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天界物語~天使たちの舞踏会  作者: 髙橋涼羽


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第38話

「や、やあ! 俺に用かな?」

 アスタロトはなるべく平静を保とうとしたが、声が上ずってしまってる。ウリエルはというと、ずっと睨んだままだ。


(こわっ! ウリちゃん、こんな顔するんだな。でも、怒った表情もキレイだ……て、俺は何考えてるんだ)


「さあ、説明してもらいましょ。あなた、天界で何を探っていたのかしら?」

 彼女は先程までの険しい表情から一転、ニッコリと笑った。


 これが、これが怖い!


「いやあ~、それはね」

 突然ウリエルはアスタロトの頬を引っ張り「正直に言いなさいよ! あなた何やってるの?」と、追及した。

「い、いてっ! そんな……ウリちゃん、乱暴な」

 アスタロトは逃げようとしたが、今度は――――。


 ドンッ!


 彼女は壁に片足を付け、逃げようとしたアスタロトを”とおせんぼ”した。そしてなんと、裾をスルスルと腿まで上げ始めたのだ。ほっそりとした、白く美しい太腿が露わになる。

 彼は思わず見惚れてしまったが、ウリエルの次の言葉で我に返った。


「で、どうなの?」

 再び甘い声に戻った。

(ウリちゃん、君確か天使だよね?)

 アスタロトは、いつか姉であるアシュトレイトの「あいつ怒らせると怖いぞ~」の、言葉が甦ってきていた。


 とうとうアスタロトは観念し、本当の事を話した。

「あ、あの……実はさ、リリスの事なんだけど」

 一瞬、ウリエルがポカンとする。そして――――。

「リリスがどうかしたの?」

「彼女、舞踏会に参加出来ないだろ?」

 まだウリエルは飲み込めないでいる。

「だからさ、俺も何とかしてあげたい、と思ってさ」

 ウリエルはやっと足を下ろし「……それで、あなたは」と、真相が分かったのか彼の顔を見つめた。

 アスタロトは続ける。

「俺もガブリエルに頼んでみたんだ。実はね、彼女も熾天使長に聞いてみたらしい。けど、例が無いとか慣習だとかでダメだったんだ」

「まあ……」

 ウリエルは持っていた本に顔を伏せた。

「けどね、彼女はこうも言ったよ。何でも俺達のような地獄管理界の者でも参加出来るようになったのは、ルシフェル様のおかげだって」

「えっ? そうだったの?」

 どうやら、この話しはウリエルも初耳のようだ。

「ん、だからね、上の者の中でも、風穴を開ける者がいるかも、て。そして俺に諦めないように、て」

「そうだったの……」

 ウリエルは胸に手を当て、これまでの思いを巡らせた。アスタロトは、そんな彼女を静かに見守った。


 やがて彼女は顔を上げ「アス、ごめんね。でも、本当の事言ってほしかったわ」と、寂しげに彼を見つめた。

「言いたかったよ。でもね、もし失敗したら自分が惨めだろ? 君のガッカリした顔なんて見たくなかったから。まあ実際、失敗に終わったけど」

 アスタロトは弱々しく笑った。

「でも、正直に言うべきだったね。本当に、ごめん……」

「そんな! 私、すごく嬉しい。ありがとう、アス」

 潤んだ瞳で見つめられたアスタロトは、ドキドキし視線を外した。頬が熱くなるのが分かる。


 暫く二人は黙っていたが、やがてウリエルは顔を上げ「ねえ、アスタロト。ちょっと私につき合ってくれる?」と言い、そして歩き出した。

「えっ? 何処へ行くの?」

 すると彼女はアスタロトの手を引っ張り「座天使長のラジエル様の所よ!」と言い、先を急がせた。

 アスタロトは彼女の突然の行為に驚き、何故ラジエルの所なのか聞くどころではなかった。只、ウリエルの温かで柔らかな手を、ずっと感じていたかった。

 そして二人は天界へと飛び立ち、座天使長ラジエルのいる「オーロラの間」へと向かうのだった。

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