↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界物語~天使たちの舞踏会  作者: 髙橋涼羽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/59

第46話

 「オーロラの間」での出来事は、ウリエルにとっても特別だったようだ。

 もっとも彼女の場合、アスタロトとのデートの事ではなく、初めてドラゴンでオーロラの世界を駆け巡った事であった。その楽しかった体験を、ベリアルに本を返しに来たついでに一方的に話し続けたのだ。

 ベリアルは少々うんざりした顔をしていたが。


「お前は、あいつと仲直りしたのか?」

「え~? 最初からケンカなんかしてないわ」

 座り心地の良い長椅子に、相変わらず天使らしからぬ胡座(あぐら)をかいているウリエルは、平然と言ってのけた。

「……」

 この言葉にベリアルは執筆中だったペンを止め、彼女をちらっと睨んだ。

 これには、さすがのウリエルも居住まいを正し「あ~……まあ、私の勘違いもあったし、そこはちゃんと謝りましたわ」と、小さな声で言った。

「そもそも、ほっといても良かった事じゃないのか? そんなに気になったか?」

「いえ、別に気になったわけじゃあ……。私はただ、本当の事を言ってほしかっただけで」

「何故、お前に言わなければならないんだ? あいつは、いちいちお前に報告する義務でもあるのか?」

 ベリアルの声に、苛立ちが滲む。

「管理界の者を監視とは、カマエルの奴のやる事と同じだな」

 ベリアルは、唇の端を上げチクりと嫌味を言った。

 カマエルとは、マモン事件の時に地獄管理界へ土足で踏み込んで、後に処分を受けた大天使の一人だ。

「ひどい! そこまで言う事ないじゃない!」

 ベリアルはそんな彼女の怒りを無視し、立ち上がると本棚から一冊を取り出し、再び机に戻った。

 書棚が並ぶこのベリアルの書斎は、オーソドックスだが、彼の性格を表しているように綺麗に整頓されており、ダークブラウン調で統一されていた。ウリエルはこの空間が大好きで、書棚に並ぶ本達もお気に入りだった。


「だいたい、お前は冷静さに欠ける所がある。少しは頭を冷やしたらどうだ? 昔からお前は――」

 彼の説教が続く。

「わかった! わかったわ! もういい!」

 ウリエルはすっかりむくれ、帰りかけた。


「あいつは最初、座天使候補だった」

 ベリアルは唐突にこう言った。

「えっ?」

「アスタロトは、本当は座天使になるはずだったんだ」

 ウリエルは初耳だった。帰りかけた足をベリアルに向けた。

「そうだったの? でも、そんな事アスは何も言ってなかったわ」

「あいつは知らないさ。ここに来る前、天使長達が決めようとしていた。だが、我々の地獄管理界でも欲しい人材だったから、ルシフェル殿が何とか上層部を説得しようとしたんだ」

「それでアスタロトはここへ?」

「それが、何故かあいつ自らここを志願したんだ」

「えっ? 何故?」

「さあな、それこそ本人に聞いてみるがいい」

 そう言うとベリアルは資料である本を手に、再び執筆に戻った。


 ウリエルは、天使だった頃のアスタロトを思い出していた。

 薄緑色の美しい翼、アッシュブロンドの髪は今より少し長めで、なかなかの美形だった。

 だが、ウリエルはそんな彼に対し、あまり良い感情を持っていなかった。

 初めて会ったというのに馴れ馴れしく、いつも彼女の後を追っていた。


「やあ、僕はアスタロト。ウリちゃん、よろしく!」

(ウリちゃん? ”ちゃん”ですって?)

 何こいつ? ――そんな彼を、徹底して無視していた。同僚のジョフィエルと花園で休憩している時も「今度僕と、この花園で散歩しないか?」と、しつこく誘って来ていたのだ。そんな行動は、地獄管理界人になってもデートに誘って来るのだが。


 そうだ、なんで私は彼の事なんか気にしたんだろう。


「あ、そうそう。もうすぐ舞踏会よ、ベリアル様。誰かさんに早くパートナー申し込まないと、別の誰かに先越されちゃうわよ~」

 ウリエルは帰りがけついでに、こうからかってやった。

「余計なお世話だ。早く帰れ!」

「へいへい、お邪魔しました~」


(んったく、口の減らん奴だ。あのクソガキ!)

 そう思ったものの、ベリアルはガブリエルの事が気になり始め、落ち着かなくなってきたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。