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小さな……

「コロニちゃん、夕食の前にお風呂にはいろうか。一緒に行こう」


 俺がコロニちゃんへそう言うと、小さな頭を少し傾ける。

 お風呂の意味が通じなかったのか、それとも一緒に食事をするのが不思議だったのか。

 俺は、コロニちゃんの手を取り家の外へと誘い、そのまま宿営準備が完了しているテント群まで連れて行く。

 "九ノ一"の面々やベルが中心となって、夕食の準備が進められているが、まだ暫くは時間を要する状況だ。


「サクラさん、コロニちゃんを風呂へ入れて欲しいのだけど、大丈夫?」

「はい、大丈夫ですが主様より前に、入浴させても宜しいのでしょうか?」

「うん、お願いするよ。俺が一緒よりは、出来れば獣人族が一緒の方が良いだろうと思ってね。入浴の仕方なども教えてあげて欲しい」

「承りました。それでは、同じ種族と似た種族の者の方が宜しいでしょう。ウメ、ヒタキ、私と共に入浴せよ」

「はいっ、お頭様。お供いたします」

「では主様、お先に失礼いたします」

「「失礼いたします」」


 そう言うと、サクラさんと二人の"九ノ一"は、コロニちゃんを連れて、浴場の設置されたテントへと向かって行く。

 そして、それに続いて風呂の湯を担当した、イズミさんも彼女達の後を追う。

 湯加減調整や、水を生み出す事が出来るので、イズミさんも同行する様だ。

 コロニちゃんは、何だか良く判らないと言った表情をしていたが、同じ獣人のお姉さん達と一緒なので、特に不安な様子は無さそうなので、彼女達に任せて置けば大丈夫だろう。

 なにせ、"九ノ一"達はプロのメイドで、この異世界ではメイドがベビー・シッターも行うので、育児に関しても彼女達はプロと呼んで差し支えない。


 俺は、彼女達の入浴が済むのを待つ間、ロックと共に古代遺跡都市の地図を前にして、明日から始める探査の打ち合わせを行う。

 ロックが言うには、以前に探索を行った際に、ゴーレムを外へ運び出すのが苦労したそうで、危険を承知で夜間、闇に紛れて運び出したそうだ。

 この言葉に、俺は二つの疑問点が浮かび、それをロックに尋ねた。


「夜間が危険って、何が危険なの?」

「古代遺跡都市には、人は住んで居りません。理由は簡単で、夜間はセイレーンが出没して人を襲ぃます」

「セイレーン……って、モンスターなの?」

「はぃ。上半身は人で、下半身は鳥のモンスターです。何故か、女性しかぃませんが、言葉は喋れず意思疎通は出来ません」

「そのセイレーンは、人を襲うの?」

「そぅです。歌のよぅな美しぃ鳴き声で、人を眠らせてから襲ぅのです」

「そうなのか……それで夜は、探索者は古代都市から出てくる訳だね」

「はぃ。襲ぅのは、ゴブリンやオークも狙ぅ様です。ぁぁ、古代遺跡都市には、ゴブリンやオークも出没しますので、昼間も要注意です」

「成る程ね。オーガは出るの?」

「オーガは居なぃ様です」

「判った。では二つ目の質問。何故、ゴーレムを夜、運び出したの?」

「それは、警備兵にゴーレムを没収されなぃ様にです。何しろ、今までは動くとは思われてぃませんでしたから」

「成る程、確かに武器としては驚異的な力を持っているものな……納得」

「夜になると、警備兵も居なくなるので、闇に紛れて持ち出しました。昼間の間に、指揮者(コマンダー)ゴーレムに搭乗しておき、夜になるのを待ってから、守護者(ガーディアン)ゴーレムと共に北門から少し離れた森の中へ隠れました」

「ああ、この森だね……古代遺跡都市には、南北二箇所の門があるんだね。しかし、大きな都市だなあ、この古代遺跡都市は」

「大きぃですね。城壁も高くて簡単には登る事も出来なぃので、出入り口は南北の門だけです」

「そうだね。今回は、守護者ゴーレムを発掘したら、俺の無限収納(インベントリー)へ格納しちゃおう。後でも、指揮者ゴーレムへ登録できるのだろう?」

「はぃ、出来ます。面倒事になるのは嫌なので、収納をぉ願ぃします」

「判った。じゃあ、この作戦で行こう」


 俺とロックは、地図とスマートフォンのマップ表示を見ながら打ち合わせを続け、その他の情報もロックから聞いておく。

 暫く打ち合わせを二人でしていると、俺達の元へ冒険者ギルドの受付嬢がやって来た。

 昼間、俺達の受付をしてくれた受付嬢だ。


「ジングージ様、昼は失礼いたしました。コロニは家に居りますでしょうか?」

「いえいえ、昼間は有り難うございました。コロニちゃんは、今、仲間と入浴中ですが」

「えっ、入浴ですか!?何と、お風呂まで設営されたのですか?」

「はい。皆、風呂好きなものでして、長丁場になるので設営しました。はははは……」

「驚きました。未だかつて、お風呂まで持っていらしたパーティーは見た事がございません。羨ましい……。おっと、失礼しました。コロニへ夕食をと思いまして、連れに参りました」

「ああ、コロニちゃんの夕食でしたら、ご心配なく。我々の夕食を一緒に食べてもらいます」

「それは、コロニも喜ぶでしょう。お手数ですが、宜しくお願いします。では、私は失礼いたします」

「わざわざ、有り難うございます。もし宜しければ、ご一緒に如何ですか?何でしたら、お風呂も入って下さい」

「えぇっ、いや、会長(ギルド・マスター)に叱られてしまいますので、又の機会に……」

「そうですか、遠慮しないで下さいね。何時でも来てくれて構いませんので、シラリアさんにも伝えて下さい」

「有り難うございます。では、会長にも伝えますので、今日は失礼いたします」


 冒険者ギルドの受付嬢は、そう言って頭を下げて立ち去って行く。

 スベニやイサドイベでは、住民のための大衆浴場が有ったが、この小さなカタンの町では、大衆浴場が無いのかもしれないので、受付嬢も本音は入浴したかったのだろう。

 まあ、ギルマスのシラリアさんの許可が出れば、別にいつ来てもらっても構わないので、シラリアさんも含めて、御招待してあげる事にする。

 受付嬢が去ってから、暫くすると浴場のテントからサクラさん達が出てきた。


 そして、彼女達と一緒に、着替えを済ませたコロニちゃんの姿も見える。

 コロニちゃんは、入浴前に来ていたフード付きのパーカーの様な姿から一変し、それは小さなメイド姿をしていた。

 どうやら、"九ノ一"達の誰かが、幼い頃に着ていたメイド服を、未だに持って居た様だ。

 その姿は、なんとも可愛い小さなメイドさんで、とても似合っている。

 黒いメイド服の上には、エプロンを重ね着しており、お風呂で暖まった赤いほっぺが良く映える。

 それは、"九ノ一"達の見倣い隊員と言っても、誰もが納得してくれる程だった。







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連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

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― 新着の感想 ―
[一言] 探索前に、現場でドローンで空撮して地形等の 不備や、魔物の巣とか調べよう! 本当は自衛隊の偵察部隊用の大型ドローンが 有ると便利だね!このドローンだと擲弾の着弾観測も 位置情報と共に伝えられ…
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