第3話
――――はて……ホントどうしたもんか。
アスタロトは舞踏会に着て行く衣装をどうするか、暫く悩んでいた。
以前、アドラメレクにうっかりそれを伝えたら、酷い目にあった事があったのだ。
「お任せ下さい、アスタロト様」
(”お任せ下さい”、だと?)
何と孔雀の羽根だらけのローブを、満足そうに寄越したのだ。
――――なんで孔雀の羽根なんだ?
アスタロトは一応嫌々ながらも受け取ったが、自室に戻ると燃やしてしまった。
結局無難なスーツでここまで来たのだが、今回ばかしはそういうわけにはいかないのだ。
(俺の運命がかかってるんだ!)
大袈裟な!
「あっ、そうだ! 姉貴に相談しようか」
(だけどあいつ、今頃また地上のあちこちで男漁りしてるんだろうな。見つかるかな?)
とにかく迷ってる暇はない!
アスタロトは姉であるアシュトレイトに会う為、黒い霧となり、人間界へと飛び立って行った。
ちなみに彼ら地獄管理界の者達は、人間達がよく描くコウモリの翼など無い。角も無ければ、とんがった耳や鋭い牙も無い。
アスタロトに言わせれば、そんなもの超ダサイ!
◇
そしてアスタロトは、なんとかしてアメリカのある州でやっと姉を見つけ出す事が出来た。そこは、広大な農場のある田舎であった。
アスタロトは大きな牛舎を覗くと、数人の人間がいるのを確認した。その中に、牛の世話をしていたアシュトレイトを見つけた。
「アシュ! アシュ!」
「……?」
「アシュ! 俺だよ、アスタロトだよ」
彼はアシュトレイトにしか聞こえない声で呼んだ。
「アスタロト?」
彼女は周りを気にしながら、こちらへと近づいて来た。
「あんた、どうしたの?」
「やあ、姉さん久し振り!」
アスタロトは、紫色に染めたショートヘアの姉の姿を懐かしそうに見た。
すっかり日に焼けた顔に、Tシャツの袖から伸びた腕は逞しい。まるでアメリカの典型的な母ちゃんだ。
あの、男達を次々と魅了していた姉貴はいったいどこへ行ったんだ?
と、そこへ「アシュレイ、どうした?」と姉を呼ぶ声が。見ると、恰幅の良い男がこちらを見ている。
姉と同様、よく日焼けした顔だ。目元が優しげな、なかなかのイイ男である。
「ジョージ、これ、出来の悪い放浪弟」
(放浪って……どっちがだよ!)
アスタロトは苦笑した。
「どうも、弟のフレディです」
アスタロトは好きなボーカリスト名を言った。
「やあ! 俺はジョージ。よろしく!」
二人は握手を交わした。アスタロトの手の先には、この男の”良心”が伝わってきた。
「アシュレイ、弟さんと久し振りなんだろ? ゆっくりしてなさい。じゃ、俺は仕事があるから」
そう言って、ジョージは仕事場に戻って行った。




