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Refrain - 再起は精霊とともに -  作者: 青黄緑
『大精霊の谷』編
28/43

27. 勝利と違和感


耳をつんざくような雄叫び。

見た目のイメージからすると、遠吠えと言った方が正しいのかもしれない。


それは決戦の合図や気迫の表れといった高尚なものではなく、仲間に異常事態を知らせるための本能的な反応であることを、ライラは理解している。


(仲間に知らせたのか。話によれば少なくともあと二体、いや、もう少し多い場合を想定して動かないといけないね。)


多少開けた場所とはいえ、周囲は大小の岩場に囲まれている。

魔獣が身を隠すには十分過ぎる条件である。


咆哮が岩壁にぶつかり、幾重にも重なって跳ね返る。

音の出所を惑わせるその残響に、リゼが杖を握る指に力を込めるのが分かった。


カツン、と乾いた音が響く。

誰かが小石を弾いたのか、あるいは、岩陰で獲物を狙う「何か」の爪が鳴ったのか。


風が止まり、炭鉱の入り口から吹き出す冷気が、張り詰めた空気を刺激する。

静寂が、物理的な重さを持って四人の肩にのしかかった。


「いつ、どこから仲間が来るか分からない。周囲の警戒は私が受け持つ。

多対一が理想だけど、逆にそれをされないよう単独行動は厳禁。

こちらから仕掛けるんじゃなくて、迎撃を心がけて。

必ず、四人まとまって迎え撃つこと。」


そこまで言ったところで、目の前の三体が岩場を蹴り、飛び上がる。


四人を離れないよう言った理由は二つある。

一つは言葉通り、離れた一人が集中攻撃を受けない為。

そしてもう一つは、相手の動線を絞る為である。


周りの気配、物音……。

五感全てを研ぎ澄まし、状況を正しく把握する。

死角からの攻撃がまだ来ないことを確認し、向かってくる目の前の魔獣を観察する。


速さや配置、自分達との距離を見極めた上で、ライラは杖を構え、魔力を練り上げる。

だが何も起きない。

いや、正しくは『まだ』何も起きない。


「みんな、奥の二体の攻撃に集中して。」


「二体?なんでーーー」

リゼが疑問を呟く。

が、それを言い終わるよりも早くライラの言葉の意味を理解する。


先頭を走っていた魔獣が『そこ』に足を触れた途端、地面に魔法陣が浮かび上がった。

そして、無数の岩の棘が魔獣を襲う。


回避をする間も与えず、恐らく魔獣は自身が何にやられたのかさえ気付かないまま絶命した。


残りの二体は目の前で仲間がやられたのを目の当たりにし、立ち止まり、警戒を強める。


「すごい……。これはライラさんが?」


レントが驚きと感嘆の合わさったような反応を示し、アイクは言葉こそ発してはいないが、誇らしげな表情をライラに向けた。


「そうだよ。リゼが今修行中の設置型魔法陣の実戦演習ってとこかな。」


何事も完成させるには完成品を見ないことにはイメージが掴めない。

タイミング、シチュエーションともに実戦で見せるには最適な状況だ。


「これが、設置型魔法陣の力……。いざ実戦で見るとほんとにその凄さが分かります。」


リゼは今この瞬間にも自分ならどうするかを考えている。

警戒を解かず、かつ頭の中ではどのように術式を組み立てれば今見た魔法を再現できるのか、今ならその本当の難しさが理解できる。

それだけに、その遠さを実感する。


「じゃあ応用編も見てみようか。」


ライラはそう言って地面を杖で叩く。

魔力が杖の先から地面を伝い、先程の魔法陣へと注ぎ込まれる。

すると、止まっていた岩の棘が残りの二体を穿たんと波打った。


一体は逃したものの、もう一体はきっちりと仕留める。

遠隔での魔法の発動である。


「さぁ、行くよみんな。周りにも気配が集まってきてる。まだあと数体はいるはず。気を引き締めて。」


それぞれ多少の違いはあれど、三人はその言葉に自らを奮い立たせる。

ある者は正義の為に、ある者は同じ過ちを繰り返さんとする為に、そしてある者は、師の高みへと追い縋らんとする為に。


残る一体の魔獣が先ほどよりもさらに猛々しく雄叫びをあげる。

そして、四人の喉元を掻き切らんと向かってきた。


これをアイクとレントが迎え撃つ。

爪での一撃をアイクが受け止め、その隙にレントが飛び上がり、剣を振り下ろす。


その一撃に魔獣は怯み、アイクへと向けていた力が一瞬緩む。

その隙を逃さず、アイクは爪を弾き返し、返す刀で更なるダメージを与えた。


「リゼ、今だ!」

アイクが指示を出す。


「任せて!」


すでに詠唱を済ませて万全の体制のリゼが魔力の砲撃で追撃、とどめを指す。


瞬間、ライラが後方からの気配を察知する。


「後方から……三体!みんな、来るよ!」

その言葉通り、後方の岩陰から仲間が現れる。


同じように魔獣との間に魔法陣を設置する。

先程のように綺麗に決まるとは思ってはいないが、牽制には十分だ。


しかし魔獣は、綺麗にそこだけを飛び越えるような不自然な動きを見せた。


(避けた……?)


多少の驚きはあったものの、崩れるようなことはなくしっかりと対応する。

アイクたちも冷静に対処し、残り三体の魔獣も討伐することに成功した。


初陣としては上々の結果だが、先程見せた魔獣の不可解な動きに、ライラは少しの引っかかりを覚えていた。


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