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大悪魔バルゲロ(2)

 レイシスの未来が早まったという見解は正しかったようで直人なおとが到着したときにはすでにレフィーの羽が漆黒の鎖に囚われ、身動きの取れない状況になっている場面であった。


「だから言ってるだろう?逃がさないっと」

「くっ……!」


 天使連中とレフィーが言い争っている場面を背景に直人は空を注視して空間の歪みを探していた。


「もしバルゲロが闇霧(シュプール)を用いてこちらの監視を行っている場合、必ず空間に歪みが生じるはずです!それさえ先に見つけてしまえば――――!!」


 目を凝らし、空を注視していると一か所だけ不自然に歪んだ空間を見つけ出す。


「見つけた!」


 それはレイシスの丁度真上に存在しており、万一鎖を抜け出され空へと飛ばれても後ろから攻撃できる、ほど良い位置にそれは存在している。

 直人は人面花ヴァイパーの時同様に身体強化系のスキルをすべて発動してすぐにでも割って入れるように準備する。


天使の羽衣(リリア)!」


 レフィーが天使の羽衣(リリア)の魔法を使い鎖が解けるタイミングで空へと飛びあがる準備をする。


「な!?なんなんだその魔法は!?」

「あなたじゃ絶対に使えない魔法よ」


 鎖が完全に消え、レフィーが空に飛びあがる。

 そのタイミングを待っていたかのように最初は人の顔くらいのサイズの小さな歪みが人一人分通れるほどの歪みにまで大きく広がり、そこから槍の切先チラリと光る。


「いけません、いけませんよ~それは。誰があなたたちの退場を許可したというのですか?」


 バルゲロの持つ槍がレフィーの背中を貫こうとその切先を向けた時だった。


「なっ―――!?」

「嘘っ!本当に……!?」


 レフィーの背中に見えない壁ができているかのようにバルゲロの持つ槍が弾かれてその反動でよろけるバルゲロ、その隙を見逃さなかったレフィーと直人はそれぞれ行動に移す。


 レフィーは一瞬だけ見えた直人のことを目撃し驚くがすぐに前を向いて城へと全速力で帰還する。


「ぐっ!何が……!?」


 困惑するバルゲロ、そんな彼の前に予想外の伏兵が現れる。


「よお、バルゲロ」

「だ、誰ですかあなたは!?」

「今その情報は必要―――かっ!」


 直人は獲得したスキル、脚力上昇で飛び上がり、空中足場スカイウォークを使用してバルゲロの目の前に足場を作って現れると黒鉄化のスキルを足に使ってバルゲロの顔めがけて渾身の蹴りを叩き込む。


「がはっ―――!?」


 蹴りを入れられたバルゲロは闇霧シュプールからたたき出されると顔を変形させながら地面にたたきつけられる。

 直人はさらに間髪入れずに空中足場スカイウォークで空中にトランポリンのような弾む足場を作るとバルゲロに向かって飛び、亜空間倉庫から愚苦蛇のナイフを取り出す。


「ぐっ!な、なめるなァッ―――!!!」


 バルゲロは地面に横たわりながらも空から勢いをつけて落ちてくる直人目掛けて魔法を放つ。


闇の弾丸(ダーク・バレット)!!」


 バルゲロが放つ闇の弾丸(ダーク・バレット)は焦りのためかめちゃくちゃな軌道で乱発しているため直人の頬を掠る程度しか当たらず目の前まで接近を許してしまう。


「くそっ!くそっ!くそっ!なぜ、なぜ当たらない!……―――くそが!鉄壁!!」


 そうバルゲロが告げるとバルゲロの赤黒い両腕が銀色の鋼鉄へと変化する。

 ガキンッ!と金属同士がぶつかり合う音と共にゼロ距離まで近づいた直人の腹部に向けてバルゲロが蹴りを入れる。


「くっ!」


 蹴り自体にダメージはなかったが蹴りの衝撃でバルゲロとの距離を離されてしまう。


 正直この完全な不意打ちで仕留めきりたかった。

 というのもバルゲロのステータスはガチャで出たあの時のレフィーのステータスと同程度であったためステータスが上がったとはいえ正面からやりあえる相手ではなかった。


「はあ……はあ……まさかこの私を引きずり出す者がいたとは……それにあなた、天使ではないですね?何者ですか?」

「そうだな……異界の旅人ってところか?」


 この悪魔に馬鹿正直に本名を名乗るのも癪だったためレフィーとの会話で出てきた予言の名前を告げる直人、するとバルゲロは目を見開いて驚く。


「まさかあなたが……ははははははは、まさかこんな場所で巡り合えるとは私もツイている、と言えますねぇ~」


 いきなり顔を抑えて高笑いするバルゲロに直人は一層の注意を割く。


「はははは……はあ……血の祭典(ブラッド・モルド)


 その声と共にバルゲロの周りから血のような真っ赤な液体が無数に湧き始める。


「さあっ!予言の英雄よ!この私を倒せるものなら倒して見なさい!たとえ天使共の予言であってもこの私の運命を決定づける者など存在しないことを証明して見せましょう!!」

「何をわけのわからないことをごちゃごちゃと……」

「はははははっ!気にしないでください!これは私個人の証明問題ですから、あなたは気にせずただ死んでください!行きなさい!血の祭典(ブラッド・モルド)!!」


 バルゲロの命令と共に液状化した血のようなものが弾幕となって直人に襲い掛かる。


「チッ!」


 血の祭典(ブラッド・モルド)は先ほどの闇の弾丸(ダーク・バレット)とは違い正確に直人の急所を打ち抜こうと牙を剥く。


「直人様!!」


 追加で亜空間倉庫からもう一本短刀を取り出すが数が数だけに段々と捌けなくなっていき直人の対処が遅れた弾丸が直人の肩や太ももを打ち抜いていく。


「くっ……!」

「はははははっ!いつまで私の攻撃を捌き続けられますかね!」


 あの悪魔の高笑いが耳に障る。

 ただそんなことで集中力を切らしてしまったら弾幕の餌食になるため活路が見えるまで必死に耐え続ける。


「直人様、このままではジリ貧です!それにスキルの制限時間ももうすぐですよね!?」


 そう、直人が発動した能力強化系のスキルのほとんどにはパッシブでないため発動時間に制限がある。

 ただでさえステータスをスキルで上げた今の状態で何とか致命傷避けている現状、スキルの補佐が切れてしまったら瞬時に倒されてしまうだろう、その制限がもう少しで迫ろうとしていた。


「わかっている!ただこの弾幕の嵐を止めない限りどうすることもできないぞ!」

「私に考えがあります!」

「考え?」

「はい!直人様の獲得したスキルの中に重力穴グラビティ・ホールというスキルと超再生というスキルがあったはずです、それを使いましょう!」


 重力穴グラビティ・ホールとは空間に小さな簡易ブラックホールもどきを作るスキルだ。


 もどきというのはブラックホールはすべてを吸い込むがこのスキルはただ空間に重力の塊を作ってそこに魔法や矢などの飛び道具を誘導するためのスキルとなる。

 ただ使用法を間違えると自身の肉体などが吸い寄せられるためむしろ戦闘の邪魔になりかねないハイリスクなスキルでもある。


 そのため応用は効くスキルではあるが使用場所は限られてしまう。


 そして超再生は言わずもがな傷ついた肉体を癒すスキルだがリキャストタイムが長く一日に一度しか使うことのできない切り札ともいえるスキルとなる。


「ここで使うにはリスクがデカすぎるような気がするが何か考えがあるんだな!?」

「はい!私の指示通りに動いてさえくださればこの弾幕の嵐から抜け出して反撃の機会を必ず掴ませて見せます!」


 自信満々にそう告げたレイシスに直人は悩むそぶりを見せずに即答する。


「わかった、任せる!」


 その返事を聞いてレイシスの口元に笑みがこぼれる。


「お任せください!では直人様、前方五メートル先二時と十時の方向に重力穴グラビティ・ホールのスキル発動をお願いします!」

「了解」


 直人は何の躊躇いもなく二本の短刀を亜空間倉庫にしまうと急所を打ち抜く弾頭などすべて無視してスキルをレイシスの言われた場所に発動する。


 するとその直後、バルゲロが放ち続けている弾幕が発動した二つの重力穴グラビティ・ホールに軌道をずらされ始める。


「なっ!?」


 一瞬驚いた表情を見せるもすぐに直人が発動したスキルが空間に固定されたスキルだと見抜くとすぐに弾幕を重力穴グラビティ・ホールの範囲外まで軌道を変えて飛ばし、今度は弾幕の雨のように空から弾幕を降らせ始める。


 ただ直人が一瞬できた隙を見逃すはずもなく、すぐに超再生のスキルを使用すると亜空間倉庫から前回のガチャから出ていたゴブリンの召喚石を盾代わりに大量に目の前に放り投げ自分自身は気配遮断のスキルを使って光に紛れて姿をくらます。


「くっ!何ですかこの光は!」


 目を覆い光を遮ろうとするバルゲロ、そこに出てきたゴブリンたちをけしかける。


「ギギッ!」


 出てきた五十体以上のゴブリンたちでバルゲロに攻撃を仕掛けようとするが――――……


「いつの間に!?なんですか、この魔物どもは!?チッ!鬱陶しい!!消え失せろ!!」


 召喚したゴブリンの中にはチャンピオンやアーチャーなど村攻めでは活躍した直人が持つゴブリンの中でも強い個体も同時に出したのだがバルゲロの魔法によってすべて一掃されてしまう。


「できた光に姿をくらませることには成功しましたがまさか召喚したゴブリンたちがこうも簡単に一掃されてしまうなんて……」

「仕方ない、もともと時間稼ぎのためだったんだ。やられてしまうのも計算の内だろう」


 ただレイシスにとっては納得ができないらしく少し考えこむ。


「それはそうですけど―――……あっ!直人様、あれです!あれ!魅惑の瞳であれば隙を作り放題ではないのでしょうか!?」

「それなんだがさっきから使っているが一向に効いている素振りが見えないんだよな……」


 直人は常にバルゲロの目を見てスキルを発動し続けていたが効果のほどはないらしく高笑いし続けている。


「やはり異性でないとスキルの効きはいまいちなのでしょうか?」

「わからん、ただ効かないものに頼っても仕方がないからな、とりあえずそろそろ出したゴブリンたちが全滅されてしまいそうだから仕掛けるぞ」

「りょ、了解です!」


 バルゲロは器用に血の水球を操ると巧みに操作してイワシの群れのような魚群を作ってそれをゴブリン目掛けて放ち、ゴブリンはと言えばミキサーにひき潰されたかのように一瞬でミンチへと姿を変えていく。


「自分と似た魔物を盾代わりに自分は雲隠れですか、たいへん往生際が悪いですね~……あなたのこの盾も持って数秒、あなたも諦めて早く死んだらどうですか?」


 なんとか最後に出したゴブリンパラディンが最後の守りとして生き残っているがそれもバルゲロの言う通り数秒の命だろう。

 ただゴブリンたちを盾に稼いだ時間は決して無駄ではなかった。


「スキル発動―――すべてか無か(オールオアナッシング)

「――――ッ!?」


 スキルが発動すると直人とバルゲロの首にいばらでできたような首輪の模様が浮かび上がる。

 その直後、直人の体から力が抜ける。


「くっ!」


 ステータスアップ系のスキルがすべて切れてしまったらしい、そのほかにもパッシブで発動していたスキルや装備していたアイテムの効力もすべてなくなたらしい三輪の自転車から補助輪を外した時のようなおぼつかない感覚に苛まれる。


「な、なんですかこれは―――!?」


 どうやらそれはバルゲロも同じらしく片膝をついて両手を震わせている。


「あ、あなた―――いったい何をしたのですか!?」

「素直に答えるわけないだろ」

「は、ははは……ははははははっ!いいでしょう!あなたが何をしようとこの私の歩みを止めることはできないと証明して見せましょう!ロストマジック発動―――すべてを壊す殺戮者ザック・ヘブン・ロスト


 その魔法の発動と共に空に大きな暗雲が立ち込めると暗雲から墨汁のような真っ黒な雨が降り始める。


「なんだ、これは……?」

「な、直人様、地面に警戒を!この魔法は―――」


 レイシスが言い切る前に墨汁の雨に浸った地面からこれまた真っ黒な双葉が無数に咲くとすぐに急成長していき、それは木と成り真っ黒な卵のような大きな実を生らす。


 そしてその木の実は木の寿命を吸って大きくなっていっているかのように木を枯らしていき最終的には人一人分ほどの大きさまで成長すると木から地面へと落ち始め、落ちた衝撃で木の実が割れてそれは生まる。


 黒い異形、四本の足に口だけの頭部、こっちはゴブリンで生理的嫌悪感のある見た目であることは認識しているのだがこの異形はその感情とは別ベクトルの生理的嫌悪感を感じてしまう。


「な、なんだこいつらは―――!?」


 バルゲロとの戦闘に集中するあまり存在自体を忘れていたノラを誘拐した犯人ら第一王子ことゼノ王子ら一行が異形に囲まれて顔を青ざめさせている。


「あなた方、まだいたのですか?」

「ば、バルゲロ様!さ、さすがに人が悪いぜこんなことして……お、俺らは戦闘の邪魔にならないようにここから離脱するから道を開けてくれないか……?」


 ゼノたちは必死に命乞いするように両手をあげてヘラっと笑って見せるが当のバルゲロはといえばゴミでも見るかのように冷ややかな目線を向けている。


「あなた方との契約は確か……あなたたちに無条件に一度、手を貸すという提案だったはずです」

「そ、そうだ!その代わり俺が王になった暁には外層をやるという契約だっただろ?その契約を破る気か!?」

「そうですね……ですがもう既に契約自体は達成されています。ですので更新がない限りは私が契約を破ったことにはなりませんよ?」

「な!?」


 再び顔を青ざめさせて必死に弁明しようとするゼノ、ただバルゲロは一切を聞き入れようとはしない。


「け、契約自体はレフィーを殺すことまでだっただろ!」

「いえ、契約はあなたに一度だけ手を貸す、でした。勘違いしているのはあなたの方かと……」

「くっ……!―――わ、わかった!じゃあ契約の更新をしよう!もう一度俺と契約をしろ!」

「ふむ?まあ契約自体はいいでしょう。それで?あなたはこの二度目の契約で何を差し出せるというのですか?」

「な、何でもだ!お前が望むもの何でも提供してやる、だからッ!!」


 ゼノの話を聞いたバルゲロはニヤリと不敵に笑って見せる。


「何でもですか、いいでしょう契約成立です」

「ほ、本当か!?」

「ええ、ですが一度目の契約の代価をお支払いいただいておりません」

「なっ!そ、それは―――!!」

「ですので二度目の契約の代価は前払いで―――……あなた方のお命で勘定といたしましょう」

「は?」


 そう言うとゼノたちを囲っていた異形たちが近づき始める。


「ま、待て!待て待て待て!おい!話が違うじゃないか!!」

「それはこちらのセリフですよ。こちらは約束を守ったのにも関わらずあなたは対価を払わないのでは信用なんてあるわけがないじゃないですか。ですので二度目の契約を行う場合、代価を前払いにするのは普通のことでは?」

「ふ、ふざけるな!そ、それなら俺の二度目の願いはどうなるんだ!!」

「ああ、それは気にしないでください。こちらで確実に叶えてあげますよ―――私、約束は守りますので」

「ふ、ふざけるなあああぁぁぁっ――――!!!」


 ありのように群がる異形はゼノたちの手や足、顔に喰らいつくと四方八方から引っ張り手足を引きちぎる。

 悲鳴を上げる間もなく絶命したゼノたちの死骸は一片も残すことなく、すべて異形が平らげる。


「それではご愁傷様です、ゼノ様。あなたの王になるという願いこの私が必ず叶えてあげましょう。どんな姿になってもね……ははは、ははははははっ!!!」


 高笑いするバルゲロ、それに共鳴してか異形らも汚い声を上げて笑って見せる。


「さあ、次はあなたの番ですよ?異界の英雄様」

ここまで読んでくださりありがとうございます。評価の方はお任せいたしますので、よければもう一話見ていただければ幸いです。

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