第17話
白い天空の中から、いっそう輝く光が舞い降りて来た。
「ウリエル……」
アスタロトは元地獄界での件があるせいか、彼女を思い胸を熱くした。
ウリエルは二人の近くに降り立つと、翼を消し駆け寄って来た。
「リリー!」
しかし途中まで来ると、アスタロトに気づき「あら?」というような表情をした。いつもと違う雰囲気だったからだろう。
リリスはそれを横目で、アスタロトをニヤニヤ見ている。彼はというと、もうウリエルに会えて嬉しくて、顔がほころびっぱなしだ。
今のウリエルは肩出しスタイルで、透けるような白い肌が美しい。黄金の髪は、人間界で流行のウォーターフォールヘア。きっとリリスに教えてもらったのだろう。
両耳の太陽モチーフのピアスが、白い光でキラキラ輝いていた。そして、ウリエルもまた裸足だった。
今回のアンクレットは星形のような物が付いていた。
「可愛い……」
アスタロトは思わず呟いた。
「あ、そうそう! あなたを探していたのよ。管理界で聞いたら、ここに来てるって。ベリアル様が、あなたに調査結果を聞いてくれって」
顔が緩みっぱなしだったアスタロトは「ああ、その事だけど」と、言いかけた。
「ねえ、その話しは中でしない?」
リリスが中へ入るよう促した。そしてウリエルの肩を抱き寄せ「新しい果実酒が出来たのよ。あなた好みだと思うわ」と囁いた。
「嬉しい! いただくわ」
ウリエルは子供のようにはしゃぎ、跳ねるようにリリスについて行った。
「あんたもどう?」
ついでに、というようにアスタロトにも聞いた。
「あ、いただきます」
(ウリエルの好みの果実酒って、どんな味なんだろう?)
ちょっと楽しみにしながらウリエルの後について行くと、リリスが急に玄関先で「ねえウリエル、あたし、あなたの翼が見たいわ~」と、甘い声でまた囁く。
「ええ、いいわよリリちゃん」
ウリエルはニッコリと微笑み、美しい黄金に輝く翼を広げた。
バサッ!
「うわっ!」
広げた翼はすぐ後ろにいたアスタロトの顔に、まともにぶつかってしまった。
「あらっ! ごめんなさ~い」
すまなさそうに謝るウリエルだったが、それを見ていたリリスは楽しそうに笑っていた。
(リリスのヤツ! わざと言ったな)
だが彼は、それすら嬉しかった。ウリエルの翼は柔らかく、良い香りがした。
そして彼らは屋敷へと入って行ったが、その際リリスはそっとウリエルの頭にキスをした。
(もしかして俺への当てつけか?)
アスタロトはリリスの屋敷に入るのは初めてだった。
部屋の中にも色々な植物が飾られていたが、何故か咲いている花はどれも白色だった。天窓から差す柔らかな光のせいなのか、その花達は輝いているように見えた。アスタロトは素直に、この部屋を美しいと感じた。
この美しい植物達に囲まれながら、彼女は一人でどう過ごしているんだろう?
ふと、アスタロトは疑問に感じた。
その後、二人はテラスへと通された。
そこには白で統一された丸テーブルと椅子が置いてあり、テラス屋根にも蔦が絡まっていた。
花の香りの風が吹き抜ける。
「二人とも座って待ってて」
そう言ってリリスは、奥へと戻って行った。
アスタロトはその時、何気に花園の向こうに目をやった。そこは少し小高くなっており、明らかにここへ来る途中とは違う一本の木が存在していた。
その木は、まるで桜のように満開の花が咲いていた。それは部屋の中の花達と同じ真っ白だった。




