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そうだ、異世界でも強盗しよう-35歳TS少女の成り上がり -  作者: 東山統星
シーズン1 天使の顔を持つ怪物──シオン・タカハシ

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004 〝ヘーラーお姉ちゃん〟

「つ、翼ッ!?」


 チンピラのひとりが叫ぶ。しかし、シオンは気にする素振りも見せず、その翼を腕でも動かすように叫んだチンピラへ当てる。

 すると、

 バコンッ!! という破裂音とともに、チンピラはその場にへたり込む。血が飛び散り、うめき声をあげる。


「クソッ! このガキ、魔術師か!?」

「やべェ!! 逃げンぞ!!」


 背中を見せた連中など、放っておいて良いだろう。シオンはフーッと息を吐き、翼を引っ込める。


「し、シオンさん?」

「なんだ?」

「貴方、完全に悪事に使っていましたよねッ!?」

「正当防衛だろう」

「し、しかし──」

「おっ、拳銃があるな。とりあえず、コイツを使うか」


 呻くチンピラから拳銃を抜き取り、少女の手にはやや大きい代物をベルトの間に隠す。


「さて、寝床を探すか」


 呼吸をするように、チンピラたちを痛めつけたシオンは、行く宛もなく夜の摩天楼に向かっていくのだった。


 *


 チンピラから奪った財布には、10メニー札が7枚。70メニーの価値は分からないが、自販機の値段を見る限り、1メニーでジュースが一本買える。新聞は3メニー。タバコは10メニー。となれば、安いホテルであれば泊まれるだろう。


「しかし、この姿で泊まらせてくれるホテルがあるものか」


 普通に考えれば、今のシオンの見た目なら親がいると思われる。なので、せいぜい家出少女として保護されるのがオチだ。ただ、シオンに親はいない。となれば……。


「おい、ヘーラー」

「な、なんでしょうか?」

「オマエを姉代わりにして、ホテルへ泊まるぞ」

「仕方ないですね……。でもひとつだけ」ヘーラーは、底意地悪い笑みを見せる。「姉というのなら、私のことを〝ヘーラーお姉ちゃん〟と呼んでください」

「気持ち悪りィな」

「仕方ないでしょう!! 金髪翠眼の女の子からお姉ちゃん、なんて言われたら、私妊娠するくらい嬉しいんですから!!」

「いよいよ気色悪いぞ。まぁ良いや。減るものでもない」シオンはヘーラーに上目遣いする。「ヘーラーお姉ちゃん、お願い」

「……シオンちゃぁぁぁぁん!!」


 抱きつかれそうになったので、シオンは彼女の包容を避ける。壁に激突したヘーラーは、すすり泣きながら、


「なんでこんなひどいことするんですか!?」


 と逆ギレしてくる始末だった。


「うるせェよ。抱きつかれたくないんだ」

「ひ、ひどい……」

「ひどいのは、おれをこんな姿にしやがったオマエの脳髄だろ」

「うー……」

「ともかく、近くに安いホテルがある。早くカネ持って空いているか聞いてこい」

「はいぃ……」


 非常に不服そうなヘーラーだが、誰が悪いのかといえば彼女自身なので、同情する気にもなれない。

 ヘーラーが空き室確認をしている中、シオンは夜の街を見上げていた。


「まさに計画都市だな……」


 建ち並ぶ摩天楼、歴史的建造物がなさそうな街並み、飛び交う車とバイク、定期的に聞こえる発砲音。あまり治安の良い街とはいえない。


「……あの銀行、襲いやすそうだな」


 道路が目の前にあり、警備もさほど多くなさそうな小さい銀行を見つける。夜なので閉まっているが、最初の強盗にはお誂え向きだと感じた。

 といっても、強盗にはそれなりの人員がいる。ガンマンにドライバー、ハッカー辺りは必要だろう。また、この世界には魔術があるらしいので、それに対する対策も練らなければならない。

 そうやって銀行を眺めていると、


「シオンさん、ホテル空いているそうです~」


 ヘーラーが戻ってきた。先ほどまで寝ていたため眠たくないが、落ち着ける場所は必要だ。シオンは、ヘーラーとともにホテルへ入っていくのだった。


(ま、近いうちに狼煙を上げるか……)


 結局、強盗の世界でしか生きられないのがシオンという人間である。それ以外に、稼ぐ方法を知らないのだから。


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