大空へ
指揮者ゴーレムへの広帯域多目的無線機(車両用)と無線用アンテナの搭載作業が完了したので、これで後は飛行装置とのドッキング、そしてレールガンの動作試験を行うだけだ。
この隠し地下工房に有った工具類などは、全て俺の無限収納へ仕舞い込み、此まで吸音材として使っていた綿入り布団も仕舞い込む。
そして、隠し棚にあった電磁砲用の弾丸マガジンも、全て無限収納へ仕舞い込んだ。
弾丸入りマガジンは、大きさもさることながら重量が重くて、とても人の力では運ぶことが出来ない。
マガジンの数は、神鉄製弾丸入りが100個、鋼鉄製が100個で、それぞれ100発の弾丸が装填されているので、10、000発ずつの合計20、000発の弾丸を入手出来た事になる。
弾丸を撃ち尽くしてしまえば、そこでレールガンは使用出来なくなってしまうが、鋼鉄製の弾丸であればテンダーのおっさんへ頼み込めば、何とかなるだろう。
或いは、人工頭脳に相談すれば、新たに神鉄製の弾丸も作り出してくれるかもしれない。
当面、雷竜を倒すためならば、これだけの弾丸と俺の装備が有れば何とかなりそうなのだが、相手は未知の聖獣ドラゴンなので、それは実際に戦ってみない事には何とも言えないのが現状だ。
棚に残っているのは、航空用ヘルメットらしき物と、気密服らしい白いユニフォームだけとなる。
これは、これから飛行装置の試験飛行を行うので、搭乗員となるミラとロックに着用して貰わねばなるまい。
「ロック、ミラ、この飛行用の気密服とヘルメットを着用してくれるかい?」
「はぃ……。僕も着なければ駄目ですか?」
「うーん、まあ、それ程、高度を上げなければ、大丈夫だと思うけど、ヘルメットだけは着けて置いた方が良いと思うよ」
「そぅですね。それではヘルメットだけかぶります」
「私は着用しないと行けませんか? ジングージ様」
「うん、ミラは着てくれ。どんな高速で飛ぶか判らないからね」
「はい……。でも、怖いです」
「……ミラ、あたしが一緒に乗ってあげる」
「ええ、ナーク姉さん。良いのですか?」
「……アパッチの飛行訓練で、少しは飛ぶのに慣れている」
「それは良い考えだよ、ナーク。万が一の場合には、防御結界も使えるしな」
「……そうね」
二人は、そう言って気密服や付属のブーツの様な靴を手に持ち、二人で並んで立った。
そして、ナークの黒い瞳が青く光ると、二人を目映い球形の光が包み込む。
ナークが、防御結界魔法を発動したのだ。
しかし、いつもの防御結界魔法と違い、中の様子が全く見えず、眩しく光り輝いている。
どうやら、防御結界を簡易の着替え用カーテン代わりにした様だ。
さすが、若い女子、やる事が男の発想を遙かに超えていた。
暫くすると、ナークの防御結界が解かれ、残光の中から白いパイロット・スーツに身を包んだ、ミラとナークが現れる。
俺とロックは、二人のパイロット・スーツ姿に思わす息を飲んでしまう。
パイロット・スーツは、二人の身体に吸い付く様に密着しており、それはまるで全身タイツ姿の様だ。
若い女性の全身タイツ姿などを、まさか異世界で見ることになろうとは。
それは、ロックにとっても同じ事だったのだろう。
この異世界には、伸縮性の生地など無く、肌に密着する衣服など皆無だ。
「……この服は、まるで着て無いみたい」
「私……ちょっと恥ずかしいです」
「いや、良く似合ってる……と思う」
「……ジョーさん。目が嫌らしい感じがする」
「気のせいだナーク。アーティファクトの衣服は、凄いなと思っているだけだ。なあ、ロック?」
「はぃ、そのとぉりです。ぼ、僕も、凄ぃなぁと……」
ヤバい! ロックが鼻血をまた出しそうだ。
二人の着ている純白のパイロット・スーツ姿は、まるでSFドラマかアニメの中から飛び出して来た様な姿で、とても新鮮で……そしてエロかった。
「それじゃ、早速に飛行装置に乗ってみてくれ。ヘルメット、忘れずにね」
「……判った」
「はい」
「ミラが、飛行装置に触れば、搭乗用のハッチか何かが開くんじゃないか?」
「僕がさっき、触った時に情報が流れてきてぃます。真ん中の下側に搭乗口が有り、そこから乗り込みます」
「よし、それじゃ頼む。俺とロックは、指揮者ゴーレムに乗り込もう。ああ、コロニちゃんも乗ってくれ。座席は三つ有るから大丈夫」
コロニちゃんは嬉しそうに尻尾を振りながら、何度も頷いている。
その周りを飛び回るパサラが「わかった~」と言って、コロニちゃんの頭の上に乗った。
俺とロックも飛行用ヘルメットを着用し、指揮者ゴーレムの掌に乗って、胸の操縦席へと乗り込んだ。
そして、魔剣らしき大きな剣を手の取り、付属していた帯剣用のベルトを指揮者ゴーレムの腰へ巻き、そこへ大剣を装着する。
更に、レールガンも手にして指揮者ゴーレムの武装装備は、全て装着だ。
『……ジョーさん、聞こえる?』
『ナーク? このヘルメットに通信装置が組み込まれていたのか』
『私にも良く聞こえます』
『僕にも聞こぇてます。念話機能は無ぃみたぃですね』
『いや、言葉の通信機能があれば十分だ』
『……飛行装置にミラと乗り込んだ』
『はい。飛行装置の下部が開いて、梯子が降りてきたので、そこから乗り込めました』
『そうか、それじゃミラ、操縦の仕方は既に頭に入ったろうから、飛行の感覚だけ体感してくれ』
『ミラ、念じるだけで動かせるから、細かぃ事は考ぇなくても大丈夫だよ』
『判った、お兄ちゃんの言う通りに動かしてみる』
『焦らず、慎重に行こう。それじゃ、行くぞ』
『はい。飛行準備します』
ミラがそう言うと、飛行装置を乗せた台座が静かに横方向へ移動して行く。
床に引かれている黒線が、まるでガイド・レールの様に機能している様だ。
そして、横の壁もスライドして最初に入った地下室との壁が一切無くなった。
ロックも、指揮者ゴーレムを動かし、地下室の方へと歩を進めている。
目の前に投影されている空間映像には、ゆっくりと横へ移動していた飛行装置を乗せた台座が、既に停止しており此方を向いていた。
「天井を開きます。同時に床が上昇して行くので、注意してくださぃ」
「了解。ミラ、ナーク、そっちの準備は問題ないかい?」
『大丈夫……だと思います』
『……問題無い』
「了解。それじゃ、ロック頼む」
「はぃ」
ロックが返事をすると同時に、天井部分が横方向へスライド仕始め、同時に床がせり上がって行く。
本当に凄い仕掛けで、古代人達の技術力には感服だ。
空間投影には、古代遺跡都市の風景が映し出され、広場の脇に止めてある軽装甲機動車が見えている。
周りに、人影は見えず、探索者やガイドの冒険者も居ない様だ。
やがて、床の上昇は止まり、床面が広場の地面と同じ高さになった。
飛行装置の台座と、その上に乗る飛行装置も、静かに佇んでいる。
『よし、ミラ。飛行を開始してみてくれ。先ずは浮けと命じるだけで良い筈だ』
『はい、ジングージ様。飛行開始します! 浮け!』
新作の連載を開始しました。
『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』
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舳江爽快




