⑦ バステト
に…
「昔、あなたのDNAマップを分析したのよ」
その黒い猫はそう言った。まるでこちらの心を読んだようだ。
「そうよ。アナタが何を考えて居るのか、全てお見通しなのよ?だって私、神なんだもの。それに、私はアナタの心のSOSを聞いて、ここまでやって来たの」
その黒い猫はニッコリ笑ってそう言った。
「私はボランティアの正義の味方、黒猫神のバステトよ。今のアナタとは……初めまして、かしら?」
「……黒猫神」アタシは呟く。
「そうよ。だから遠慮なく言って。猫の手を借りる?それとも借りない?」
多勢に無勢だ。今更アタシは、虚勢を張るつもりも無い。
「……もちろん借りるわ。是非貸してちょうだい!」
アタシは決断した。
「合点、承知!」
その黒い猫は、まるで江戸っ子のような返事をした。
バステトは、顔の前に剣を縦にして構えると、何やら念じ始めた。
すると、次第に、頭に響く超音波が聞こえなくなり、最後にはすっかり消えてしまった。
「こちらの精神波をぶつけて、効果を相殺したのよ」
黒猫神はそう言った。
「さあ、存分に反撃なさい!」
そしてアタシを、力強く鼓舞した。
アタシは真っ直ぐ上に飛ぶと、両方の掌から、火球を次々に撃ち出し、白いバケモノたちを頭から燃やしていった。
一匹燃やす度に、ヤツラの体内から出て来る、黒いモヤモヤ(つまり四次元人の本体)を、バステトが始末する。効率の良い、即席ツーマンセルの出来上がりだった。
しばらくすると、そこに有るのは、10体の大きな黒焦げ死体のみとなった。そして辺りは、スッカリ静かになった。聞こえるのは、風の音だけだ。
「一丁上がりね?」
バステトは、汗一つかいていない。
多分、大した運動にはならなかったのだろう。
「ところでアナタ、少し嫌な思いをしたぐらいで、自暴自棄になっちゃダメよ?まあ、自分探しの旅も、程々にね?」
「ああ……うん、アドバイスありがとう」
バステトの言葉は、何故かアタシの心に刺さった。
「じゃあね、また会いましょう……あ、次に私に会う時は、初めましての顔をしてね?そうしないと、後々面倒な事になるから」
「何となく……分かります」
アタシはそう言った。
黒猫神はアタシに手を振ると、来た時と同じように、何処へともなく消え去ってしまった。アタシは何となく、現場の様子を確かめたくて、チカラを使って、その場で上昇してみた。
やがて、上空から眼下を眺めると、海岸線の形が見えて来た。
間違いない。ココは南極だ。
あそこに見えるのは、昭和基地だ。
つまり、さっきのバケモノたちは、通称ニンゲンと呼ばれるUMAだったのだ。恐らく四次元人たちが、イルカか何かに憑依した時に、ベースにになった生物が、変質したのだろう。不憫な事である。




