表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/237

観光

 厨房で、たこ焼きの作り方をコック長へ伝授した後、厨房に勤務している料理人達が、実際に焼いてみる。

 出来映えは、大きな失敗は無かったのだが、焼き加減が焼きすぎであったりと完璧では無い。

 コック長は、流石に上手で、しっかりと、たこ焼きを再現していた。

 コック長曰く、イサドイベの生産ギルドへ、たこ焼き鉄板の制作を依頼したり教会と孤児院への通達などは、シムカス伯爵家として行うとの事で、俺の役割はお終いとなった。

 その会話を、傍らで黙って聞いていたレティシア姫も満足そうな顔をしている。


 また、明日になってしまうが、ミラがマーガレット司教から、イサドイベの教会への親書を預かっているとの事で、それを届ける際に孤児院の件も合わせて話しておくとの事だ。

 そうか、ミラも仕事を持っていたのか。

 そこまで俺は、考えて居なかったので、直ぐにイサドイベを離れずに良かった。

 ミラの仕事を聞いたので、明日は俺もイサドイベの冒険者ギルドへでも顔を出してみようかと考えた。

 アンに尋ねてみると、「アタイは、別に用事はないよ」と、素っ気ない答えだ。


 うん、君子危うきに近寄らずか。

 下手に冒険者ギルドへ行くと、揉め事に巻き込まれてしまう可能性もあるので、俺も自重しよう。

 明日は、イサドイベの観光に徹して行動する事にする。

 ミラ一人で教会へ行かせる訳にはいかないので、ロックに同行をしてもらう事にした。

 その話を聞いていたレティシア姫も、「治療で教会には、大変お世話になったので、私も回復した事を報告に参りましょう」と言う。

 当然、レティシア姫が一人で出向く訳もなく、護衛にはローランさんも同行するし、メイド達も同行する。


 イサドイベの街を観光するとなると、16式機動戦闘車や96式装輪装甲車は、目立ちすぎてしまうし、駐車する場所も問題なので、明日は徒歩での行動にする。

 シムカス城内へ2輛とも駐車させておけば、護衛も特に不要なので安心だ。

 ミラの教会での用件が終わったら、無線で連絡してもらい、何処かで合流すれば良い。

 商業ギルドへの用件などは、特にアントニオさんからは依頼されていないし、当然ながら生産ギルドへもテンダーのおっさんからは依頼も無かったので、顔を出す必要は無かった。

 よし、明日は休養日として、イサドイベの観光に徹しよう。


 たこ焼きの件が終了したのだが、ローランさんは「お好み焼き……」と、少し不満な様だったが、狼人族もイサドイベには居る様なので、聞いてみてくれと言うに止めた。

 どちらの焼き物にも、スベニの特産ソースが合う事もコック長には伝えてあり、ソースの缶詰を数個、渡しておく。

 これで、スベニとの交易にソースの缶詰が増えれば、アントニオさんも喜ぶだろう。

 もっとも、缶詰では無く、ソースそのものをイサドイベ風にアレンジしても良いはずだ。

 なにせ、豊富な海産物が手に入る街だから、シーフード・ソースを開発してもらいたいところだ。


 シムカス伯爵家の夕食は、やはり海産物が主体なのかと思いきや、俺の予想を裏切っての肉料理が主体だった。

 どうやら、シムカス家では、あまりシーフードが好まれていない様子で、魚料理も全く無い。

 偶然だったのかもしれないが、タースのフェアウェイ大公家で頂いた夕食に酷似していた。

 決して不味いという訳では無いのだが、昼間の海鮮、刺身が美味しかったからだろうか。

 それでも、アンやベル、ロック、ミラは「美味しいです」と、黙々と食べていた。


 "九ノ一"の面々も、「美味しい」と言って賞賛していたし、ナークも「……美味い」と言っていたので、やはり海鮮よりも肉料理が好まれる様だ。

 しかし、その料理の前に頂いた食前酒が、俺には衝撃的だった。

 それは発泡酒、つまりシャンパンだ。

 これまで、ワインは色々と頂いたのだが、炭酸の発泡酒は初めてだった。

 シムカス伯爵に尋ねてみると、西からの交易により少数だが輸入されているとの事で、どうやらタースへ流通させるだけの数が無いらしい。


 日本で発泡酒の代表格と言えばビールなのだが、葡萄酒が広く親しまれている世界では、シャンパンが好まれる。

 エールやビールは、麦やホップが原材料なので、もう少し広まっていても良いと思ったのだが、全く見受けられない。

 果実酒として林檎や柑橘系の酒は、市場でも流通していたが、圧倒的に葡萄酒が多い世界だ。

 俺は、日本酒を晩酌すると言った事は皆無だが、当然ながら米をベースとした酒も流通していない。


 ■ ■ ■ ■ ■


 翌朝、全員で朝食後に、今日は休養日として、イサドイベを観光しようと話しをする。

 すると、サクラさんが、俺に提案して来た。


「主様、我が部下をミラ様の護衛として同行させましょう」

「ロックも居るし、シムカス家の護衛も付くから大丈夫だと思うけど」

「いいえ、我らは隠密行動に長けております。護衛と気づかれる事なく、ミラ様やレティシア姫様をお守り出来ます故」

「そうか……確かに、メイドとして紛れ込むと、判りにくいね。それじゃ、お願いしようか」

「承りました。ユキ、ホタル、ツキ、三名はミラ様とレティシア姫様の警護をせよ」

「「「はいっ!」」」


 "九ノ一"部隊の三名が、元気な返事をした。

 未だ、15歳から16歳くらいなので、ミラと同じ位だ。

 今は、支給した迷彩服3型に身を包んでいるが、これからメイド服に着替えて来るとの事で、足早に与えられた自室へと着替えに戻る。

 ロックには、念の為に89式小銃と9mm拳銃を携行する様に指示した。

 警護に当たる"九ノ一"三人は、自分の武器も所有しているが、89式多用途銃剣が大層気に入った様で、肌身離さず全員が装備している。


 俺達が徒歩でイサドイベの街を観光に行くと言うと、案内役を同行させようと提案いただいたが、それは丁重にお断りした。

 自由気ままに、知らない街を歩くのが俺は好きだ。

 確かに、ガイドが付いてくれれば、効率的に観光地を巡る事は出来るが、行き当たりばったりの意外性も面白い。

 目立つ格好も避けようと言う事で、全員が私服での行動とした。

 俺は、お気に入りのジーンズにスニーカーだが、流石に南国の街で暑かったので、上はTシャツだけだ。


 Tシャツも横須賀で買った、お気入りの「I ♡ 横須賀」とプリントしてある土産用だ。

 この異世界では、何が書いてあるのか、読める人は居ないのだが、それで良い。

 逆に、読める人が居れば、それもまた重要な事で、女神様か西住小次郎大尉殿の関係者だ。

 最も、米兵の多くが横須賀と言う漢字が読める訳もなく、漢字でなくデザインとして認識しているだけなのだろう。


 武装も、俺は、9mm拳銃と89式多用途銃剣だけだ。

 アンも私服なのだが、武装は89式小銃を背中に背負っている。

 ベルとナークは、俺と同じ武装だがスカートの中への装備なので、丸腰に見えた。

 同様に、"九ノ一"の面々も、サクラさんを含めて珍しく私服だ。

 質素な町娘風な出で立ちで、これなら一緒に歩いていても違和感は無い。


 ミラやレティシア姫の乗った馬車と、護衛の騎士達が乗った馬が出発したのを確認し、俺達も徒歩でシムカス城の城門を潜り、イサドイベの街へと下りて行く。

 シムカス城の周りは、高級住宅街と言った感じで、商店などは殆ど無い。

 事前に聞いた話では、商店や市場が集まっているのは、やはり港の周囲との事で、俺達はのんびりと港へと向かう。

 街の様子は、スベニやタースとは雰囲気が全く違っており、同じ西洋風でもエーゲ海にあるギリシャの島々の街に似た、白く塗装された建物が多い。


 やはり、強い日差しから熱の上昇を防ぐ意味からなのだろうか。

 イサドイベの街は活気が有り、スベニの街に勝るとも劣らない。

 更に、人族の割合に比べて、獣人族の割合も多い様に感じられた。

 港湾都市なので船舶の往来も多いため、他の国々からの流入も多いのだろう。

 当然、男性比率も船員が多いのかスベニに比べて多く、タースの街と同じ位か。


 イサドイベの街を探索しながら、俺達は港に近い市場がある場所までやって来た。

 市場は活気に溢れており、珍しい食品や品物が無いかと、俺は露天に並んでいる品物を片っ端からチェックし行く。

 そんな俺の鼻に、懐かしい匂いが風に運ばれて来る。

 俺は、思わずのその匂いの発生源である、屋台へと走り出してしまったのだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

  ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] 89式牛蒡剣は銃剣で鍛造の鋼を加工してあるので 西洋剣とは違い鋳造ではないので俺砕けず曲がっても 使えるので、くノ一には気に入ったのでしょう! 色も黒で塗装されてるので夜間でも光らず使えるの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ