第7話
「あのさ、服装なんてどうだっていいんじゃない?」
アスタロトは姉の声で、現在に引き戻された。
「え~、なんでだよ?」
「意外と天使なんてオシャレには疎いのよ。どうせ、あんたの服装なんて気にしちゃいないわ」
「そ、そんなあ~……!」
身も蓋もない事を言う姉に、たちまち萎えてしまったアスタロト。
「でも姉貴、少なくともウリエルはオシャレだと思うよ」
彼は、姉の”天使はオシャレに疎い”という言葉に抵抗してみた。これは贔屓目ではなく、本当に天使の中で(ウリエルは)一番のお洒落だと彼は思ったのだ。
錬金術に長けた彼女が、いつも自分が作成したアクセサリーを身に付けてるのを彼は知っている。
するとアシュトレイトは「あんた、彼女の”後ろ”に誰が付いてるか知ってるでしょ?」と、意地悪そうにニヤリとした。
(……ん、たく。こういうところは昔から変わってねえな)
アスタロトは、一人の女性の姿を思い出していた。
「リリス……だろ?」
彼は顔をしかめた。
リリス――――天使でも、アスタロト達のような地獄管理界の者でもない。人間界でいう悪魔で、美しい妖魔だ。今は、天界の花園の管理人を任されている。
彼は、ウリエルが時々彼女と一緒にいるという噂を耳にしていた。そのせいか、勝手に彼はライバル視しているのだ。
それが、ただ仲が良い友人ならばアスタロトも別に問題視してないだろう。
しかし、彼はリリスに対して、ウリエルへの感情が友人以上のものを感じていたのだ。
実は彼は一度、管理界で彼女に会った事がある。その時のリリスのアスタロトを見る勝ち誇った目が、今でも忘れられなかった。
『ねえねえ、見た? ウリエル様の右耳』
『うんうん、見た見た!』
『あれって人間達の間で流行ってるイヤーカフだよね』
『あれ、リリス様もしてたよ。おんなじの!』
『もしかして、お・そ・ろ・い?』
『キャーッ! それってー!』
以前、廊下ですれ違った女子の会話。
『しっ! アスタロト様に聞こえる』
――――もう遅いよ!
「まあとにかく、セレブ連中のパーティーにでも潜入か覗いて見れば、良い見本があるんじゃない?」
「……そっか。そうだね」
彼女は何でリリスなんかと一緒にいるんだろ?
アスタロトはそんな事を考えながら、姉に生返事をした。
その後、アスタロトは姉であるアシュトレイトと惜しみつつも(おそらく永遠の別れとなるであろう)、その地を後にしたのだった。




