第24話
マモンとドイルが追放されてから、数日が経った。そして、天界と地獄管理界には平穏な日々が戻ったのだった。
結局彼らは大天使界最大位であるメタトロンに、超大銀河の大渦の中へと引き摺り込まれてしまったのだ。もう二度と、彼らは戻って来る事はない。
アスタロトの部屋に遊びに来ていたアスモデと、この話題で盛り上がっていた。
バックのBGMはクイーンで、大音量でかかっている。
「いやあ~、お前にも見せたかったよ。あの二人の惨めったらしさったら!」
「まあとにかく、俺らの世界に祝福を!」
二人はビールで乾杯した。
「結局あそこ(元地獄界)は破壊されたんだろ?」
アスモデは美味しそうにビールで喉を鳴らした。
「ああ、ルシフェルの力でな。あの方はやっぱすげーよ。元地獄界っていったって、結構な広さだ。それをあっという間に消しちまったんだから」
「で、鍵の保管場所もか?」
アスタロトはビールを一口飲み、頷いた。
「ウリエルから、そうしてくれと頼まれたんだ……」
あの時「君も来るかい?」と、彼女に聞いてみたのだ。だが、彼女はきっぱりと拒否したのだ。あの場所は二度と見たくないと。
「そうか……。あ、カマエルの奴は結局どうなったんだ? まさかしれっと戻ってるわけじゃあないよな」
そうだ、あいつの事があった。
「あいつは数年間は天界出入り禁止になったよ。今は人間界で謹慎中」
「ま、しょうがねえよな! 指揮官としての責任あるからな」
「ああ、そうだ。おまけにベルゼブブの監視付きだとよ」
「うわあ~……そりゃあ最悪だな! けど、ちょっとそれはやり過ぎじゃないのか?」
「俺も思ったよ。だけどベルゼブブのじいさん、どうしてもってさ。このままじゃあ気が済まなかったんだろうな。あのじいさんらしいよ」
「粘着質でいえばな」
そうだな、と言って笑い、アスタロトはビールを飲み干した。
もう一本に手を伸ばしながら「しかし驚いたよな。人間界にあんな本があるとはな。リリスがヒントを出してくれなかったら、俺ら永遠に迷宮入りにしてたかもな」と、改めてリリスに感謝した。
「そういえばさ……」
アスモデは何か思いついたように「俺達がまだ地獄管理人に成り立ての頃覚えてないか?」と、昔を懐かしむように言った。
「ほら、座天使達が飼っていたドラゴンを無断使用しちまった事」
「ああ、そうそう! しかも人間界でな」
思い出した。俺達は調子にのって、よりによって、人間達の世界でドラゴンを乗り回した事があったのだ。そのせいで地上では、ちょっとした気候変動が起きてしまったのだ。
「あの時はルシフェルから大目玉食らったよなあ」
「えらい稲妻が落とされたよな! 結局それも人間界に影響与えちゃったんだもんなあ~」
彼らは懐かしさで大笑いした。実に愉快だった。
アスタロトは、ふと思った。
「なあアスモデ。例のイラスト、人間が描いたやつさ。あの時の俺達に何となく似てないか?」
「”あの時”の?」
「俺らが見える人間もいるって事さ」
「俺達その人間に見られちゃったって事か? あー……、でも天使と会った人間もいるからな」
「ノアという男が、我が愛しきウリエルに会った事とかな」
アスタロトは自分で言っておいて、少し照れた。
「ははっ! やっぱそうきたか」
そう考えると、あのドラゴンに乗った”へなちょこ王子”にも、少しは愛着が湧くってもんだ。
そうだ……明日にでも、リリスにお礼を言いに行こう。
アスタロトはこう思い立ち、ビールに再び手を伸ばした。




