⑥ 対決
『どうだかな?貴様らの動きは、氷山の一角に過ぎん。今後第二、第三のサン・ジェルマンが現れれば、その先の事態は、火を見るよりも明らかだ。我々はソレに、断固対抗する。"我々の影"に過ぎない存在の貴様らが、より高次元の、我々の世界を侵すなど、決して許されない行為なのだ』
アタシとソイツの話は、平行線だった。
『で、どうするの?ここでアタシを始末するつもり?』
『……それも悪く無い考えだな』
ソイツはそう言うと、両腕を使って陸地に這い上がって来た。
やはり大きい。頭のてっぺんから尾の先まで、5mはありそうだ。
だが、こんな出来損ないに負ける気はしない。
アタシはそう思った。
しかし、それは少々早計だった。
何と、ソイツに続いて、次々に仲間たちが、岸に這い上がって来たのだ。
総勢10体か。コレは少しばかり、てこずりそうだった。
『では、行くぞ』
ソイツ等は礼儀正しく宣言し、アタシに攻撃を開始した。
まったく、憎めない程紳士的だこと。アタシは少し呆れた……が、実はそれどころでは無かった。
ヤツラの攻撃が独特だったのだ。まずは、精神波のような、超音波のようなモノで、脳に直接ダメージを与えに来る。ソレは形容しがたいモノだった。アタシは吐きそうになりながら、ソレに辛うじて耐えていた。
身動き出来ないそんなアタシに向かって、奴らの尾ひれによる物理的な攻撃が始まった。10体の白いバケモノに囲まれたアタシは、まるで平安貴族の蹴鞠のように、その輪の中で、右へ左へと打撃を食らい、翻弄された。バリヤの中に居るとは言え、コレは中々辛かった。
こちらから仕掛けるためには、バリヤを解かなければならない。
しかし、この寒さに耐えられるだろうか?
それに、超音波の影響を、より強く受けてしまう。
ならチカラで空高く飛んで、そのまま時空ジャンプして逃げるか?
奴らが、同じチカラを持っていないという保証は、どこにも無い。
何より敵前逃亡など、もっての外だ!
どうする?
「ねえ、アナタ。今、猫の手も借りたい気分かしら?」
その時、出し抜けに耳元で囁く声が聞こえた。
しかもソレは日本語だった。
アタシが振り返ると、背後に直立二足歩行の大柄な黒い猫が居た。
サーバルキャットくらいのサイズか?
ソイツは金色の簡易的な甲冑を見に纏い、手にはオリハルコンの剣を握っていた。
いや、それより、コイツはどうやって、アタシのバリヤの中に入ったのだ!?




