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天界物語~天使たちの舞踏会  作者: 髙橋涼羽


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第40話

「ラジエル様の部屋はこちらです。少し、お待ちを」


 ラジエルの部屋は、次々と変わりゆくオーロラのカーテンで閉ざされていた。

 案内してくれた天使がカーテンの向こうに姿を消すと、暫くして「中へどうぞ。応接室に秘書官のザフキエル様がおりますので、まずその方にお話しを」と、カーテンから顔を出し伝えた。


「あら、ザフキエル様がいらっしゃるのね」

 ウリエル達は部屋へと入って行ったが、アスタロトは応接室で何やら執筆中だった秘書官を見て、おやっと思った。

(どこかで見たような……)

「ザフキエル様、お久しぶりね」

「ウリエル殿、ようこそ!」

 ザフキエルは立ち上がり、恭(うやうや)しく頭を下げた。

 青みがかったく(・)せ(・)っ(・)毛(・)の銀髪、少し垂れ気味の目、背はアスタロトよりほんの少し高い。中性的な顔立ちは、女子受けしそうだ。

 アスタロトは記憶が甦り、息が止まりそうになった。


「げっ! お前……もしかして”あの時”の見習い座天使か?」

「アスタロト殿も、ほんっとーーーに、お久しぶりです!」

 ザフキエルは、これ以上ないぐらいの笑顔をアスタロトに向けた。

(でも、あの時は確か翼は白だったはずだよな)

 その”あの時”の天使の背中には、やはりオーロラの翼が。

「あ~……そっかあ、あんた秘書官になったんだな。いや、ホントあん時は、なんというか」

 アスタロトは、ばつが悪そうに頭を掻いた。

「アス、あなたが騙したって言っていた座天使って、ザフキエル様の事だったの?」

「ん~……まあ、そうみたいだね、ははっ」

 ウリエルは呆れ「ザフ、このひとどうします? ふふっ」と、ザフキエルを見てウインクした。

「ざあ、どうしましょう」

 彼もウインクをし、悪戯っぽく笑った。

「い、いやホントごめん! 大昔の事とはいえ反省してます!」

 アスタロトは只々平謝りに謝った。

「ははっ、もういいですよアスタロト殿。僕はこうして、秘書官として任務に就けたのだから」

 ザフキエルはアスタロトの前に来ると「君は当時地獄管理界人に成り立て、僕は座天使に成り立て。つまり僕らは同期だ。改めて、よろしく」と言って、右手を差し出した。

「そうだな、よろしくな!」

 二人はがっちり握手をした。


「さあ、お二人さん、もういいかしら?」

 ウリエルは交互に二人の顔を見、ラジエルに会えるよう促した。

 ザフキエルはその後、ラジエルにウリエル達が会いに来たむねを伝えてくれた。そして二人はラジエルの部屋へ通されたが、またしてもアスタロトは脅かされる事となった。

 部屋へ入るといきなりそこは宇宙が広がり、中央には偉大なる長老、座天使長ラジエルが静かに立っていたのだ。背中には、もはや座天使の象徴オーロラの翼があるが、他の者よりもはるかに巨大だった。

 青い髭と髪の毛は床まで伸び、体はマントを羽織っていても透けているのか後ろの銀河や星が見えている。

 どうやらこの部屋は、大会議室と同様、宇宙と繋がっているようだ。


「ごきげんよう、ラジエル様!」

『ようこそ、ウリエル殿、アスタロト殿』


(えっ? なに?)


 ラジエルは口を動かさない。意識下へと語りかけてくるのだ。アスタロトはそうとは知らず、周りをキョロキョロしてしまった。


『ウリエルよ、この間はご苦労であった。そしてアスタロト殿、そなたのおかげである。改めてお礼を言わせてもらうぞ』

「あ、いえ……そんな」

 アスタロトはすっかり恐縮してしまった。

「あのう……いつかのドラゴンの件は失礼しました!」

 彼は深々と頭を下げ「ザフキエル殿を騙してしまって、本当にすみませんでした」と、謝罪した。

『はて? 何の事かの? 最近とんと忘れっぽくなってのう』

 勿論嘘である。彼なりの優しさであった。


『さて、それよりウリエルよ、今日はどんな用かの? それもアスタロト殿と一緒という事は』

「ドラゴンをお借りしたいの」

『ほう、ここで飼っておるドラゴンをかね?』

「ええ、アスタロトと一緒に乗りたいの。よろしいかしら?」

「あ、あの……今日はちゃんと許可をもらいに来ました」

『わははっ! 誰しもあのドラゴンに乗りたがる。わかるぞよ。実はな、このわしはまだ乗った事がないんじゃよ。本当は乗ってみたいのだがな』

 そう言って、長い眉毛に隠れてかろうじても見えるつぶらな目でウインクした。


(チャーミングな方だな)


 アスタロトは、いっぺんにラジエルのファンになってしまった。

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