再会
# 第十二話 再会
四月。
高校二年の春。
校内には、
また新しい空気が流れていた。
クラス替えの日。
廊下には、
去年と同じように人だかりができている。
「頼むから同じクラス来い。」
「終わった、最悪。」
騒がしい声を聞きながら、
ゆうまはぼんやりクラス表を見上げた。
正直、
そこまで期待はしていなかった。
どうせ、
また別だろう。
そう思っていた。
『二年四組 西條 悠真』
自分の名前を見つける。
そのまま視線を横へ動かして。
ゆうまの動きが止まった。
『高瀬 まさき』
数秒、
思考が追いつかなかった。
「……え。」
見間違いかと思って、
もう一回見る。
でも。
何度見ても、
同じクラスだった。
胸の奥が、
大きく鳴る。
その瞬間。
「ゆうま。」
後ろから、
聞き慣れた声がした。
振り返る。
まさきだった。
少し伸びた髪。
去年より大人っぽくなった顔。
でも、
笑い方は変わっていない。
「……同じだな。」
まさきが笑う。
ゆうまは少し遅れて、
小さく笑った。
「だな。」
それだけ。
たったそれだけなのに。
止まっていた時間が、
また動き出した気がした。
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新しい教室。
窓から入る春の風。
去年より少しだけ、
落ち着いた空気。
「西條ー。」
クラスメイトに呼ばれる。
「あ、お前同じクラスか。」
「よろしく。」
そんな会話をしながら、
ゆうまはふと前を見る。
数列前。
まさきが、
誰かと笑いながら話していた。
その姿を見て、
胸が少しだけざわつく。
でも。
去年みたいな苦しさじゃなかった。
“また同じ教室にいる”
それだけで、
少し安心している自分がいた。
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昼休み。
「ゆうま。」
まさきが机の横へ来る。
「飯行こ。」
その言葉が、
懐かしかった。
中学の頃みたいで。
高校に入ったばかりの頃みたいで。
「……いいよ。」
二人で教室を出る。
廊下には、
春の光が差し込んでいた。
「なんか久しぶりだな。」
まさきが笑う。
「何が。」
「こういうの。」
ゆうまは少し黙る。
確かに、
久しぶりだった。
一緒に昼へ行くのも。
並んで歩くのも。
こんな風に、
自然に話すのも。
「去年、
全然タイミング合わなかったし。」
まさきが小さく言う。
その言葉に、
胸が少し痛む。
“タイミング”
たったそれだけで、
離れてしまった。
でも。
たぶん、
お互い少し怖かったのだ。
前みたいに話せなくなることが。
距離を感じることが。
だから、
少しずつ避けてしまった。
そんな気がした。
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学食。
騒がしい昼休み。
でも、
向かいにまさきが座っているだけで、
少し落ち着く。
「二年なった感じしない。」
ゆうまが言う。
「わかる。」
まさきが笑う。
「でもまた同じクラスでよかった。」
その言葉に、
心臓が少し跳ねる。
「……そう?」
「うん。」
まさきは当たり前みたいに頷いた。
「なんか安心する。」
また。
そういうことを、
普通に言う。
ゆうまは視線を逸らす。
「……お前、
変わんないな。」
「何が。」
「そういうとこ。」
まさきは不思議そうに笑った。
その顔を見て、
ゆうまも少し笑う。
離れていた時間。
話せなかった日々。
全部が消えたわけじゃない。
でも。
こうしてまた隣にいると、
少しだけ思ってしまう。
もしかしたら。
もう一回、
戻れるのかもしれないって。
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放課後。
校門を出る。
春の風が、
制服を揺らしていた。
「そういえば。」
まさきが言う。
「久しぶりに一緒に帰るな。」
その一言に、
胸がぎゅっと締めつけられる。
本当に、
久しぶりだった。
去年の春は、
当たり前だったのに。
「……だな。」
ゆうまは小さく笑う。
隣を歩く距離感。
歩幅。
沈黙。
全部、
懐かしかった。
「ゆうま。」
「ん?」
「今年は、
もっと話そうな。」
まさきが少し照れたみたいに笑う。
その顔を見た瞬間。
胸の奥が、
痛いくらい熱くなった。
たぶん。
ずっと、
会いたかった。




