表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
155/237

遺品

 俺達は、宿営の拠点を設営するため、俺の無限収納(インベントリー)より召喚した装備を手分けして組み立てて行く。

 今回の宿営は、1ヶ月近い長丁場となるため装備も大がかりだ。

 災害救助用の装備から、テントや炊事用の装備はもちろんの事、風呂やトイレなども設置する。

 テーブルや椅子、ベッドなども人数分を設置して、宿泊用のテントは四つ設置して女性用を三つ、俺とロックの男性用が一つだ。


 この時期は、晴天が多く雨は殆ど降らないとの事だったが、食事やミーティングを行うための大型テントも用意した。

 次々と空き地に設置されて行くテント群に、コロニちゃんは驚いた様子で、その作業を見つめている。

 未だ日が暮れるまでは、大分時間が有るのだが、合わせて夕食の準備も行って行く。

 既に、"九ノ一"の面々も、炊飯作業は慣れたもので、テキパキと1(トン)水タンクトレーラから水を汲み、米を研いで野外炊具1号(22改)へセットしている。

 大鍋も複数用意し、水を入れて火に掛ける。


 イサドイベを離れる際、魚人族の方々から大量の魚介類や海草などを頂いてきたし、待望の味噌も醤油も確保したので、美味しい夕餉が出来上がるのは間違い無い。

 夕食と言えば、今までコロニちゃんは食事などは、どうしていたのだろうか。

 ちゃんと食べているのか、少し心配だったので尋ねてみると、『ギルドのお姉さんが持って来てくれる』との事だった。

 そうか、ギルドの職員の人が、食事の面倒までも見てくれていたのか。


 八歳の幼い女の子が一人で生きて行くのは、大人の協力無くしては想像以上に難しい。

 大きな街であれば、孤児院を教会が併設しているので、孤児となった時点で孤児院に引き取られれれば、アンやベル、ミラの様に立派に独り立ち出来る。

 しかし、シラリアさんが言った様に、このカタンの町には教会の出張所は有るが孤児院は無い。

 未だ、母親が亡くなって1ヶ月しか経っていないので、今後は孤児院へ引き取られて行く事になるのかもしれないが、それはギルド職員の総意では無いみたいだ。


 そんな事を考えていると、コロニちゃんが俺の手を取り、自分の家の方へ引っ張る。

 どうやら、家の中へ招いてくれるらしい。

 俺は、コロニちゃんに手を引かれるままに、小さな小屋へと入って行く。

 俺の後からは、ロックが付いてくる。

 以前、古代遺跡都市を訪れた際、コロニちゃんの母親、エリーンさんの親切で泊めてもらったと言っていたので、懐かしかったのかもしれない。


 小屋の中は、小さなテーブルと椅子が二つあり、奥の方にはベッドが見える。

 家具らしい物と言えば、それくらいしかない質素な家だ。

 テーブルの設置されている奥には、台所らしいスペースがあるが、当然ながら使われている様子は無い。

 コロニちゃんは、ベッドの下にある収納用の引き出しから、なにやら羊皮紙を引っ張り出してきて、それを背伸びしてテーブルの上に広げる。

 その広げられた羊皮紙は、古代遺跡都市の地図だった。


「この地図は、僕が以前エリーンさんに見せて貰った地図です」

「そうなのか。冒険者ギルドで貰って来た地図よりも詳細に書かれているな」

「そぅですね……。ぁっ!此処が、指揮者(コマンダー)ゴーレムを見つけた場所です!」

「ちゃんと、印が付いているな。同じ印が此処にもあるけど、此処は?」

「そこが守護者(ガーディアン)ゴーレムが多数、有る場所です」

「だとすれば、エリーンさんはロックをガイドした際の記録を、この地図に書き記していたんだな」

「そぅですね。頭が下がります……」

「他にも、別の形の印が書かれているけど、そこも何かを見つけた場所なのかな?」

「判りませんが、可能性は有りますね。意味のなぃ印とは思ぇません」

「だよな。よし、冒険者ギルドで貰ってきた地図へ、印を写して置こう」

「はぃ。ペンを貸して頂けますか?」

「いいよ」


 俺は、胸のポケットへ挿してある、ボールペンをロックへ渡す。

 百円ショップで買った三本で百円の安物だが、黒が細字と太字、後は赤と青の計四本のボールペン軸が一本のボールペンになっている便利なペンだ。

 羊皮紙だと本当は、フェルトペンの方が書き易いのだが、綺麗に鞣してある羊皮紙なので、ボールペンでも何とか書ける。

 この異世界では、未だに羽根ペンとインク壺が一般的な筆記用具なので、俺のボールペンは大人気だ。


 アントニオさんら、商業ギルドの関係者には、可能な限り配ってあり大好評を博している。

 俺は、喫煙をしないので使い捨てライターを所有して居なかったのが、本当に残念でならない。

 なので、今でも着火には、俺が個人所有していたバーベキュー用の火力の大きなガスライターを用いている。

 ロックは、エリーンさんの地図の印を、冒険者ギルドで貰った地図へ写し終わると、ボールペンを俺に返して来た。

 後で俺は又、召喚すれば良いので、そのままロックに持っている様に言うと、ロックは「ぁりがとぅございます」と笑い、自分の胸ポケットへ挿す。


「コロニちゃん、地図を有り難う。写し終わったから、仕舞って置いてね」


 コロニちゃんは、こっくりと頷くと、羊皮紙の地図をくるくると丸め、ベッドの下の引き出しへとしまう。

 母親エリーンさんが、コロニちゃんへ残してくれた大事な遺品だ。

 他のガイドに奪われでもしたら、幼いコロニちゃんでは奪い返す事も出来ないので、外には持ち出さない様にしているのだろう。

 こうした用心を行う事も、母親が躾をしっかりと行っていたからに違いない。

 そして、それを誠実に実践するコロニちゃんも賢い子だ。


 俺は、印を写した冒険者ギルドで貰って来た地図と、スマートフォンのマップ表示を行い、地図を比べてみる。

 作ほどのエリーンさんの遺品の地図もそうだったが、ギルド製の地図もデフォルメされており、実際のマップとは大分違いがある。

 しっかりと測量されて作成された地図なので致し方無いのだが、これはスマートフォンのマップ表示を見ながら探索を行う必要が有りそうだ。

 最も、ガイドが必ず古代遺跡の探索には付くので、そのガイドが地図と記憶で案内を行うから、これでも問題は無いのだろう。


 俺の様に、地図が正確でないと不安になってしまう事は、この異世界の人々は無いのだろうなと、自分で自分に突っ込みを入れて、一人笑いをしてしまった。

 そんな俺を見て、ロックが不思議そうな顔をしたとき、ドアをノックする音が聞こえた。


「主様、お風呂の準備が調いましたので、入浴をどうぞ」

「ありがとう、直ぐに行くよ」

「はい」


 "九ノ一"の、確かイズミさんの声だ。

 彼女は、水魔法を使えるので、お風呂用の水を大量に生み出してくれたのだろう。

 イズミさんの話しによると、飲料水にもなるらしいが、イズミさんが飲んでみても俺の装備の水タンクの方が美味しいとの事なので、飲料や料理には申し訳ないが使っていない。

 よし、夕飯前に、ひとっ風呂浴びてさっぱりしてしまおう。

 いや、今日は先ずコロニちゃんを風呂へ入れてやろうか。

 となると、女性陣が最初に入浴してもらった方が良さそうだな。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

  ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ