大悪魔バルゲロ(1)
レフィーの案内で都市部へと向かう直人ら一行は特に何かが起こるでもなく無事天空城アドラスへとたどり着く。
そこは翼の生えた天使が人の営みと変わらない生活を行っており、見た感じは質素ではあるが元の世界の水準で測れば栄えている方だと言えよう暮らしぶりだった。
天使たちはと言えば通りかかるたびにレフィーへとあいさつを交わし笑顔を向けているためこの国での彼女の人気具合がうかがえる。
「すみません、直人さん!一度家の方まで帰宅してもいいですか?」
「ああ、かまわないよ」
「ありがとうございます!」
レフィーが家へと向かってる道中に二人は近くの噴水枠淵に腰掛け念話を用いてレイシスとバルゲロについての作戦を擦り合わせる。
「今わかっているバルゲロの情報は魔法師殺しの槍を持っていることとあのいきなり現れる霧のような転移の力か……」
バルゲロが現れた瞬間が一瞬であったため対策を考えようにも情報が少なすぎる。
「あの霧の魔法なんですが多分闇霧ではないでしょうか?」
「闇霧?」
「はい、大天使と大悪魔だけが使える魔法としてロストマジックってものがあるのは先ほど見せた情報にあったと思うのですがそのうちの一つですね」
「ロストマジック、か……よくわからないんだがまずロストマジックってのはなんなんだ?」
「ロストマジックって言うのは私の力の一部を使った魔法のことを言います」
レイシスはそういうと間髪入れずに一言闇霧と唱える。
するとレイシスの目の前と少し離れた場所の二つに空間が歪んだような霧が現れ、レイシスが目の前にできた霧に手を入れると少し離れた歪んだ空間から消えた手が現れる。
「こういった感じの空間と空間を繋ぐ魔法になります。これは応用もできまして眼だけを繋げて遠くを見れるようにしたり、立ち入ることのできない場所であっても侵入できたりなど使い方は工夫次第で大きく変化します」
レイシスの使っている闇霧にはどうも欠点らしい欠点は無いらしく、至る所に霧を出してはあっちこっちから手を出して遊んでいる。
「お前が使えれる魔法をロストマジックって呼んでるって理解で大丈夫か?」
「はい、その理解で合っています。ただこれが弱点とも言えますが私が使う分には無制限に使用できますがこちらの世界の住人が使う場合使用制限がかかります。例えば使用回数だったり効果量や範囲にも影響を及ぼしますね。多分ですがバルゲロの場合はこのほぼすべてに制限が掛けられているはずです、そして私が作った魔法ですのでこの魔法の弱点も対策もバッチリです!」
フンスと気合を入れるレイシス。
「つまりそこをついて引きずり出せば―――」
「相手は油断しているはずですし私という情報チートがありますから勝てると思いますよ!」
「対策というほどの対策じゃないしむしろどっちかって言えば行き当たりばったりなような気もするがまあ今はこれが限界か……」
バルゲロの対策についての話し合いも一段落ついた頃、家に向かったはずのレフィーが血相を変えてこちらに戻ってきた。
「あ、あの直人さん!お城への案内の件なのですが申し訳ないですけど他のものに任せてもいいでしょうか?」
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「えっと…家にいるはずの私の妹、ノラがいなくなっちゃったみたいで……すみませんがその子の捜索をしたいのでいいでしょうか?」
直人は横にいるレイシスと顔を見合わせる。
彼女も同じ考えのようで直人に向けて念話を飛ばす。
「時期は少し違っていますがもしかしたら私たちが来たことで起こるはずだった未来が早まったのかもしれません!直人様、ここは――――」
「わかってる」
直人は今にも飛び出したい気持ちを抑えてソワソワしているレフィーの手をとる。
「ふえっ―――!?」
いきなり手を握られたことで可愛らしく驚いて見せるが直人の真剣そうな顔にレフィーの表情もすぐに変わる。
「その捜索、俺も手伝ってもいいか?」
「え?よ、よろしいのですか?」
「ああ、それに少しだが嫌な予感がするんだ」
そう直人が言うと目を見開いて驚いたあと自分もだとレフィーが賛同する。
「そ、そうなんです!なにか、ぬぐい切れないような嫌な予感がして……わかりました!直人さんさえよろしければお願いします!……あっ!でも直人さんは私の妹については―――……」
「大丈夫だ、特徴さえ教えてくれればこっちで何とかするから」
「わかりましたでは――――……」
そう言ってレフィーは直人にかいつまんでノラの特徴を告げると背中から四枚の翼を広げて宙に舞う。
「では直人さん、すみませんがよろしくお願いします!私は外層の方を探してきますので何かありましたらこの噴水広場でお待ちください」
「わかったよ……あっ、ちょっと待ってくれレフィー」
「はい、何でしょう?」
「背中に常に注意しとけ」
「背中、ですか?……わかりました、では―――!」
そう言ってレフィーは外層の方へと飛んでいき一瞬で見えなくなってしまう。
「それじゃあ俺たちも向かおうか」
「そうですね、って場所は把握されているのですか?」
「ああ、常に蒼穹探知で捜索していたからな」
「流石ですね、直人様!わかりました!では向かいましょう!」
そうして二人はレフィーの後を追うようにして外層へと足を運んだ。
ここまで読んでくださりありがとうございます。評価の方はお任せいたしますので、よければもう一話見ていただければ幸いです。




