表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界物語~天使たちの舞踏会  作者: 髙橋涼羽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/32

第27話

「あのね、アス――――」

 ふと、ウリエルは話題を変えた。

「舞踏会のドレスね、毎年リリスが考えてくれていたのよ。もちろん、今年もデザインしてくれるの」

 彼女は本当に嬉しそうだった。

「へえ! そうだったのか」

 アスタロトは納得した。

 そういえば毎年の舞踏会に来る天使達は、大抵地味で、おとなしめな衣装だ。それに比べてウリエルのドレスは、いつも目を引く華やかな衣装だった。

 去年アズラーイールと踊っていた彼女は、可愛らしさと美しさで輝き、アスタロトはそれを羨ましそうに眺めていたのだ。

 いや、去年だけではない。毎年毎年、彼はウリエルだけをずっと目で追いかけていた。

 もし彼女の相手が自分だったら……。

「おいおい、お前彼女ばかし見て、自分の相手怒らすなよ」

 アスモデから注意されたっけ。


「今年のパートナーはあんたでしょ? ねえウリエル、うんっとセクシーな衣装でいきましょうね」

 そう言ってリリスは、ウリエルの髪をそっと撫でた。

「んもう、リリちゃんったら! やあねえ……」

 二人はじゃれ合った。

 

 そうだ、今年は俺がパートナーなんだ。念願だったウリエルのダンスパートナーに。これ程嬉しい事は無いはずなのに。


 アスタロトは少し複雑だった。

 そんな舞踏会にリリスは参加出来ないんだった……。ウリエルは、本当は彼女と一緒に参加したかったろうに。


 アスタロトがウリエルの横顔をぼんやり眺めていると「でも意外ね。あんたずっとこの子と踊りたかったはずでしょ? なんで(今回の申し込み)初めてなの?」と、リリスがテーブルに片肘を付き聞いてきた。

 ウリエルが美しい翠色の瞳で、じっと見つめていた。


「それは……ほら、いつも俺は君にデートに、その、誘ってるだろ?」

 彼は無意識に早口になった。

「まあ、結局断られるけどね」

 アスタロトは自虐気味に笑ったが、ウリエルは只ゆっくりと瞬きしただけだった。

「でも、舞踏会は俺にとって特別だったからさ。なかなか言い出せなくて……」

 何か本人の前で告白するのがすごく恥ずかしかったが、この花園のせいなのか? この場所の魔法にでもかかったかのように、何でも話せそうだった。


「ちゃんと申し込もうと何度も天使界に行こうとしたけど、結局誰かにいつも先越されてるんだよな」

「……そうだったの?」

「そういうのを”言い訳”って言うんだよ。要領悪いね、あんたは」

「はあ~……」と、リリスはわざと大きくため息を吐いてやった。

(ほんっと馬鹿だね、こいつは! いざという時にこれなんだから。これだから男は)

 正直リリスはアスタロトに対し腹が立った。

 アスタロトは顔を赤くしながら「……それに直接なかなか言えなくてさ」と、徐々に声が小さくなっていく。

「はあ~? 図々しく『ウリちゃ~ん! デートして~!』なんて言ってるくせに?」

 わざと意地悪く突っ込むリリス。

 アスタロトは横を向き、ますます顔を赤くする。

「それとこれとは別だろ! ……怖かったんだよ、断られるんじゃないかって」

 彼は不貞腐れ、下を向いた。

 クスッとウリエルは笑った。

「バカねえ、断るわけないじゃない」

「えっ?」

「舞踏会は私にとっても特別だもの」


 アスタロトは思わずウリエルを見ると、彼女はとろけるような優しい微笑みを向けた。

 この花園の世界に感謝したかったアスタロトだった。


「えっと、じゃあ来年の”予約”もしていいかな?」

「調子にのらないで!」

「調子にのるな!」

 ウリエルとリリスから、同時に怒られてしまった。が、アスタロトは幸せな気分だった。

 ウリエルとの距離が、近くなった気がした。

(あの事件のおかげなのかな? 皮肉なもんだな)


 香り豊かなハーブティーをおかわりして、彼はそろそろお(いとま)する事となった。

「私、お見送りして来るわ」

「しばらく二人で歩いて来なさいな」

 リリスが珍しくアスタロトを気遣った。


 そして、二人は白い光が注ぐ外へと出た。花園からのむせかえる程の香りが、柔らかな風に乗ってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ