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天界物語~天使たちの舞踏会  作者: 髙橋涼羽


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3/10

第2話

 ウリエルはルシフェルの部屋の前に来ると、リヴァイアサンの頭部をかたどったドアノッカーで扉を叩いた。

「いつ見ても趣味の悪い扉ね」

 そう独り言を言っていると、重そうな扉がゆっくりと開いた。

 肩まで伸びた銀髪の、不機嫌そうな端正な顔が彼女を見下ろした。

 氷のような灰色の瞳が、大天使を突き刺す。

「ルシフェル様、報告書を持って参りましたわ」

「ああ、ご苦労」

 彼はその報告書である巻物を受け取ると、さっさと扉を閉めてしまった。

「……ったく! 相変わらずニコリともしないんだから」

 ウリエルはそう呟き渋い顔をした。

「今日もお美しいですねえ~、とか言えないのかしら」

 ウリエルはイタズラっぽく、チロッと舌を出した。そして再び美しく輝く翼を現わすと、天界へと飛び去って行った。



 さて、自室に戻ったアスタロトは、まだ夢心地でいた。

 その部屋だが、彼が70年代から愛して止まないクイーンのレコードやらCD、ポスター等で埋め尽くされていた。奥にはリスニングルームとして広いフロアーに、巨大な高級オーディオセットが鎮座している。

 実はフレディ・マーキュリーが亡くなった後、アスタロトは彼に会いに行こうとしたのだが……。


「申し訳ないけど、人間達の霊界には君達は入れないよ」

 大天使ミカエルから、こう固く断られてしまったのだ。

 そしてアスタロトが去り際、こうも伝えた。

「この先も、君は彼に会う事はないよ。これはどういう事かわかるね」


(あ……そうか……)


 アスタロトはそれを聞いて、寂しいとともにホッとしたのだった。


「あっ、そうだ! どういう格好して行こう」


 彼はなかなかの美形のわりに、服装に関しては微妙なものがあったのだ。

 今もブラウン系のレザージャケットに、中はロックTシャツだ。普段からだいたいこんな格好なのだ。

 そんなものだから女子の間からは「アスタロト君って、なんというか……イケてないよね」と、嘲笑される始末だ。

「でも彼って、ちょっとあの俳優に似てない? ほら、何だっけ? あ、そうそう――――」

 誰やら何とかという俳優の名前を言っていたが、アスタロトには知らない名前だった。

(誰だ? その”なんちゃら”って……)


 一応彼は地獄管理界の中で、階級でいえばルシフェル、ベリアル、ベルゼブブに次ぐとされ、四大長官の一人である。

(人間界では魔界の大公爵などと呼ばれている)

 ここ地獄管理界の住人達の服装は自由で、人間と同じような格好だ。女の子達なんかはまるでアメリカのティーンエイジャーばりに派手だ。但し、それは一部の上層部以外である。

 厳格なルシフェルは、いつもTシャツ姿のアスタロトを見る度眉をひそめる。

 だが、当の本人はそんな自覚がまったくない。

 そんな彼でも人間の音楽に興味を持つ前などは、美しい深紅のローブ姿で、なかなか女子受けが良かったのだ。

 アッシュブロンドの髪は肩まで伸び(今はミディアムヘアーだが)、地獄管理界の象徴とも言えるコバルトブルー色にも似た瞳は、神秘的な森の奥に佇む湖を思わせた。その美しい青年の姿に、同じ管理界の女性達はざわついていたものだった。


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