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暁の出撃

 漆黒の闇夜に真っ赤な爆炎が次々と炸裂する。

 10式戦車と16式機動戦闘車による行進間射撃は、戦闘用コンピュータで制御されているので確実に魔物の群へと着弾して行く。

 当然、使用している砲弾は榴弾(りゅうだん)だ。

 16式機動戦闘車の主砲である52口径105mmライフル砲からは、通常の榴弾が発射されている。

 しかし10式戦車の主砲は44口径120mm滑腔砲の榴弾は違う。

 HEAT-MPと呼ばれる多目的対戦車榴弾だ。

 この榴弾は、90式戦車でも使われていた砲弾で、爆発と共に鋼球や金属ワイヤーが爆散するため、爆発だけでなく周囲へ多くのダメージを与える事が可能となっている。

 今回のような魔物の大軍が密集して進行してくるスタンピードでは、多目的対戦車榴弾の方がより多くの魔物を殺傷可能なのは言うまでもない。


 AH-64Dアパッチ・ロングボウのアローヘッドによる赤外線暗視装置の映像でも、その効果がハッキリと映し出されている。

 無論、16式機動戦闘車から発射された通常の榴弾による爆発でも、多数の魔物が吹き飛ばされて行く。

 砲撃は休むことなく更に続いている。

 スタンピードの集団も、流石に砲撃を回避するように大きく左右へ別れて進行し始めた。

 だが、その様子はアパッチのロングボウ・レーダーによって瞬時に10式戦車と16式機動戦闘車へC4Iシステムによってデーターが転送され、左右への集団へ的確に砲弾が命中して行く。

 ターゲットへの砲撃は、遠距離砲撃であるため、車輌へ搭載されている攻撃用コンピューターによる自動追尾砲撃だからだ。


 しかし、スタンピードの集団がばらけ始めてしまったので、砲撃から逃れる魔物も多くなった。

 特に足の速い魔物は、砲撃から逃れる比率が多いようだ。

 スタンピードの集団が、大きくばらけてしまうと、遠距離砲撃による効率が悪くなってしまうが、今は兎に角より多くの魔物を撃退する事を優先せざるを得ない。

 俺もAH-64Dアパッチ・ロングボウによるミサイル攻撃を開始する。

 未だスタンピード集団の後方には、足の遅い魔物達が密集して進行している状態なので、それを狙う。


 新たにアパッチ・ロングボウへ装備したハイドラ70ロケット弾ポッドには、先の空中戦で使用したM255フレシェット弾頭が装着されている。

 時限信管なので、着弾までの距離によって、タイマーを発射時にセットすれば、セットされた時間で爆発を起こす。

 スタンピード集団の後方には、昆虫型の大型の魔物が多い。

 特にアローヘッドの赤外線画像で目立つのは巨大な(サソリ)だ。

 尾っぽの毒針を進行方向に向け進行しており、その毒針に刺されれば毒ではなく身体を貫かれて則しだろう。


 そんな巨大蠍の魔物へ向かって、ハイドラ70ロケット弾を発射。

 M255フレシェット弾頭は、ターゲットの巨大蠍の群の上空で爆発し、2500発の金属釘が爆散する。

 金属製のダーツは巨大蠍の身体を打ち抜いて行き、多くの巨大蠍はその場で動かなくなった。

 また爆風で吹き飛ばされた巨大蠍も多い。

 数発のM255フレシェット弾を発射すると、殆どの巨大蠍は沈黙した。

 と、その巨大蠍の屍の後ろから、大型の昆虫型魔物が背中の羽根を広げ飛び立つ。


 それは巨大な甲虫(カブトむし)鍬形虫(クワガタむし)だった。

 昆虫が好きなら、その姿に喜ぶのだろうが、俺は生憎と昆虫は好きでは無い。

 巨大甲虫や巨大鍬形虫は飛び立つと此方へと向かい飛行してくる。

 どちらも夜飛行する昆虫だから、アパッチ・ロングボウのサーチライトを目指しているようだ。

 俺は照明を消し、飛行する昆虫へとターゲット・ロック・オンを行い、直ぐさまハイドラ70を発射。

 ローターへ激突されたら、ひとたまりも無い。


 硬い殻で覆われている巨大甲虫や巨大鍬形虫へ向かって複数のM255フレシェット弾頭が飛んでいく。

 そして、時限信管が起爆して無数のフレシェットが巨大昆虫を貫く。

 巨大甲虫や鍬形虫は、身体を無数の金属釘で貫かれ、そのまま地面へと錐揉み状態で墜落して行った。

 だが、一匹の巨大鍬形虫が身体を貫かれながらも、目の前まで飛来してくる。

 どうやら致命傷を免れた個体のようだ。

 俺はすかさず、M230A1/30mm機関砲を発射。

 チェーン・ガンのモーター音と共に、30mmの弾丸が連続発射され巨大鍬形虫を難なく撃墜する。


 その後も、ハイドラ70ロケット弾での攻撃を続行し、かなりの数の魔物を片付ける。

 10式戦車と16式機動戦闘車による行進間射撃も休む事なく続けられ、相当数の魔物を殲滅し、スタンピード集団の半数以は片付いただろうか。


『ジョーさん、守護者(ガーディアン)ゴーレムが魔物と遭遇したので攻撃を開始します』

『了解、頼むよ、ロック』


 全速力で走ってきた守護者ゴーレム四体が、スタンピード集団と遭遇したようだ。

 予め予想してとおり、スタンピード集団は左右に大きく分かれて進行してきた。

 こちらも、それを予想していたので守護者ゴーレムは左右へ二体づつ別れて進めていたのだ。

 アパッチ・ロングボウの方向を180度反転させると、守護者ゴーレムが発射した大型の火炎弾が魔物を焼き払って行くのが見える。

 同時に風刃の緑色をした輝きが、地面すれすれに飛び交っている。

 巨大な風刃は、魔物を切り刻んでいるのだろう。


 既に、10式戦車と16式機動戦闘車は、スタンピード集団の中へと入り込み、機関銃による掃射を行い始めている。

 もちろん主砲による砲撃も止めてはいない。

 そしてロックの操っている指揮者ゴーレムは、手に持った大型の魔剣から火炎弾や風刃を発射したり、魔剣そのもので魔物を切り刻んでいる。

 10式戦車と16式機動戦闘車は、魔物達を踏み潰しながら尚も進軍を続け魔物へ向けて砲撃中だ。

 しかし、数の多いスタンピードの群は、戦闘車両やゴーレムをかいくぐって行く魔物もいる。


 俺は、ハイドラ70ロケット弾を打ち尽くしてしまったので、その魔物を追いチェーン・ガンでねらい打ちした。

 しかし、全ての魔物を片付ける事は出来ない。

 だが撃ち漏らした魔物達は、最後尾からやってきたセンチュリオン戦車と八九式中戦車によって銃撃された。

 走行速度の遅いセンチュリオン戦車と八九式中戦車も、やっと戦闘へと参加したのだ。


『主様、遅くなりました。……ザッ』

『サクラ、突破してきた魔物は任せるよ。送れ』

『お任せ下さい。主様。……ザッ』

『小僧……ジョーよ、儂に任せるのじゃ。……ザッ』

『テンダーさん、よろしく』


 二輛の第二次世界大戦で活躍した戦車は、機関銃を掃射しながら魔物を殲滅して行った。

 特にテンダーさんの操縦する八九式中戦車は、魔物を踏み潰しながら走行して行く。

 そして砲塔を回転させながら機関銃での掃射も行っている。

 センチュリオンとの距離はかなり離れているので、同士討ちには成らないだろうが流れ弾は当たる可能性もあるので、距離は十分にとっているようだ。


「ナーク、弾薬を補給しよう。一度、ベース・キャンプへ戻るぞ」

「……了解。帰還する」


 M230A1/30mm機関砲の弾薬は未だ撃ち尽くしてはいないが、ハイドラ70ロケット弾ポッドは空だ。

 ハイドラ70ロケット弾ポッドは、まだ数個のポッドが無限収納(インベントリー)から召喚済みだし、ヘルファイアも残っていた。

 ただし、それらをスタブウイングへ装着するには時間を要する。

 "九ノ一"の獣人達が居れば楽なのだが、俺とナークでは非力なので尚更だ。

 しかし、無限収納の召喚回数がリセットされているので、新たにAH-64Dアパッチ・ロングボウを召喚してしまえば時間の節約が可能となる。


 ベース・キャンプへと帰還し、俺は直ちに新たなアパッチ・ロングボウを召喚する。

 同時に両翼のスタブウィングへは、ハイドラ70ロケット弾ポッドとヘルファイアをそれぞれ四発、計八発のヘルファイアを装備。

 ナークは乗ってきたアパッチ・ロングボウから降りると、新たに召喚したアパッチ・ロングボウへ乗り込み、直ちにエンジンを始動した。

 俺も前席から降りてナークへ続いて新たなAHー64Dへ搭乗する。


 既に東の空は明るくなり始めているので間もなく夜明け。

 さあ、暁の出撃だ。







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連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

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― 新着の感想 ―
[一言] 今回の神宮寺の戦い方は防大なら落第だね! 100点満点で40点位だよ?敵の行動制限の 罠を作らず散兵戦に成った時点で落第ですよ? 相手有利味方に負担を強いる戦いを コーディネイトしたからね!…
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