合流
『ジョー兄い、ナーク姉さんと交代してアタイが飛行装置へ乗り込んだよ』
『了解。バレットは忘れて無いよな?』
『もちろんだよ、準備完了だよ』
『よし、それじゃ、作戦開始だ。ロック、ミラ、指揮者ゴーレムと飛行装置の合体を解除だ!』
『了解しました。此方は着地体勢、準備完了です』
『ジングージ様、では、合体を解除して分離します!』
『了解!』
『今、分離しました。指揮者ゴーレム、そのまま着地して、魔剣での水弾による威嚇攻撃をします』
『こちらの飛行装置は、水平飛行に移行して、300m程離れた場所へ着陸します』
『よし、ミラ。馬車へ機首を向けて着陸してくれ。ロック、慎重に馬車の前方を狙ってくれ』
『はぃ、水弾発射! 馬車の前方100m付近へ着弾。街道は水浸しです。あっ、馬車が急停車しました』
『よし、そのまま魔剣で威嚇してくれ。魔剣を街道に突き刺してでも、馬車を動かすな』
『はぃ。馬車は2輛とも動いてぃません……。馬が怯えて暴れています』
『いいぞ、それじゃ、ロック、サクラ、行動開始だ』
『了解です。今、指揮者ゴーレムの胸の扉を少しだけ開きました』
『主様、お任せ下さい。これから飛び降ります』
『了解。奴らの魔術師からの攻撃に注意してくれ。ナークは、防御魔法を何時でも発動出来る様に準備して置く様にロックから伝えてくれ』
『サクラさんとナークさん、二人とも準備完了です。胸の扉も人一人が出られる隙間まで開きました』
『よし、アンの準備はどうだ?』
『ジョー兄い、今、飛行装置の翼の上でアタイの狙撃準備は完了だよ。何時でも撃てるよ』
『よし、直ぐに前の馬車から狙撃してくれ。くれぐれも馬車本体には当てないでくれよ』
『判っているよ。アタイの腕を信じておくれよ。……発射! 命中! 馬車の車輪を破壊したよ!』
『流石だ、アン。後ろの馬車も続けて狙撃してくれ!』
『判ったよ。……発射! 命中! 後ろの馬車も車輪に命中! あっ、馬車が傾いちゃったよ』
『問題ない。これで奴らは移動が出来なくなった。アンは、そのまま待機してくれ。狙いは奴らに合わせたままだ』
『判ったよ!』
『サクラ、作戦開始だ。気を付けてな』
『お任せ下さい、主様。それでは行きます!』
『サクラさんが、幻術を発動してから、扉から飛び降りました。ぁっ! 後方の傾ぃた馬車から、魔術師らしき人物が二名、馬車から降りてきました』
『ロック、直ちに胸の扉を閉めろ!』
『了解。閉めます……。火炎弾を発射してきました! ナークさんが防御魔法発動! 助かりました、有り難うナークさん。胸の扉、いま締め終わりました』
『ナークに、良くやったと伝えてくれ。アン、魔法使い達の、魔法発動用の杖か何かが見えるか?』
『見えるよ。二人とも、魔法発動用の杖を持っているよ。あっ、風刃を発射したよ! ……でも、指揮者ゴーレムに当たって、そのまま消えちゃったよ。凄いね、指揮者ゴーレム』
『アン、魔法使いの持っている杖を狙ってくれ。手に怪我を負わせても構わない。後でミラに治療してもらうから』
『判ったよ。杖の頭に魔結晶が仕込んで有るみたいだから、それを狙うよ。発射! ジョー兄い、杖の頭が吹き飛んだよ。魔法使いに怪我は無いみたいだよ』
『よし、流石アンだ。もう一人の持つ杖も頼んだよ』
『発射! 命中したよ……杖の破片が、魔法使いの腕に刺さったみたい……どうしよう?』
『構うな。後で治療すれば済む。良くやってくれたアン!』
『うん! あっ、今度は聖騎士達が馬車から降りてきたよ』
『よし、作戦どおりだ。ロック、そちらからも見えているよな?』
『はぃ、見えています……。……あの砂塵は……アマンダ隊長達が、追い着ぃて来ました。これで、挟み撃ちとなったので、後は、サクラさんが上手くやってくれれば良ぃのですけど』
『了解。サクラの事だから、抜かりなくやってくれるさ。全員、そのまま注意しながら待機だ』
『了解』
『判ったよ』
『了解です』
サクラは、隠密行動中なので返事は無い。
姿を見えなくして居ても、喋れば奴らに感づかれてしまうから、無言での行動だ。
このアーティファクトのヘルメットには、念話の機能は無いので、必ず喋らなければ通信が出来ないのは、俺の装備の通信機と同じだ。
サクラの幻術は、人の眼を欺く術なので、人の眼には姿は見えない。
しかし、指揮者ゴーレムの空間投影によるビューアには、その姿が映し出されているので、指揮者ゴーレムに乗るロックとナークには見えている筈だ。
これは、訓練中に判った事なのだが、同様にスマートフォンの動画撮影でも、見えない筈のサクラの姿が映し出された事から判った。
それから、妖精族のケサラとパサラにも、姿を消したサクラの姿が見えていたと言う。
それならば、恐らく神眼、真眼を持つマーガレット司教も、幻術に惑わされる事なく、姿を消したサクラの姿が見える筈だ。
この作戦が失敗するとすれば、奴ら――教会の本山からの使者達――にも神眼、真眼を持った者が居た場合だろう。
しかし、以前にマーガレット司教から聞いた話では、神眼、真眼を持った者は、教会関係者の中には、自分以外に一人しか居ないと言うので、その確率は低い。
暫くの間、アーティファクトのヘルメットからは、誰の声も聞こえて来なかった。
そして、突如、サクラの声が聞こえてきた。
『マーガレット司教を離しなさい。さもなくば、貴方の首が身体から離れますよ!』
どうやら、作戦は上手く進んだ様だ。
サクラは、マーガレット司教を捕らえていた教会の使者か聖騎士へ近づき、その首に89式銃剣を突きつけた様だ。
『アン、サクラがマーガレット司教を捕らえている者へ接近した様だが、見えるか?』
『見えるよ。あっ、今サクラ姉さんが姿を現したよ。……今、聖騎士が院長先生を離したよ!』
『主様、マーガレット司教の救出に成功しました。さあ、マーガレット司教、指揮者ゴーレムの方へ逃げて下さい』
『ジョーさん、マーガレット司教が、こちらへ向かって走ってきます。これから、水溜まりを超えて待機状態へ移行します』
『了解、頼む。ナークには防御魔法の準備を、怠らないように伝えてくれ』
『了解しました。今、水溜まりを超えたので、待機状態へ移行します』
『了解。アンは、そのままサクラを援護して何時でも撃てる態勢で待機だ』
『判ったよ。 あっ、サクラ姉さんが、また姿を消したよ』
『今、マーガレット司教を指揮者ゴーレムの掌へ乗せました。これから、操縦室へ招き入れます』
『よし、みんな、良くやってくれた。俺達も、あと少しで到着するから、それまでは奴らが変な動きをしない限りは、そのまま待機だ』
『了解』
『判ったよ』
『了解です』
『主様、任務完了です』
『サクラ、良くやってくれた。みんなも、お疲れ様』
『『『『はい!』』』』
よし、これでマーガレット司教を無事に救出できた。
アマンダさん達も、現場へ到着した様だし、このまま俺達が到着するまでは、何事も起こらねば良いのだが。
『主様、今アマンダ隊長率いる追跡隊の皆様と合流いたしました。マーガレット司教を救出した事は、お伝えしました』
『有り難う。アマンダ隊長達へは、俺達が到着するまでは、奴らと戦闘状態になる事は避けてくれと伝えてくれ』
『畏まりました』
『アンは、奴らが攻撃するそぶりを見せたら、武器の破壊を頼むぞ』
『判ったよ。剣を狙えば良いんだよね?』
『そうだ。多少の怪我は、後でミラに直して貰うから気にしないで撃ってくれ』
『判ったよ』
俺は、操縦するチヌークの速度を更に限界まで上げた。
幸い、追い風の状態なので、もう間もなく現場へ到着できるだろう。
奴らは、俺とミラへ教会の本山へ出頭しろと言い残したんだ。
教会の本山では無いが、ここで俺とミラの姿を見せて、その理由と言い訳を聞かせて貰う事にしよう。
事と次第によっては、教会の本山と言えど、俺は敵に回す事は厭わない。
何なら、聖都とやらへ出向いても構わない。
やがて、チヌークの操縦席から停車している馬車二輛と、それを立ち塞ぐ指揮者ゴーレムの姿、後ろから包囲しているアマンダ隊長達の追跡隊、そして少し離れた場所へ着陸している飛行装置が見えて来た。




