⑧ 公園にて
次にアタシが目を覚ました時、そこは何処かの、小さな公園の、ベンチの上だった。今度は、暑くも寒くもない、適温だ。風も吹いていない。それに空は快晴だ。冬物のセーラー服を着たアタシには、過ごしやすそうだった。
「……そうか。アタシ、何時の間にか、うたた寝しちゃったのね?」
独り言を呟くアタシ。
(うたた寝してる間に、タイムトラベルしちゃうとか……かなり重症だわ)
そんな事を思って、一人でクスクス笑ってしまう。
傍から見れば、ソレもさぞ、諧謔で異常性を感じる様子だったろう。
アタシは更に、周りの状況を確認する。
今は……お昼かしら?
随分、人の気配が少ないわね?
ブランコにも滑り台にも、親子の姿は無い。
公園の真ん中に、柱の先に付いた、大きな丸いアナログ時計を見つけた。
どうやら正午まで、あと5分程だ。
そして、公園周りの住宅街の様子を見る限り、日本国内のようだ。
アタシはベンチから立ち上がり、公園の外へと、ゆっくり歩き出した。
気のせいか、何だか空気が重い。いやもう、物理的にそんな感じだ。
うたた寝したせいで、風邪でもひいたのかしら?アタシはそんな事を、自問自答する。
住宅街の道路で、クルマを数台見かけた。
いすゞ117クーペに、ホンダシビック、それにトヨタのカローラなど。
その車種や型から察するに、ここは西暦で言うと、1970年代らしい。
ただモンダイなのは、そこでは無かった。
出逢うクルマが、どれもことごとく、停まっているのだ。
路肩に停車している、という意味ではない。
それは文字通り、まるで走行中に、凍り付いてしまったかのようだった。
やがて人影も見えて来た。
小さな娘の手を引く母親。
杖を突く老人。
下校する中学生たち。
誰もが止まって……いやむしろ、固まって見えた。
何だコレは?
アタシはこんなカラダになってから、感じなかった気持ちに襲われていた。
それは"恐怖"だった。
自分以外が止まった世界。
皆がそこに居るのに、関われない世界。
これなら、まだ、自分以外の人類が、滅亡した世界の方がマシに思えた。
それなら諦めがつくと言うものだ。
アタシは、狐か狸にでも化かされているのか?
いや、そんな、非科学的な……。
もっと物理的に考えなくっちゃ。
そこでアタシは、一つの可能性について思い当たったのだ。その可能性とは……。




