ダンジョンコアは己の望みを口にする
ワイバーンに襲われてからもCランクの迷宮にいる筈のない魔物に襲われ(全くと言って良いほどに意味を成していない)つつも、リアは既に30階層に到達していた。
「ほんっっとにここ何階層?」
本人は気付いていないようだが。
「まぁ、取り敢えず進むしかないんだけどさぁ」
ところどころ抜けているリアではあるが
、この発言については正論である。
もしも己の力に見合わぬ迷宮に入ってしまったのなら引き返すか転移でもして(転移用の道具はとても高いので基本使えない)迷宮の外に出るしかないが、別に問題ないなら進み続けてボスに勝ってしまえばその場に転移魔法陣が現れるため(もちろん無料)、即座に迷宮の外に出れるからだ。
そしてこの場合……というか、属性保持者であるリアよりも圧倒的に強い力を持つものがいる迷宮が存在しないためリアの場合は常に、だが、リアの実力を考えれば別に引き返す必要性はない。
それにそもそもの話引き返してしまってはここに来た意味もない。故にこの行動は当然と言えよう。
「あ」
つまらなさそうに30階層を探索していると、明らかに他とは違う金で装飾された扉があった。
「えっ、待ってもしかしてここ30階層?これってCランクの迷宮では共通になってるボス部屋の扉じゃない?」
そうしてリアがやっとここが30階層であることに気が付いた。最後まで気付かなかったら流石にヤバいので気付けて良かった。
「つまり私は30階層にも関わらず30階層へと続く階段を探し求めていたということ……?えっ、私馬鹿じゃない?」
「まぁ、取り敢えず、入るかぁ……」
自分のさっきまでの言動を思い返して自分にゼツボウしながらも、リアがボス部屋を開ける。
ギィィィィィ
「キシャァァァァ!」
「はあ!? ゴーレムから毒蜘蛛になるってどういう変化したのッ!」
――その結果、流石にボス部屋は前回と同じくゴーレム系統の何かが来るだろうから足は遅いだろう、となにも考えずに扉を開けたリアに毒蜘蛛が遅いかかった。
「けどまぁ毒蜘蛛とか速くて毒吐いてくるくらいしか注意点ないから討伐楽なんだけど」
「キェァァァ、ァ……」
が、即座に下に向けていた剣をちょうど毒蜘蛛の首を斬れる位置に持っていき、そのまま振り上げることで殺した。
リアが絶叫してからこの動作が行われるまでの間はなんと約3秒である。気の毒すぎる。
しかもリアは足が速くて、さらには毒を吐くという継続的にダメージを与えてくる(時によっては即死するほどの毒を吐いてくるが)遠距離攻撃が可能という点から、『見たら逃げ出せ』が暗黙の了解となっているほどの強敵だと理解していない。なんということだ。流石は属性保持者、感覚がバグっている。
「さて、ボスは倒せたし後は――」
リアがこれからの予定を思い出すため、やるべき内容を口に出そうとした瞬間、
ボトリ
『……流石は属性保持者様ですね。多くの冒険者に恐れられている筈の毒蜘蛛も敵ではないですか』
球体の何か――否、ダンジョンコアが呆れと称賛が混ざった言葉を口にしながら落ちてきた。
「え?恐れられて、る……の?なんで?」
それのダンジョンコアの言葉に対し、リアは純粋に疑問を抱く。
『……まぁ、だいたいの属性保持者様はその返答になりますよね。ええ、諦めたので問題ないです』
が、毒蜘蛛の恐ろしさをリアが理解できることはないだろう、とダンジョンコアに諦められた。
「?……まぁ、それは置いておいて、貴方なんでわざわざ出てきたの?」
しかしそのことすらも理解していないリアが、何故、戦闘能力がないダンジョンコアがここに出てきたのか、と首を傾げながらも己が疑問に思っていたことを問うた。
リアはその問いの答えを言うのをダンジョンコアは渋るのではないか、と考えていた。
そしてその場合はダンジョンコアの意思を優先し、そのままその話を流すつもりだった。
しかしダンジョンコアはその理由を躊躇なく口にする。
『我々はブット・ルーズを主ではないと断じました。それだけです』
「主ではないと断じた?」
その訳を聞いてリアは訝しむ。ダンジョンコアの主とは、その迷宮の初突破者に他ならない。そして、その主がダンジョンコアの意思によって変更されることなどあり得ない筈であるからだ。
『肯定します。そもそも、どこかに明記されている訳でも、誰かによって名言されている訳でもありませんでしたが、我々が生み出すダンジョンでの犯罪行為は基本的に禁止されています。また、それとは別件に、今まで貴方様に向かっていったモノたち等は、お察しの通りたかがCランクの迷宮であるこの迷宮にはあり得ない、越権行為です』
――口すら持たない、ただの球体である筈のダンジョンコアの形が、球体から、6~8歳程の人間の形へと変形していく。
『故に今回のブット・ルーズの行動は目に余る、と、我々の創造者たる神々によって判断されました。』
――人間の形へと成ってもその体には顔の凹凸すらなく、まるでただの人形のようだ。
『故に、我々はブット・ルーズを止めるために、貴方様を利用させていただきたい、と考えます』
――しかしいくら人形のよう、と言っても手足がないわけではない。
『勿論、こちらの事情のために利用させていただくだけではなく、貴方様の望みを叶えられる範囲で叶えましょう』
――だから、己が作り出したその片方の手を曲げ、腹であろう場所に持っていき、もう片方の手を後ろに下げる。
『どうか、我々に協力していただけませんか』
――そして、片方の足で膝をつき、もう片方の足を立てて、そう、己の望みを口にする。
ダンジョンコアがリアの前で跪いてから数秒、リアは――
「いいよ」
許可の言葉を、口にした。
お久し振りです!コロナ関係のことが落ち着いたため、1ヶ月ぶりの更新を行いました!
更新が遅くなってしまってすみません……
これからは今まで通り2週間に1回の更新に戻ります!(まぁワクチン接種でゴタゴタしてまた更新一時停止になりかねないんですけど……)
今後ともこの作品をよろしくお願いします!




