003 天空の死神
「……まぁ、オマエなんか殺しても、ハクが落ちるだけだしな」
確かに、強盗する際にヒトを殺めたこともある。しかし、殺すにしても格というものがあるのも事実。それにこんな馬鹿を殺めたところで、意味がない。
「といっても、こんな姿じゃ強盗してもギャグにしかならないな。警備員に笑われちまうよ」
「また強盗をするつもりですかッ!?」
「当たり前だろ。それ以外の稼ぎ方を知らねェんだ、おれは」
「……〝おれ〟とか言わないでくださいよ。それに、もっと女の子らしい言い回しをすべきです」
「なるほど。よほど痛い目に遭いたいわけだ」
「そ、そんなつもりは毛頭ございませんッ!! ただ、そういう言い方をしなければ、周りのヒトに訝られますよ?」
「まぁ、一理あるか……」
こんな姿にされてしまったので、相応の口調にならなくてはならないのも事実であろう。それでも、今まで男性的な口調だったのに、いきなり女性風に言い直すのは、なかなか苦労しそうだ。
「で? おれ、あぁいや、私に与えられた能力ってなに?」
「〝天空の死神〟というものですッ!!」
「声を潜めろ。オマエの声、耳障りなんだよ」
「あ、ごめんなさい……。で、ですが、とても強力なものですよ?」
「どういうものなんだい?」
「まず、飛行能力が付与されます。更に、翼を生やすことができ、それらは敵に触れさせることで爆発を付与するのです」
「へェ。面白い能力だ」
「ただ、使うには相応の集中力が必要になります。いわば、超強力に近い力といえるでしょう」
「じゃあなにか? 魔術もあるのか?」
「この〝アンゲルス連邦共和国〟は、通称〝魔術と技術の国〟と言われていて、魔術師は人口の6割を占めます」
「そりゃあ、結構。とりあえず使ってみたいものだね」
「しかし、これはあくまでも自衛の力。決して、悪事に使ってはなりません」
「それをおれにいうのか? オマエ、強盗犯と組んでいる自覚あンの?」
「それでも、私は貴方に更生してもらいたいので」
「あぁ、そう……」
ここまで言っておいてなんだが、今のシオンは少女だ。そもそも、強盗なんてできないと思ったほうが良い。味方集め然り、銃火器の扱い然り、見知らぬ街で強盗計画を立てるという危険性然り……現状、すぐに強盗へ取り組むのは不可能であろう。
「ま、与えられたカードで勝負するしかない、って言うもんな」
「そうです。貴方は、自分の少ない手札で生き残るしかない。だからこそ、まずは子役を目指して──」
シオンは、意味の分からないことを言い出したヘーラーを無視して、ダラダラと夜の街を歩き始める。
「ちょ、無視しないでくださいッ!!」
「ガン・ショップはどこにあるかねェ……」
先ほど、チンピラから奪った財布にはカネがある。安いハンドガンなら買えるだろう。とりあえず、銃がなければ落ち着かないのがシオンの悪癖だ。
と、歩みを進めていれば、
「おい、あのガキだッ!! おれらのホーミーに金的しやがったのは!!」
紫色のバンダナと短パンを履いた、いかにもチンピラのような連中が、シオンを指差してきた。
「はぁ」
シオンは溜め息をつき、指を曲げる。
「テメェ、良くもおれらのホーミーをひでェ目に遭わせやがったな!? ぶち殺してやるよ!!」
不良は3人。すでに拳銃を取り出している。こちらにも銃があれば勝てるだろうが、いかんせんそんな代物は持っていない。
だからシオンは、息をスゥーと吐く。
そうすれば、
背中がバチバチッ、と光り始める。
「なるほど」
鉄のごとく落ち着けば、〝天空の死神〟とやらが発動するらしい。あとは、どの程度動かせるかだろう。




