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黒の厄災

 ゼノたちの死骸を平らげた異形は次の標的を直人へと変える。


「さ、さすがにこの数はまずいですね……」

すべてか無か(オールオアナッシング)の効果で強制的にスキルによるバフを切らしたとはいえそれは本人のみしか効果がない。まさか俺と同じ手を格上のあいつが使ってくるなんて想像できるわけないだろう……」


 すべてか無か(オールオアナッシング)のスキル効果には追加情報として身に着けている装備や発動中のスキルや魔法の効力を打ち消す能力があった。

 スキルや装備のアシストを絶って自分自身の本来の力で戦わせるスキルであるため、直人はそれを利用して相手のバフを消した後、召喚石を利用して物量で仕留めるつもりでいた。


 ただそれを逆にバルゲロにやられてしまったため直人の持つほぼすべての手札がなくなってしまった。


「ど、どうしましょうか直人様!?」

「それは俺が聞きたい、ただ幸いなことにまだこっちの居場所を特定できていないようだからその間に何か対策を考えられれば……」


 気配遮断のスキルのおかげかこちらに気づく素振りを見せないがこのままじっとしていても気配遮断のスキルの効果時間が迫っているため何か対策を取らないといけない。


「完全にさっきの弾幕の攻撃の時と同じ状況になってしまったな……」

「結局反撃という反撃は出来ずじまいですしね……」

「だな、さてどうするか……」


 スキルを確認しながら次の手を考えていると、遠くからジェット機の飛行音のような風を切り裂く音が聞こえてくる。


「この音は……まさか!」

「直人さん――――!!助けに来ました!!」

「あいつ、戻ってきたのか!」


 四枚の大翼を羽ばたかせて現れたのはレフィーとフル武装した天使の騎士団だった。


「これはこれはお早いご到着で、天翼騎士団の皆々様―――」

「この反応、まさかっ!お前、大悪魔アーク・デビルか!?」


 天翼騎士団と呼ばれる騎士格好の天使たちの中でも明らかに装備が高級そうな女性がバルゲロに向かって叫ぶ。


「ご明察でございます。いや~さすがは天翼騎士団の隊長殿と言うべきですか、一目で私のことを見破るとは……」

「戯言は死んでから発言しろ!貴様の周りにいるそれら、言い伝えの黒い厄災だろ!?」


 黒い厄災、レフィーの言っていた予言に出てきたやつのことか?


「そんな化け物どもを侍らせられる存在なんて大悪魔ぐらいしか思いつくものか!」


 啖呵をきってバルゲロを睨みつける隊長、そんな姿にバルゲロは肩を震わせながら大きく笑って見せる。


「ははははははっ!はーはははははっ!!」

「なにがおかしい!?」

「いや~実に愉快だ!それで?わかったところでお前たちにこの黒い厄災(ツカイ)を倒せるというのですか?」

「やってみなければわからないでろ!総員、攻撃準備!!」


 その一言で後ろに控えていた騎士たちが手に持つ武器を目の前に掲げて詠唱を始める。

 すると剣が光を帯び始め、光がたまると騎士たちは一斉に剣を構える。


「放て――――!!!」

万物を葬り去る光(セイグリット・ソード)!!』


 騎士たちが剣を振るうと剣先から光の刃が飛ばされて黒い厄災らに降りかかる。


「ギエエエエエェェェェェ!!!」

「ふん、どうだ」


 凄まじい衝撃波に顔を覆う直人ら、攻撃自体はここに来た時に戦った人面花ヴァイパーなど一瞬にして消し飛ばすことができるであろう威力を秘めており、当たればひとたまりもない威力だろうということは簡単に想像できた。

 

 ――――だからバルゲロらに直撃したのは確認したためこの場にいる全員が決着はついたと考えていた。


「いやはや、さすがは天界が誇る天翼騎士団の攻撃だ。これは当たればひとたまりもないですね~」

「なっ!?」


 服をはたきながら現れたのは無傷のバルゲロ、黒い厄災らも一匹も減っておらず先ほどの攻撃がなかったかのように平然としていた。


「どうなっている!?確かに手応えはあったはずだ!?」

「ロストマジック闇の帳(ダーク・ヴェル)、ですか……」


 ポツリと隣にいたレイシスがそう告げる。

 

闇の帳(ダーク・ヴェル)?」

「はい、発動した対象を攻撃から守る防御魔法のようなものです」

「あの攻撃を受けても耐えられるほどの防御力なのか?」

「いえ、耐えられないでしょうね。先ほどこの魔法は防御魔法と言いましたが実際の能力は対象を影に落として攻撃から逸らす魔法なんです」


 つまり黒い厄災ごと影に沈んだことで騎士団の一斉攻撃に耐えたということなのか?


「さて、ではこちらかも反撃と行きましょうか」


 そう言ってバルゲロは右腕を騎士団に向けるとそれを合図とばかりに下にいた黒い厄災らが天使に生えているような羽を生やして飛び始める。


「キエエエェェ!!」


 奇声をあげて飛んでくる黒い厄災、元々最初から羽が生えていたかのように縦横無尽に飛び回る。


「くっ!」

「隊長、こいつらすばしっこくて攻撃が当たりません!」

「ガッ―――!!俺の腕がァッ―――!!!」 


 見たこともない魔物に騎士団は慌てて対処しようとするが倒しても倒しても際限なく湧いてくるため一人、二人とどんどんと数を減らしていってしまう。


「くそっ!お前たち、陣形を固めろ!」


 団長の一言で守りの陣形に瞬時に変更した騎士団、負傷者を中心に集め、お互いの背中を守れる陣形を作ると一体一体を確実に処理していく。


「よし、これならこのまま……!」


 誰かが告げた一言、誰もがこのまま対処できるとそう思っていた。―――が、一体の黒い厄災が現れたことで状況が一変する。


「団長、あれを!!」

「どうした、何が―――ッ!?」


 騎士団たちの目に映っているのは黒い厄災たちが自分たちとまったく同じ背格好になっている姿だった。


「ま、まずいです直人様!早く対処しないと取り返しのつかないことになります!」


 慌ててそう告げるレイシスに直人はどういうことなのかを尋ねる。


「あの黒い厄災、正式名称はツカイと呼ばれる魔物で食べた相手をそのまま自分自身の力に変える能力を持っています!つまり食べれば食べるだけどんどん取り返しのつかない化け物になっていくんです!」

「なっ!?」


 つまりすべてか無か(オールオアナッシング)を常時発動してるということ、確かに放置すれば対処のしようがなくなってしまう。


「仕方ない、か」


 直人は覚悟を決めると自分から気配遮断のスキルを解除して空にいるレフィーたちに向かって大声で叫ぶ。


「お前たち!!そいつらは食べた相手をそのままコピーする能力を持った化け物だ!誰も死んだらダメだ!喰われて奴らの力になってしまうぞ!!」

「な、直人さんそれは―――……!」

「ははははははっ!見つけましたよ、英雄殿!!」


 姿を現すと一直線にこちらに詰め寄ってくるバルゲロ、こちらも短刀を二本を装備して迎え撃つ。

 巨大な槍を短刀で捌こうとするため力負けしてどんどん押されていってしまう。


「ど、どうしよう……明らかに直人さんが押されている……!」

「レフィー」

「な、なにバネッサ?」

「ここは私たちが受け持つ、お前はあの者を助けに行ってやれ」

「で、でも私が抜けたら……!」

「大丈夫だ、それに我々を誰だと思っている。天下の天翼騎士団だぞ?これしきの化け物に苦戦などするものか!」


 他の騎士団員も団長の声を聞くと声を上げて任せろと声を上げる。


「ほらな、だから安心していけ」

「みんな……」

「それにこれがあの悪魔が発動した魔法ならあの悪魔を倒しさえすればこの魔法は解けるはずだ。そしてあの悪魔を倒しえるのはあの予言の子とレフィー、お前以外にはいなだろう?」

「そう、かな?」

「ああ、だから行ってこい!道はこの私が直々に開けてやろう!」


 そう言うとバネッサは被っていた兜を脱ぎ捨てると詠唱を開始する。


「天におわします我らが神に奉る―――我らの願いを聞き入れ、光あふれる力を授けたまえ。闇を祓い、真実を照らし出す魔法の原初によって、我らを導き給え。星々の輝きよ、我らの未来を照らし、勇気と力を与えため。この身に宿る魔法の力を解き放ち、世界に輝きをもたらすことができんように。魔法の名は『セイントスターブラスト』!」


 告げるとバネッサの目が金色に輝き、周りに星のような光が集まり始める。


「力を示せ、星の輝きよ!」


 言うと周りに集まった星々がバルゲロやツカイたちに向かって攻撃し始める。


「行きなさい、レフィー!」

「わかった!ありがとう、バネッサ!あとで!」

「ああ、また後でだ!」


 そうして切り開かれた道を通ってレフィーは直人の元へと向かうのだった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。評価の方はお任せいたしますので、よければもう一話見ていただければ幸いです。

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