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「さまよえるタイムトラベラー雪子」(セーラー服と雪女 第ニ部 新世紀編⑧)  作者: サナダムシオ


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8/19

⑧ 公園にて

 次にアタシが目を覚ました時、そこは何処かの、小さな公園の、ベンチの上だった。今度は、暑くも寒くもない、適温だ。風も吹いていない。それに空は快晴だ。冬物のセーラー服を着たアタシには、過ごしやすそうだった。


「……そうか。アタシ、何時の間にか、うたた寝しちゃったのね?」

 独り言を呟くアタシ。


(うたた寝してる間に、タイムトラベルしちゃうとか……かなり重症だわ)

 そんな事を思って、一人でクスクス笑ってしまう。

 傍から見れば、ソレもさぞ、諧謔で異常性を感じる様子だったろう。


 アタシは更に、周りの状況を確認する。

 今は……お昼かしら?

 随分、人の気配が少ないわね?


 ブランコにも滑り台にも、親子の姿は無い。

 公園の真ん中に、柱の先に付いた、大きな丸いアナログ時計を見つけた。

 どうやら正午まで、あと5分程だ。

 そして、公園周りの住宅街の様子を見る限り、日本国内のようだ。


 アタシはベンチから立ち上がり、公園の外へと、ゆっくり歩き出した。

 気のせいか、何だか空気が重い。いやもう、物理的にそんな感じだ。

 うたた寝したせいで、風邪でもひいたのかしら?アタシはそんな事を、自問自答する。


 住宅街の道路で、クルマを数台見かけた。

 いすゞ117クーペに、ホンダシビック、それにトヨタのカローラなど。

 その車種や型から察するに、ここは西暦で言うと、1970年代らしい。

 ただモンダイなのは、そこでは無かった。


 出逢うクルマが、どれもことごとく、停まっているのだ。

 路肩に停車している、という意味ではない。

 それは文字通り、まるで走行中に、凍り付いてしまったかのようだった。


 やがて人影も見えて来た。

 小さな娘の手を引く母親。

 杖を突く老人。

 下校する中学生たち。

 誰もが止まって……いやむしろ、固まって見えた。


 何だコレは?

 アタシはこんなカラダになってから、感じなかった気持ちに襲われていた。

 それは"恐怖"だった。


 自分以外が止まった世界。

 皆がそこに居るのに、関われない世界。

 これなら、まだ、自分以外の人類が、滅亡した世界の方がマシに思えた。

 それなら諦めがつくと言うものだ。


 アタシは、狐か狸にでも化かされているのか?

 いや、そんな、非科学的な……。

 もっと物理的に考えなくっちゃ。


 そこでアタシは、一つの可能性について思い当たったのだ。その可能性とは……。

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