第4話
「あの人、”旦那”だろ?」
アスタロトは男が去って行った方を見た。
「あ、わかった?」
「それ……」
彼は、アシュトレイトの左手の薬指に光る指輪を顎で指した。
「ん、実は結婚した。驚きでしょ? 悪魔と人間となんて」
「姉ちゃん、悪魔なんて人間どもが勝手に――――」
アスタロトは、人間達が自分らの事を”悪魔”呼ばわりする事が気に食わないのである。
「わかってるって!」
「……本気なんだ」
「うん……もちろん、ちゃんと天界との”契約”は解除したわ。この間ね、ガブリエルの所へ行って来たの」
「いつの間に……」
「だから、あたしは”彼と一緒に年をとる”の。だけど、死んだら、お・し・ま・い」
彼女はクスッと笑った。
「えっ?それって」
「そ! 天国へも地獄へも行かない。煙のように無くなっちゃうの」
アシュトレイトは両手をパッと広げた。
アスタロトは絶句した。
「覚悟してるから。それくらい彼の事愛してるの」
「姉ちゃーーーんっ!!」
彼は目にいっぱい涙を溜め、姉に抱きつこうとしたが「ちょっと、やめてよ!」と、アスタロトのハグを拒否した。
「そんな事やられたら、後悔しちゃうじゃない」
「ご、ごめん……」
これは数年後に知った事だが、実は彼女の死後、ガブリエルはアシュトレイトの魂を宇宙へと解放したのだった。
それは美しい星となった。
「で、あんた何しにここへ来たの?」
そこで、アスタロトは説明をし始めたのだった。




