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黒き邪心に薪をくべろ  作者: XI
33.王が首を刎ねられた後の記録

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33-2.

*****


 翌日、諸々の情報を得て、「彼ら」に会うことができた。

 夜のことだった。

 飲み屋でのことだった。

 なんでもこういうところのほうが、スパイ等の扱い等については安心感が得られるのだという。


 アユトは黒い短髪の男だった。

 グリッツは長いアッシュの髪だった。

 ヴィクトリアは豊かな栗色の髪が美しい女性だった。


 四人席。

 テーブルを挟んだデモンの正面にはアユトがいて、彼の左隣にはグリッツ。

 デモンの右隣には女性然としたヴィクトリアの姿がある。


「あなたはタシロ王の(かたき)をとることなんて無理だと言ったようだけど」とアユトは言った、美青年であり、その口調はどことなく子どもっぽく感じられる。


「相手が圧倒的だからこそ、王は簡単にかっさらわれたんだろう?」

「それはそうだけれど、ギロチンにかけられた彼の無念を晴らさずにはいられないよ」

「ほぅ。よりにもよって、斬首とはギロチンだったのか」

「最も忌むべき刑さ。まばたきはするっていうよ?」

「ああ、そうだ。首を斬られても、しばらくのあいだ、首も身体も生きているようだ」


 このタイミングで「許せねーに決まってるだろ」とグリッツが口を開いた。


「しかしだグリッツ氏よ、力差があるというのは、まさにそういうことではないのか?」

「それでもやれる。俺たちは先方の王様を(あや)めることができる」

「そう信じるのは勝手だが」

「そう思うなら黙ってろよ。あんたはとびきりの美人さんだけど、メチャクチャおせっかいだ」


 デモンがアユトのほうに目を向けると、べつに謝罪の言葉はなく、ただ肩をすくめて見せただけだった。


「ヴィクトリア嬢はどうかね? 三人の中では最も冷静な面持ちであるように思うんだが?」


 するとヴィクトリアは「私たちならできます」などと力強く宣言し。


「ほぅ、おまえまで。そう言える根拠は?」

「根拠はないかもしれません。私たちが敵わなければ――という思いからの希望的観測なのかもしれませんね」


「たとえばだよ、デモン・イーブル」と、ビールを微々たるほどにすすったあとにアユトはそう口を開き。「ご協力、いただけないかな? あなたがいれば確実に先方を(やれる)

「面白い事象を求めているのが当方だ。しかし、依頼されるのであれば、相応の報酬を請求したいな」

「金銭なら集められるよ。なにしろ僕らは英雄なんだから」

「王を守れずして何が英雄なんだ?」

「それはもう言いっこなしにしてよ。これからのことを考えてほしい」


 口裏でも合わせていたかのように、三人は椅子から腰を上げた。

 そして、揃って「お願いします」などと頭を下げてきたのである。


 デモンは眉を寄せた。


「そもだ、アユトよ、わたしの何がおまえたちの心に刺さったのか――」

「ひょっとしたら、あなたは知らないのかもしれない。けれど、あなたは有名なニンゲンで、災害級の魔女なんだ」


 しばしばそう呼ばれていることは知っている。

 ああ、そうか、その旨、ご存知であるようであれば、頼られてもおかしくない、か。


「お隣さん――国の名は覚えたようで忘れてしまったが、大国なんだろう? そういった国家のトップをぶち殺すことに胸が躍らんはずもない。協力しよう。なにせ暇を持て余している女でもあるんでな」

「話が早くて助かるよ」とはアユトのセリフ。

「いいから三人とも座れ。目立つのは御免だ」


 デモンに言われたとおり、三者とも椅子に座りなおした。


「で、奇襲でも仕掛けるのかね? 大人数相手ならその相手に深く入り込むという手もあると思うが」

「後者だと時間がかかるよね? だから前者で話を進めたいんだ」

「失敗の確率は低くないと思われるがね」

「あなたがいても?」

「いや、わたしがいればしくじるなんてありえないさ」

「早速明日、実行するつもりなんだ」


 ほんとうに気の早いことだ。

 そも、そういうことであれば、どうして前日にアルコールなどあおっているのか。


「前夜祭というか、前もっての祝勝会だよ」と、アユト。


 それはひょっとしたら間違っていうのかもしれないぞ。

 最後の晩餐となるかも可能性もないわけではないだろう――と弱気な事実を謳っておく。


 ――そのへん、考慮しているようだった。

 片道切符の暗殺者になる可能性も、考慮しているようだった。


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