第15話
アスタロトは門の鍵穴に手をかざしてみたが、そこからは何も感じられなかった。試しに動かそうとしてみたが、やはりダメだった。
「犯人はこんな所で何をするつもりだったんだろうな。それか、何を探していたのか」
アスタロトは、ある男の存在を考えていた。
「なあ、アスモデ。あいつの事覚えているだろ? ここで幽閉されていた奴、マモンの奴をさ」
「ああ、あのクズ野郎か? あいつは向こうの、現地獄界へ移送されてるだろ? 奴と関係あると思うのか?」
アスモデは、あの嫌らしい元天使の事をはっきりと思い出したのか、顔を歪ませた。
「俺らはどれだけ奴の事詳しく知っていたかな? と思ってさ。地獄へ送られても、性懲りも無く金目の物探し回っていただろ?」
「で、奴と……?」
「まあ待て!」彼はアスモデを制し、「マモンの奴、まだここに未練があるんじゃないか? それを、誰かにやらせているとしたら」と言い考え込んだ。
「ここは違う視点で考えた方がいいかもな」
アスタロトは独り言のように呟く。
「どうするつもりだ?」
「あるひとに会うつもりだ」
(彼女なら、俺達とは違う視点が見えるかも。ただなあ……ちと苦手なんだよなあ~)
そして、彼は「ある場所」へと向かうのだった。
気乗りしないが、仕方ない……。
”ある場所”――――。
そこは、リリスが管理する天界の花園だった。
広大な花園には、色とりどりの見た事のない種類の花々が咲き誇っていた。花園の一部には、たわわに実の生った背の低い木々が生えている。その樹木は皆虹色に輝いていて、尾の長い小鳥が飛び回っていた。
アスタロトは花園の小道を、ゆっくりと歩いて行く。ここには滅多に来る事はないが、花は嫌いではない。
アスタロトは片手で”手庇”を作ったが、天界の厳しい光と違い、花園の日差しは柔らかだった。
(人間達の言う天国のイメージって、こんなのかな?)
そうぼんやりと考えていた。
暫く行くと右側に入って行く道が見え、その道の奥に蔦の絡まった、白くこぢんまりとした屋敷が見えてきた。屋敷の左手にはガゼボらしき建物があり、それにも蔦が絡まっている。
アスタロトは恐る恐る、その道を進んで行った。
「おやおや、珍しい客だこと」
――――えーーーっ!?
いつの間にか、彼の後ろにリリスが立っていた。




