冬
# 第十一話 冬
十二月。
吐く息が白くなった。
朝の校舎は冷たくて、
教室の窓も少し曇っている。
「寒っ……。」
ゆうまは肩を縮めながら、
自分の席へ座った。
ストーブの周りでは、
クラスメイトたちが騒いでいる。
「そこずる。」
「早い者勝ちな。」
そんな声をぼんやり聞きながら、
ゆうまはスマホを見る。
通知は、
何も来ていなかった。
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最近。
まさきと話す時間が、
かなり減っていた。
クラスが違う。
友達も違う。
放課後も、
別々。
たまにLINEは来る。
会えば普通に話す。
でも。
“前みたい”では、
もうなかった。
それを、
ちゃんと感じ始めていた。
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昼休み。
購買へ向かう途中。
廊下の向こうに、
まさきが見えた。
友達と笑いながら歩いている。
その横顔は、
楽しそうだった。
ゆうまは少しだけ立ち止まる。
声をかけようか迷う。
でも。
「あ、高瀬ー!」
別のクラスのやつが、
まさきへ駆け寄る。
自然に輪が広がっていく。
その光景を見ていると、
急に自分だけ置いていかれた気がした。
「……。」
結局、
声はかけられなかった。
そのまま視線を逸らして、
歩き出す。
別に、
嫌われたわけじゃない。
ただ。
少しずつ、
生活が変わっていっただけ。
そう思おうとした。
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放課後。
外はもう暗かった。
教室には、
数人しか残っていない。
ゆうまは窓際の席で、
ぼんやりスマホを見ていた。
『今日帰る?』
打ちかけて、
消す。
迷って、
また打つ。
でも結局、
送れなかった。
最近は、
自分から誘うことが増えていた。
前は、
まさきから来ることも多かったのに。
そんな小さな変化が、
やけに苦しい。
「西條、帰んねーの?」
クラスメイトに声をかけられる。
「あー、帰る。」
慌ててスマホを閉じる。
その瞬間。
画面が震えた。
心臓が跳ねる。
でも。
通知は、
クラスのグループLINEだった。
「……はは。」
自分でも引くくらい、
期待していた。
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帰り道。
冬の風は冷たかった。
マフラーに顔を埋めながら、
ゆうまは一人で歩く。
中学の頃。
高校に入ったばかりの頃。
毎日のように、
隣にまさきがいた。
その時間が、
当たり前だった。
でも。
当たり前って、
こんなに簡単に変わるんだ。
そう思った。
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夜。
ベッドへ寝転びながら、
スマホを見る。
SNSには、
まさきの写真が流れてきた。
クラスメイトたちと笑っている。
楽しそうだった。
ゆうまは画面を閉じる。
胸の奥が、
少し痛かった。
すると。
スマホが震える。
『今日寒すぎ』
まさきからだった。
たったそれだけ。
でも。
胸が少し熱くなる。
『わかる』
返信する。
すぐに既読がつく。
『マフラー買えばよかった』
『毎年言ってるじゃん』
『来年こそ』
思わず少し笑う。
やっぱり、
話すと落ち着く。
まだ。
完全に離れたわけじゃない。
そう思いたかった。
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数日後。
廊下ですれ違った。
「あ。」
同時に声が出る。
まさきが少し笑った。
「久しぶり。」
その言葉に、
胸が締めつけられる。
久しぶり。
前なら、
そんな言葉、
使わなかったのに。
「……だな。」
ゆうまも笑う。
でも。
そのあと、
何を話せばいいかわからなかった。
沈黙。
気まずいわけじゃない。
でも。
前みたいに、
自然に言葉が出てこない。
「じゃ、
俺教室戻る。」
まさきが言う。
「あ、うん。」
軽く手を振る。
離れていく背中を見ながら、
ゆうまは立ち尽くしていた。
追いかければ、
まだ間に合う気がした。
でも。
どうやって、
前みたいに戻ればいいのか。
もう、
わからなかった。
その冬。
二人は、
少しずつ離れていった。




