第41話
『ドラゴンはザフキエルに案内してもらいなさい』
「はい、感謝いたします」
「ありがとうございます」
二人はラジエルの部屋を出ると、ザフキエルにドラゴンの棲む場所へと案内してもらった。
「どうして今日はお二人で?」
ザフキエルは、交互に二人の顔を見ながら聞いた。
「まあ色々とね、なりゆきというか」
どう説明していいか、アスタロトは悩んだ。そういえば、つき合ってもいないのにウリエルと二人でというのは、ザフキエルの目にはおかしく見えるだろうか。
「私がね、このひとに失礼な事しちゃったの。だからお詫びというか」
「ウリエル、それは違うよ。俺の方こそ――――」
「君達つき合ってるの?」
「違うわよ!」
「とんでもない!」
二人は慌てて否定したが、ザフキエルは意味ありげにニヤニヤしている。
アスタロトの頬は、みるみる赤くなっていく。だが、ウリエルが強く否定した事に、彼はちょっと傷ついたのだった。
ドラゴンの棲まう場所、光の洞窟――――。
洞窟の外で待っていると、手慣れた様子でザフキエルがドラゴンを連れてきてくれた。
ドラゴンの体はキラキラと光る水晶で出来ており、足と口が無かった。目は一つしかなく、顔(?)の中央にギョロリと大きな、これまた水晶のような目玉があった。すべてを見透すような、美しい瞳だった。
頭部らしき部分には、無数の小さな水晶玉が付いた枝のような角が二本伸びている。そして、座天使達と同じオーロラの翼が付いていたが、とてつもなく巨大だった。
「一頭でよかったの?」
「ええ、一緒に乗るから」
(えっ? ”一緒”に?)
アスタロトは思いも寄らなかったウリエルの言葉に驚き、思わず彼女の顔を見た。
”あの時”は二頭連れて来させ、アスモデと別々に乗ったのだが。
ドラゴンはザフキエルに懐いているのか、彼にずっと体を擦り付け甘えていた。
「可愛いわね。よしよし、いい子ね」
ウリエルが手を伸ばし、そっと顔を撫でる。驚いた事に、ドラゴンはうっとりとするかのように、大きな目を閉じ彼女に甘えた。
「すごいな、初めての者にこんなに懐くなんて」
「ふふっ、そうなの?」
いよいよ、ドラゴンに乗る事となった。
「ザフ、悪いけどこの本預かってもらえる?」
ウリエルは、ずっと持っていたベリアルの本を彼に渡した。
「さあアス、早く乗って!」
ウリエルはサッとドラゴンの首部分に跨がると、アスタロトに早く自分の後ろに座るよう手招きした。
「アス、手をこっちへ――――」
ウリエルはアスタロトを後ろに座らせると、そっと自分の体に彼の腕を回す。
彼女の体を抱き締めるような体勢になってしまったアスタロトは、ウリエルの温もりに体中が熱くなっていくのがわかる。
(ええっ? まじで? ウソだろ!)
すぐ目の前には、白く輝くむき出しの肩が。
最近の彼女は、よくオフショルダータイプの服装をしているのだが、それがまた可愛らしい。
甘く良い香りの金色の髪が、彼の顔を撫でる。耳には太陽モチーフの小さなピアスが輝いていた。
アスタロトは夢心地でボーッとしていると「私にヘンな事しようとしたら丸焼けにするよ」と脅され、彼は一気に正気に戻った。
「さあ、行くのよ!」
ウリエルはポンと、ドラゴンの首すじを軽く叩いた。するとドラゴンはそれを合図に、轟音と共にオーロラ輝く天空へと高く舞い上がって行く。
「お二人さん! お気をつけて行ってらっしゃい!」
下ではザフキエルが見送っていた。




