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超大陸パンゲアへ渡った神代家の異世界奮戦記  作者: 久遠 遙人


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第二部 第一話 神代家参上

※投稿順を誤り、本来この話より前に掲載する24話分を飛ばして、先の10話を投稿してしまいました。

先行して投稿した10話はいったん削除し、現在、本来の順番で投稿し直しています。申し訳ありません。

 北の空が、黒く染まっていた。


 飛行型魔鋼虫。


 数百。


 しかも、アストレアで見た個体とは比較にならない。


 巨大。


 高速。


 黒鉄の翅を震わせながら、群れとなって城塞都市へ急降下してくる。


 空を埋め尽くすその姿は、まるで災厄そのものだった。


「全員、防御!」


 オーギュストの怒声が響く。


 騎士団が一斉に盾を構えた。


 リーファは弓を引き絞り、セシリアは杖を掲げる。


「風壁展開!」


 魔法陣が広がり、風の壁が展開される。


 だが――数が多すぎる。


 飛行型は速度を落とすことなく、一気に距離を詰めてきた。


 矢では足りない。


 魔法にも限界がある。


「くそっ!」


 ガルドが大剣を振り上げ、一匹を叩き落とす。


 だが、次の瞬間には三匹が迫った。


「空飛ぶ奴は反則だろうが!」


 叫びながら大剣を振るう。


 騎士たちも必死に応戦していた。


 しかし、次第に押され始める。


 空からの攻撃は、地上戦とは勝手が違う。


 少しずつ戦線が崩れ始めていた。


 ◇◇◇


 透は天羽乃斬を構えていた。


 切断線は見える。


 だが、数が多い。


 一匹を斬れば、二匹が来る。


 二匹を斬れば、さらにその後ろから三匹が来る。


 際限がない。


 しかも飛行型は速い。


 地上型とは比べものにならないほど機動力が高かった。


「ちっ……」


 斬る。


 落とす。


 それでも追いつかない。


 その時だった。


「上!」


 リリアが叫んだ。


 透は反射的に空を見上げる。


 周囲にいた者たちも、つられるように北の空へ視線を向けた。


 ◇◇◇


 そこにいた。


 巨大な青い鳥。


 蒼い羽根。


 黄金の瞳。


 広げた翼は五メートルを超えている。


 飛行型魔鋼虫とは明らかに違う。


 だが、その場にいる誰も正体が分からない。


「なんだ、あれは!」


 オーギュストが叫ぶ。


「新種か!?」


 ガルドも目を剥いた。


「でけぇぞ!」


 騎士たちがざわめく。


 一瞬、飛行型魔鋼虫の大型種かと思われた。


 だが――。


 その背中に、人影が見えた。


 ◇◇◇


 蒼姫の背。


 結衣は方位盤を握りしめていた。


 針は真っ直ぐ下を指している。


「おにい!」


 その時だった。


 真白が身を乗り出した。


「あっ!」


 金色の瞳が輝く。


「とおるんじゃー!!」


「真白!?」


 結衣が叫ぶ。


 だが、遅い。


 真白は蒼姫の背から飛び降りていた。


「真白ーーーっ!!」


 結衣の悲鳴が響く。


「早いです!」


 明日華も顔色を変えた。


『相変わらずですね』


 蒼姫の念話が響く。


 だが、白狐は止まらない。


 一直線だった。


 ◇◇◇


 地上。


 ガルドが空を指差した。


「何か落ちてくるぞ!?」


「魔物か!?」


 騎士たちが身構える。


 だが。


 透だけは気付いていた。


「まさか……」


 白い髪。


 白い耳。


 白い尻尾。


「真白!?」


 ◇◇◇


 真白は落ちる。


 一直線に。


 その途中、一匹の飛行型魔鋼虫が透へ襲い掛かった。


 そして――。


 ドゴォォォォン!!


 真白が激突した。


 魔鋼虫へ。


 完全に巻き込まれた飛行型が、そのまま地面へ叩き落とされる。


 そして真白は勢いを殺すことなく――透へ。


「とおるーーーん!!」


「うわっ!?」


 透は慌てて真白を受け止めた。


 勢いに押され、そのまま後ろへ転がる。


 そんなことなどお構いなしに、真白は満面の笑みを浮かべていた。


「会いたかったのじゃー!」


「真白!?」


 透は完全に固まっていた。


 ◇◇◇


 その瞬間。


 空から無数の光が降り注いだ。


『雷神招来』


 凛とした声。


 蒼姫だった。


 巨大な法陣が空に展開される。


 次の瞬間――。


 轟雷。


 バリィィィィィィン!!


 青白い雷が飛行型の群れを貫いた。


 一撃。


 二撃。


 三撃。


 空を埋め尽くしていた魔鋼虫が、次々と撃ち落とされていく。


 騎士団が絶句した。


「は……?」


 セシリアも言葉を失う。


「魔法……?」


 ノーノーが目を剥いた。


「なんじゃ、あれは……」


 ◇◇◇


 さらに。


 結衣が蒼姫の背から飛び降りる。


 地面へ着地すると、すぐさま鉄棍を構えた。


「おにい!」


 透が振り向く。


「結衣!?」


 結衣は満面の笑みだった。


「迎えに来たよ!」


 そのまま飛行型へ突撃する。


 鉄棍が唸った。


 魔鋼虫が吹き飛ぶ。


 ガルドが大笑いした。


「妹も化け物か!」


 ◇◇◇


 続いて、明日華が静かに着地した。


 透の前まで歩いてくる。


「あにさま」


「明日華……」


 普段はあまり感情を表に出さない少女。


 その瞳が、ほんの少し揺れていた。


「あにさま……」


 一歩。


 また一歩。


「無事で良かったです」


 そして。


 ぎゅっと透へ抱き付いた。


 ◇◇◇


 真白。


 明日華。


 結衣。


 三人が一斉に透へ群がる。


「おにい!」


「とおるん!」


「あにさま!」


「ちょっ……」


 透は完全に混乱していた。


 ◇◇◇


 その様子を見て、ガルドが腹を抱えて笑う。


「お前の関係者か!?」


「家族です!」


「濃いな!」


 騎士たちも思わず苦笑する。


 セリナは呆然。


 リーファは目を丸くしている。


 リリアだけは楽しそうだった。


「増えた!」


 ◇◇◇


 だが。


 戦場は終わっていない。


 再び飛行型の群れが迫る。


 透は我に返った。


「結衣! 明日華! 下がって!」


 兄としての言葉だった。


 だが。


 結衣は首を振る。


「嫌だ」


 鉄棍を構える。


「そのために来たんだから」


 明日華も弓を手に取った。


「私たちは戦えます」


 真白は胸を張る。


「とおるんを守るのじゃ!」


 蒼姫も翼を大きく広げた。


『羽虫ごとき、私にお任せください』


 ◇◇◇


 透は小さく息を吐いた。


 結衣を見る。


 明日華を見る。


 真白を見る。


 もう。


 守られるだけの妹たちではない。


 宗玄に鍛えられ。


 覚悟を決め。


 異世界まで追ってきた。


 立派な戦士だった。


 透は小さく笑った。


「……分かった」


 三人を見る。


「無茶するなよ」


 結衣が満面の笑みを浮かべる。


「おにいもね!」


 明日華も静かに頷いた。


「当然です」


 真白は胸を叩く。


「任せるのじゃ!」


 蒼姫が空へ舞い上がる。


『では、始めましょう』


 ◇◇◇


 北の空を埋め尽くす飛行型魔鋼虫。


 それに立ち向かう人々。


 そして――。


 異世界へ渡ってきた神代家。


 離れ離れだった家族は、再び出会った。


 だが、喜びに浸っている時間はない。


 戦いは続いている。


 透が天羽乃斬を構える。


 結衣が鉄棍を握る。


 明日華が弓を引く。


 真白が法力を練る。


 蒼姫が空を舞う。


 神代家。


 戦闘開始。


 そして今――。


 異世界パンゲアに、神代家が降り立つ。


 第二部の幕が、今上がった。


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