第5話
――――アスタロトは、姉のアシュトレイトに説明し終えた。
「あんた、まだあの娘のケツ追っかけてるの?」
アシュトレイトはため息を吐き呆れた。
「ケツって……。好きなんだ。本気なんだ」
「やめときなって。あいつ怒らせたら怖いぞ~」
彼女は両手をヒラヒラさせ、弟をからかった。
(それ、アスモデにも言われた)
アスモデの奴……。
「ウリエル? あいつはやめとけよ。あいつ(性格が)キツいだろ」
ふん! うるせーよ!
その時はそう反論したが、ある出来事を思い出していた。それは、彼が絵画に興味を持っていた頃、なんと、ウリエルのヌードを描いてしまったのだ。
馬鹿なことに、それを彼女に嬉々として見せてしまった。
「ウリちゃん、見て欲しいものがあるんだ」
彼女を見つけたアスタロトは、自分の部屋へと招いた。
「何よ?」
「じゃじゃ~ん! これを君にプレゼントするよ!」
そう言うと、彼はイーゼルらしき物に掛かった布をサッと外した。
そこには、黄金の翼を広げ、今まさに飛び立とうとしているウリエルの裸体が描かれていたのだ。
みるみる彼女の顔が真っ赤に。
「い、いやああーーーーっ!」
悲鳴を上げたウリエルは、絵と部屋もろとも爆破してしまった。
しかし彼は、彼女の本当の姿を知っている。
絵の件で謝りに天使界へ行った時、丁度ガブリエルに会った。彼女は、アスタロトがウリエルに好意を抱いている事は知っていた。
そして「アスタロト殿、彼女は今私のお手伝いをしているの」と言い、ある部屋へと案内してくれた。
真っ白な扉をそっと開けると、そこには広大な花畑が広がっていた。
そこは、地球上で生まれる事のなかったり、早くに亡くなった幼子達の魂が安住の場所としている部屋だった。
アスタロトは扉の隙間から覗いてみた。
彼女がいた――――。
彼女は子供達の相手をしていた。赤ん坊を抱き花畑に座るウリエルの周りを、幼子達が踊る。彼女の頭には、子供の一人が作ったであろう花冠が乗っていた。
彼女の柔らかな笑顔が、本当に眩しく美しかった。
アスタロトは、天使本来の美しさを見た気がしたのだった。




