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そうだ、異世界でも強盗しよう-35歳TS少女の成り上がり -  作者: 東山統星
シーズン1 天使の顔を持つ怪物──シオン・タカハシ

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005 酒好き天使様

 ホテルに入ったシオンとヘーラーは、それなりに広い……ただしタバコの匂いが広がる部屋にたどり着く。さすがは安いホテルといったところか。


「寝られれば、それで良いんだが」


 シオンはベッドに寝転がる。いきなりこの世界へやってきて、疲れも溜まっているのは間違いない。彼、いや彼女は目を閉じ、これからの行動について考える。


(カネがなければ、なにもできない。タバコを一箱買うことすらできない。手持ちには、安っぽいハンドガンがひとつ。無茶振りにも、程というものがあるだろうに)


 死んでしまったのだから、最初からリスタートするのは仕方ない。そんなことくらい分かっている。分かっているが、この少女の姿でまともに仲間を集められるとも思えない。


「シオンさん、お酒飲んで良いですか?」


 思慮を巡らせるシオンに、ヘーラーが頓珍漢なことを言い出す。彼女は冷蔵庫からビールの瓶を取り出し、今まさに飲もうとしていた。


「ダメだ、馬鹿。おれだって酒飲みてェんだよ」

「でも、今のシオンさんは金髪翠眼の少女ですよね? なら、ジュースだけで我慢すべきです」

「死ね」


 だいたい、卑しくも天使を自称するヤツが酒など飲んで良いものなのか。馬鹿馬鹿しい。

 とはいえ、ヘーラーはアルコールの禁断症状を起こしているようだ。


「はぁ。好きにしろよ。責任は取らないぞ」

「やったー!! やはり瓶ビールに限りますよねッ!!」


 ヘーラーは、瓶を手刀で開けてそれを一気飲みし始めた。脳みそがアルコールで構成されているのか? と言いたくなるが、もう相手にするのも面倒臭い。


「うぃー……。やはり効きますねぇ」

「あぁ、そうかよ。……つか、ベッドひとつしかないんだな」

「大丈夫ですよ! 私がシオンさんを抱きしめて寝ますから!!」

「声を潜めろ、と言っているだろうが。キーキー騒ぎやがって」

「お酒を飲んだら、声だって大きくなりますよ!! さぁ、私の胸に飛び込んでくるのです!!」


 抱きつこうと向かってきたヘーラーにアッパーを食らわせ、彼女が気絶したのを確認し、シオンは気だるそうにベッドに座る。


「笑えねェ冗談だよ、全く」


 ヘーラーが、気持ち良さそうに気絶する中、シオンは薄いホテルの部屋の外から、車が停まる音を察知する。


「……〝パープルズ〟って連中か?」


 まぁ、追跡されていてもおかしくはない。シオンは銃を持ち、一旦ホテルから出てみる。

 外には、4台ほどのベンツが停まっていた。車から出てきた連中は、アサルトライフルに防弾チョッキを羽織り、まさに臨戦態勢といった感じだ。


「死にに来るとァ、良い度胸しているねェ……」


 拳銃の弾数は8発。セダンから降りてきたのは、総じて12人。そもそも弾丸が足りない。

 ただ、こちらには異能力がある。〝天空の死神〟という仰々しい名前の、異能力が。

 そうして、ホテル前でシオンが突っ立っていると、


「おい、クソガキ。テメェ良くも、ふたりも病院送りにしやがったな」

「病院送りにされるほうが悪いだろ。クソガキ相手にさ」

「それもそうか」リーダー格の男は不気味な笑みを見せる。「ま、報復カエシをしねェわけにもいかない。悪りィけど、ここで死んでくれねェか?」


 そう言い切った直後、

 弾丸が、シオンの頬を掠めた。シュー……という銃弾の音とともに。


「容赦ないねェ」

「威嚇射撃ってヤツだ。さて、オメェら。蜂の巣にしてやれ」


 シオンは、深く息を吐く。

 すると、

 その金髪の少女は、クレーンに吊られるかのごとく空を舞う。


「分かった、分かった。〝私〟はここにいるから、当てられるものなら当ててみろ」

「あぁ、そうさせてもらうぞ」

 リーダー格の男は、シオンに向けて指を指す。

 そのときには、銃弾の雨あられがシオンの身体に直撃した。


「そりゃあ、無防備に空飛んでいりゃ喰らうか」


 けれど、シオンは動じない。彼女は続ける。


「ただ、肩こりを感じるような年齢でもないんだ。さぁーて、ご近所迷惑は良くないことだよな?」


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