㉑ 阿修羅
少年のお手並みは鮮やかだった。かなり戦闘慣れしている。もしかしたら、見た目は少年でも、中身は……。
アタシがそこまで考えた時、「誰だ!?そこに隠れているのは?」と、当のその少年に見つかってしまった。
アタシは両手を上げて、素直に物陰から出て行った。
「何だ、非戦闘員のオンナか……だが見かけない服装だな?ひょっとして敵のスパイか?」
少年はアタシに、まくし立てた。
「……いやあ、アタシは、ただの通りすがりの旅の者です」
ウソでは無い。"ただの"と言う部分には、些か語弊が有るが……。
「偶然こんな戦場のど真ん中に、迷い込んだとでも言うのか?」
「ええ、まあ、そう言う事になりますかねえ……」
「そんな話が信じられるとでも?」
「まあ……無理でしょうねえ。でも、どうせ嘘なら、もう少しマシなモノを考えますよ?」
「ふん、まあ、いい。見逃してやるから、何処へでも去ればイイさ」
「あのう……差しつかなければ、教えて頂きたいのですが?」
「何だ?道案内ならしないぞ。こう見えてもオレは忙しいんだ」
「ええ、ええ。ソレはもう、今見ただけでお察しします……あの、アナタのお名前は?」
アタシは相手の機嫌を損ねないように、出来るだけへり下った態度でそう尋ねた。
と言うのも、近づいただけで、その強者としてのオーラが半端無いのだ。
その少年が只者では無い事だけは、確かだった。
「他人に尋ねるなら、まず、自分から名乗るのが、礼儀だろう?」
(あら、意外と紳士的な、論理の思考なのねえ)
アタシは思った。
「コレは失礼しました。アタシはサン・ジェルマン伯爵の仲間で、真田雪子と申します。日本人です」
「何!?サン・ジェルマンだと?」
(あ~あ、伯爵。試しに名前を出してみたけど、アナタこんな、古代インドにまで来て、ナニやってんのよ)
アタシはつい、そう思ってしまった。
「ソレを早く言え!ではオマエも、時を旅する一団の、メンバーと言う訳なのだな?」
「そうなんです……信じて下さるんですか?」
「信じるも何も、伯爵には、以前、色々と世話になったからな!」
(おお、ファインプレーだぞ伯爵!アタシは心の中で拍手した)
「申し遅れたが、俺の名はアシュラ。神の戦士だ。帰ったら伯爵に、よろしく言っておいてくれ!」
彼はそう言うと、また増援された追手に向かって切り込んで行った。
まあ、多勢に無勢にも見えるが、彼が負ける事は無いだろう。
そう言う、頼もしい後ろ姿だった。




