年も、
こんな風に隣に座っていた。
でも今は。
あの頃より、
少しだけ意識してしまう。
「ゆうま?」
「……ん?」
「聞いてる?」
「あー、ごめん。」
「珍し。」
まさきが笑う。
その横顔を見ながら、
ゆうまは思う。
前より、
ちゃんと好きになってる。
離れた時間があったから。
失いかけたから。
今こうして隣にいることが、
前よりずっと特別に感じる。
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帰り道。
夕方の住宅街。
少し長くなった影。
二人で並んで歩く。
「今年のクラス、
結構当たりじゃね?」
まさきが言う。
「まぁな。」
「去年より楽。」
その言葉に、
少しだけ胸が痛む。
去年。
楽しくなかったわけじゃない。
でも。
どこか、
足りなかった。
たぶん、
お互い。
「なぁ。」
まさきが小さく言う。
「ん?」
「また一緒に帰れて、
ちょっと嬉しい。」
ゆうまの心臓が、
大きく鳴る。
「……急になに。」
「いや、
なんとなく。」
そう言って笑う顔は、
中学の頃と変わらない。
本当に、
ずるいと思う。
「お前、
そういうこと普通に言うよな。」
「え、ダメ?」
少し首を傾げる。
その仕草に、
胸が苦しくなる。
「……ダメじゃない。」
ゆうまが小さく言うと、
まさきは少し嬉しそうに笑った。
その顔を見て。
ゆうまは思う。
もう。
前みたいに離れるのは、
嫌だって。




