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無碍なる塔の前世持ち    アンチ光属性 底辺からの異世界職業行脚 或いは人牛の件  作者: いちめ
アンチ光属性 格差社会で教育計画 或いはラミア―の件

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19-1 復習 振りかえろう

 ね、聞いて!外出許可が下りたんですよ!盗みの疑いをかけられて逃亡しているゼフィロスをずっと迎えに行きたかったの。でもアタシ、施療院の敷地から出るのを禁じられていて……それがついに許可が下りたの!きっと神様が頑張ってるアタシのお願いを聞いてくれた、ん…だぁはぁああああああああ?!っザケんなクソがぁああああ!確かに外出許可は欲しかったが、10日で自分の身を買い上げろ?出来なきゃ奴隷として入墨入れろだと?!5年以上はかかると思っていたのに10日って何よ、10日って!クッソジジイぃいいいいぃぃ!

 と、言うのはティタ家は家令のサトゥルノに買われた身に相応しくないと難癖付けられての事である。あれは蒼の4月も3日。外出許可どうしようかなとか、アタシが行くまでゼフィロス上手く隠れてろよとか思いながらも、朝の掃除を済ませた後だった。ここに住んでるんじゃね?という程に在室しているクラテスは掃除中もアタシの後をついて回り邪魔をしてくれる。「そのアオカビだが…」前日までのやり取りを踏まえての質問の嵐なのだ。アタシが「前」世知識を披露した後の午後、クラテスはその検証や資料集めをしているらしい。で、翌日はその不明点から。アタシにとっては「前」世雑学程度でも驚きと発見の連続らしいよ。え?社会への影響?そこはあんまり考えていない。だって6才だもん(ウソ)。ここの所のテーマは人類に偉大なる発展を齎した抗生物質についてよ。感染症から人類を救った20世紀の発見、医学史に燦たるアレ、ペニシリンですがな。「細菌って何?」から始めたにしては中々の進捗具合でしょう。と、言っても、アタシが覚えてる範囲になっちゃうんだけどね。

「アオカビの一種に細菌の増殖を抑制したり、殺菌の作用があるものがある」

前日はここまでだったので、「ご飯食べないと続きをやりませんよ」落ち着かせるのに手を焼いた。

「その抗生物質というものについては「塔」の医療を見聞した記録にある」

へえ。「塔」にはあるんだね。「今」世の超文明都市、「塔」ことアトランティアからは留学生が様々な物を持ち帰っているが、再現できるとは限らない。勿論アタシにもどのカビがそいつなのかは判別はつかない。「前」世記憶から思いついたことを引っ張り出す。

「ごく普通の菌を培養するときに偶然そのアオカビが混ざっちゃったらしいよ。で、そいつの周りにほかの菌が生育しなくなった。これは何だ?というので発見された、そんな話だったよ」

使用に足る抗生物質が誕生するまでには年月もかかったと記憶している。「前」世トリビアですわ。この施療院で再現するには設備を整える所から始めなくてはならないが、神の加護がある「今」世、結構早く何とかなりそうな気もするのよ。完成すれば効果は絶大。「今」世では病気や怪我で簡単に人は死ぬけど、まず人が死ななくなる。そんなやり取りの途中だった。

「クラテス様はご在室か?」

「何か?」

 思考の邪魔をされたクラテスはティタ家は本家家令のサトゥルノに不快を露にした。

「その使用人の子どもについて少々」

来客らしいと気付いた時点で椅子からは居りて、壁際で膝をついている。アタシは6才の子どもでそういう立場だ。そのアタシに少々とは。簡単に言えばサトゥルノの用件はアタシが気に入らないと言う話だった。

1. 巷で話題の巫女からアタシが予言を受けた所為でティタ家や施療院の使用人・奴隷の扱いが云々されている

2. アタシを訪ねて来る者が複数ある

3. 外出許可を申請している

である。1は通りすがりであってアタシは被害者だ。2は施療院の敷地から出てはならないと言われているから向こうから尋ねてくるのである。3は初耳。お願いはしたけれど、本家に申請?メリナかクラテスだろうか。確かにアタシは比較的自由にやらせてもらっているが、それは年齢を鑑みた(ウソ)交渉の結果だ。ちゃんと仕事はしている。それを予言?手引き?申請書?全部アタシがやったのとは違う。違うだろ!このハ〇!脳内でアタシが荒ぶっちゃうのも無理はない。で、それを理由に奴隷らしく入墨を入れろと言って来たのである。この場で。

(………)

サトゥルノに従って来た男はただの従者ではなかったのだ。担いでいた篭から道具を取り出し、部屋の中央の卓に並べるのを見て分った。男は入墨を入れる職人だ。

 金で売られた時からその恐れは常にあった。エリトゥラ商会の娼館に居た時もそうだったし、市政官邸で働くのを派遣の形にしてもらったのも理由の一つにそれがあった。入墨を入れれば生涯消えない。例え自分を買い上げて自由の身になったとしても、かつて奴隷であったことが一目瞭然。平民に対する貴族なんてものじゃない。奴隷は何をしてもいい相手。人の数には入らない。本家やクラテスとの交渉で上手く避けられたと思っていたのに、今更かよ!

「ア、アタシ、入墨打たれちゃうの?」

難を逃れられるならいくらでも媚びる。クラテスにはアタシのそれが面従腹背に視えるだろう。そう。あたしは怯えているのではない。誰かにアタシの人生を左右されることに激怒しているのだ。その時の

「腕を出しなさい、クロノ」

「サトゥルノ、僕は許可しない」

クラテスの言葉にアタシは目を見張った。

 アタシの人生なんかクラテスには関係ない。アタシに入墨があろうが無かろうが。蔑まれ物を売ってもらえず、契約が出来ずに住まいが確保できず、暴行されても口を噤むしかなくても、国外へ出られずとも関係ない。アタシからは「前」世記憶の情報を可能な限り引き出せればいい筈だ。なのに。

(……前に父さんが死んだのかもって時にも付き合ってくれたっけ)

それは普通の人にはそんなに大したことではないのかもしれない。目の前の人間に対するちょっとした気遣い。ただそれだけかもしれない。だけど。

「さあ、クロノ、腕を出しなさい」

「構わんぞ、クロノ」

クラテスは言うのだ。もっと媚びてサトゥルノを丸め込め。アタシが望むようにしろ。アタシがありのままを擬態するのは、意識を濁らせ酩酊したくなるほど嫌なくせに。アタシ知ってるんだ。クラテスは自分の神の加護を疎ましく思ってるんだって。そんなものが無ければ、普通に貴族として生きて行けた。取り繕いと嘘ばかりの人間にうんざりして人を避け、薬で紛らわせるのではない人生を。

(………)

アタシのバカで損なところ。

アタシ、アタシの事を、立場や意思を誰かに考えてもらう事に慣れていない。世の中のほかの人にとっては当たり前のことでも、それがほんの少しであっても。だから

ため息を一つ。

「それはやめましょうか」

逆にそいつに甘えずに顔を上げて見せる。ありがとうって。まだ戦えるって。ちょっとも可愛く無いんだけどな。そしてアタシはそれを求めるサトゥルノに啖呵を切った。

「じゃ、アタシがアタシの稼ぎでアタシを買い上げる」

それなら文句はないだろう?あ?



 そんな経緯で10日で自分を買い戻せ、という事になっちゃった訳よ。アタシの金額はティタ家がアタシの親に支払った分、成人男性1~2年分の収入程。当然のように通常業務はある訳で、午後の外出自由だけでそれを稼ぎ出す。仮に娼館で客とったとしても稼ぎ出せる額じゃないね。ってか、ソレどんな流れ作業だよ。更には色々条件も付けられた。

「逃げねっつってんだろ!」

見張りは無しになったが、門限がある。日没までに施療院は研究棟の院長室に戻って来ること。「本家に用事がある場合はこの限りではない」門限破りは即座に入墨で、日没時には判定のために人を寄こすとまで言った。クソジジイ、よほどアタシを躾けたいらしいな。それに外に出る間は施療院の長衣は着るなってさ。予言の件もあったからまた変な噂されたくないんだろうね。いやもうホント無理難題よ、コレ。どういう訳か知らねえけど、明るくてー、困難に負けない健気さがあってー、一生懸命でー、ちょっとお茶目な所もあるような光属性キャラが好きな奴って、そうじゃない女子を目の敵にするんだよな。で、アタシの素を見ると「騙された!」って思うらしいよ。つまりそれまで好意的だった分、嫌悪感倍増。アタシはご期待に応えただけなんだけど、今丁度そう言う所らしい。ムカついたので〇ゲ数え唄歌っといた。え?元アラサーなのに大人気ない?いや、まあね。兎も角、期限の10日は明日から。

 サトゥルノがご立腹で帰った後クラテスに言われた。

「本家に話を付けてもいいのだぞ」

クラテスも分家の一員で、有用な加護持ちである。それなりに発言権はあるだろう。

「万一の時はお願いしたいけど、やるだけやってみますよ」

ヤバい?「今」世最大のピンチ?いやいや、実はそれ程でもない。アタシ、勝算のない喧嘩はしないタイプなの。そんな事ない?沸点低め?……いや、まあね。でも今回は大丈夫。ふふ。そりゃ、羅針盤の件があるから。先に代金貰えばいいだけ。あれはアタシの稼ぎである事に間違いない。人生を左右する入墨と外出許可を天秤にかけて、イケんじゃね?と判断した。それにこれまでの貯金も年齢不相応なぐらいにはある。アタシ堅実にやってるのよ。堅実なのに何でこんなに上手くいかないんだろね?どちらかと言えば、問題はフリーになったアタシが再々度親に売られる方なんだわ。アタシがここでアタシの代金を払うって事は未成年のアタシの権利は親元に帰される。つまり親に金渡してるのと同じ事だ。際限がない。いや、マジで。まだ6才だからね。成人遠いです。いや、脱線。

 計画としてはまずはアイギースの店を訪ねる。明日の内にアイギースに願い出て、3、4日で金を融通してもらえば期日には十分余裕がある。明日は声をかけるだけで良いから、ゼフィロスを探しにも行こう。エーギルの家に置いたままになっているアタシの私物と貯金も取りに行くか。そういうつもりでいたのだけれども。人生躓きの連続どころか落とし穴だらけ。吊橋を踊りながら走り抜けるような人生は「前」世からの引き続き。だから堅牢な筈のアタシの目論見は打ち砕かれちゃったりするのである。




 大街道に繋がる三本の大路のうち、中の大路は貴族街を抜けて宮城へ続く。通りには古くからの大店が多く、貴族に納めるような質の良いものを取り扱う。そんな中の大路から一本入った落ち着いた界隈にアイギースの店はある。水上都市ヴァティカとこの西都の国交の証に許された店の一つだ。一つは珊瑚や真珠、螺鈿細工の高級品を扱う店で貴族街にある。この平民街にあるのは食品を中心にした海産物の店。隣り合う店も他国の産物を取り扱うものが多く、異国情緒あふれる小路にそれは位置している。「今」世は大使館等各国の出張機関などない。こうした他国に縁のある店は同じ出身地の者の駆け込み寺や互助組織を兼ねていたりもする。その所為かアイギースは貴族のくせにこれまでも平民街の店の方によく居た。

 店は今日も中々の盛況ぶりだった。アタシがレシピを教えたチクワとはんぺんは物珍しさよりも定番の味になりつつある。それらは西都の隣村の工場で作られて週に二回運ばれてくるが、届いた端から売れるのだそう。店舗に近づくとその賑わいが見えた。と、食べ歩きできる炙りチクワを売っていた茶髪兄がアタシに気付いて手を挙げた。元は辺境領からの難民で、今はアイギースの工場で働いている兄妹の兄の方。あいつが居るという事は今日は製品の搬入日だったか。客が途切れないからだろう。手振りで裏へ回れと言われたので、それに従う。厨房に繋がる裏口の扉に手を掛けると中から楽しそうな声が聞こえて来た。

「あ!こら!」

 ディオだ。声で分かった。笑い声はメイレ、茶髪妹だな。昨年はディオもアイギースやアタシと一緒に彼ら辺境領からの難民に関わった。ディオの奴、アタシの所にも顔を出しているし、竜車屋の見習いも始めたばかりだろうに、茶髪兄妹の事も気にかけているのだ。律儀な奴。ちょっと嬉しくなって元気よく扉を引き開けると、ディオとバッチリ目があった。

「ちわ………」

「………」

茶髪妹ことメイレがディオの腕の中でディオの右手の指をしゃぶってた。

「………」

「………」

アタシとディオとお互い笑顔のまま無言で見つめ合う。ってか、何で真っ昼間からそんなエロ展開になってるの?しかも表の店舗には客も茶髪兄ほか従業員もいる。見られちゃうかもしれないドキドキ感がたまらないとか?なかなかレベルの高いエロだね。先に動いたのはディオだけど「コッ、コッ、コッ、コッ、コッ、コッ」誤作動?カクカクしてますよ?

「あ!クロノちゃん!」

いきなり立ち上がったメイレがディオの顎に頭突きをくれる。ディオはポイッと捨ててアタシに飛びついてくるが、結構な音がしたぞ。壊れかけのものって衝撃を与えると粉々になるからね?「クロノちゃん、どうしたの?」いや、どうしちゃったの?はこっちだけどな。まあ、メイレに他意は無いのは分かっている。年齢よりやや幼い気もするがこの通り。この子、人との距離感が近すぎるのよね。そう言う所も可愛いんだけど。ディオの前に並んだ小壺は店で売っている水飴の小壺。容器を返却すると値引きするシステムを作ったのはアタシだ。多分、ディオは返却された小壺に残った水飴を指で掬いとっていた。台の下を潜って来たメイレがディオの腕の中に入って、それを頂いたってところだろうね。

 客対応を代わってもらったのだろう。茶髪兄が厨房に入ってくる。

「外出できるようになったのか?」

「なったの?」

これまでのアタシの事情はディオから聞いていたのだろう。二人にも心配をかけた。そのディオは「クッ、クッ、クッ、クッ、クッ、クッ、クッ」悪役ムーブか?まだ誤作動中。何所向いてるのだか、アタシそっちに居ないんだけど。

「ま、色々あんだけどさ、それよりアイギースに用事あるんだ」

 ところが茶髪兄の応えは予想していないものだった。

「アイギースは西都に居ないぞ」

「はあ?何でよ?」

思ったより大きな声になった。何故か後ろを向いたままのディオが直立不動に。「い、いや、こっ、これは……」ってか、ディオの奴アタシの声しか拾ってなくね?

「北の方との交易で半月くらいかかるって」

「何時から!?そんな!」

拙い。それは拙い。ディオの声はBGMどころか「いや、何時からって、前からそんな事は全然なくて……」完全スルーするくらい拙い。

「アタシ、アイギースに……金都合してもらつもりで……」

アタシの声は尻つぼみになる。「クッ、クロノ?」いや、もうディオの相手などしていられない。血の気が引く。茶髪兄が答えた。

「何時からって一昨日から。留守中はでかい金動かせなくなるから気を付けろって言われてる」

一昨日から半月なら……。蒼の月は32日で一ヶ月。半月、二週で16日。アタシのタイムリミットは今日を含めて10日。

間に合わない。

 この店のアイギースの代理は隣村の工場長かこの茶髪兄。貴族街の店舗の方は魚人だろうが面識すらない。素性も明らかではない袖なしの子供に金を都合する筈ないじゃないか。何故この時に。って、北方と言えばアタシが依頼した羅針盤関係であることは間違いないのだが。涙目の奴が「クロノ!俺は!」何か言ってるが、今、そういうのいいんで。どうする?どうするよ、アタシ?

「……アタシ、ほかにも用事あるんで行くわ」

「もう行っちゃうの?」

メイレは残念そうだが、また今度な。「いや、俺の話を!」イヤもイイも無え。追い縋ろうとする奴が居るので茶髪兄に任せておいた。

「茶髪兄、妹をちゃんと躾とかないとディオがしゃぶらせてたぞ」

茶髪兄愕然。

「は!?何を?」

「ナニとは言わん。ナニとは。じゃ!」

変な作動音がして茶髪兄の首がディオを向く。それ、眼からビームとか出るやつでしょ。「ぅえええええ?!」で、アタシは富める者の通りへ。ここも地獄になりそうね。想定外の事態に焦ってただけで、八つ当たりじゃないぞ。多分。



 金を用意できない=入墨

 何をどうしたらいいのか頭の中がぐるぐる回る。二分おきぐらいに「うぎゃーっ!!」となっては自分を嗜めることを繰り返している。どうやって富める者の通りはエリトゥラ商会の娼館へ行ったか覚えていない。

「フリュ姉」

「クロノ!」

 カウンターからフリュ姉がでてきた。エリトゥラ商会の人間を使って板絵芝居をやっているからお互い元気なのは知っているけれど、久しぶり。真紅の髪にエメラルドの瞳。大胆なスリットの入った髪と同じ色の長衣。西都の女神は今日も麗しかった。その女神は汚れるのも構わずに、しゃがみこんでアタシの左手を取る。

「アンタを連れて行かれるなんて、失敗したわ」

アタシが突然市政官邸からティタ家は施療院に連れて行かれた件である。あの時は仕方がなかった。エリトゥラ商会会頭のエーギルの留守中にこんな事になるなんて誰も想像しなかったろう。昼過ぎだからまだ他の姐さま方は店に居ない。フリュ姉が賭場の掃除をしていた若衆にエーギルを呼ぶよう言った。驚いた。

「会頭戻ってるの?」

エリトゥラ商会のエーギルは先月復興途中のプラタイアまでの航海を請け負っていた。エーギルはこの娼館の隣の建物の事務所に居るらしい。すぐに姿を現す。

「苦労かけたな」

 黒髪に鋭い眼光。裸一貫からの叩き上げでこの界隈の顔役ともなれば真っ当な事だけをやっている訳ではない。が、アタシが親の借金でこの男の元に居を移してからは憤りを感じるような目には遭わなかった。

(帰ってたんだ……)

胸の奥に種火のような灯が灯った。ほんの僅かな信頼。小さくてもそれは灯だ。クソったれなアタシの人生で背中を押し付けていられるそれ。ようやく落ち着いた。

(大丈夫。まだ終わっちゃいない)

この男がいる事で、そう思えた。ただ、話す事は一杯あったような気がするが出てこない。公娼登録制度が発効してしまった事、その登録のために娼女達が屈辱的な目に遭った事、そして女性全体を貶め危険に曝す悪法、姦淫法が何時の間にか発布された事はすでに知っているだろう。それらは元貴族で西都の売春業の顔役であるエーギルの留守を狙って仕組まれた。売春業を利権の一つとして制御しようとした奴らにしてやられたのだ。

「なかなか良くやってるそうじゃないか」

 エーギルはアタシに関する報告も受けたのだろう。その悪法ぶりを板絵芝居で広めた事や、姦淫法の根拠となる予言そのものを否定する噂を流している事を言っている。

「何があった?」

そして、今のアタシの状況。斯々然々、何故外出許可が下りているのかを説明した時にエーギルから出て来た

「へえ」

怒気には肝が冷えた。アタシはまだ身内扱いなのに安堵したくらい。常に試されるような目で見られているが、まだ見限られちゃいないらしいよ。フリュ姉が優雅に言った。

「エーギルに借金するのは禁じられているのでしょう?市政官殿もダメ。スポンサーの魚人も不在。クロノ、アンタこれからどうするの?」

たった10日で。フリュ姉が重ねて聞く。

「娼女達からお金を集める?」

アタシは姿絵を使った娼館外での娼婦斡旋システムを作った。それなりの利益は上げているが、まだ手の入れようはあるだろうという話だ。それも出来なくは無いけれど……。エーギルの目が問う。

お前は次にどうするつもりだ?それとももう諦めるのか。

エリトゥラ商会はエーギルが帰って来たのだから舐められっぱなしという事はないだろう。ならばアタシは?


少し考えた。


幾つもの顔と台詞が浮かんで、その中の一つ娼婦レーナの「アンタに何が分かるのよ!」傷つき汚れた顔が残った。

(………)

出来るか?いや、やる。諦めたりはしない。目の前のこの男だってそうなのだから。言った。

「ナメた真似しくさった連中にツケを払わせる。そいつで金をつくる」

10日でやる、全部。そう。全部だ。

アタシは一人じゃない。

「フリュ姉にも借金じゃなくて頼みたい事がある。いいかな?」

その答えはエーギルも気に入ったらしい。ニヤリと笑って言った。

「まあ、少しはパパも頼ってくれよ」

え?今、この男、パパって言ったよね?!動いてくれるのは頼もしいが、パパ?パ………?


エピソードが長くなりすぎて分割しました。話回的には分けるべきじゃなかったかも……です。

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