第14話
マモン――――。
彼も元は天使だったのである。だが、そういった身分にも関わらず金と宝石が大好きで、常にそういった情報に目と耳を向けていた。
天使にあるべき翼は欲で煤け、卑屈さで縮こまっていた。
今の地獄界へ移送されてからも、何と亡者達の金歯や義眼等を漁り、貪り続け悦に浸っていたのであった。
『兄さん……待っていてくれ……』
――――やがて、会議も終わろうとしていた。
「ルシフェル殿、引き続き調査を頼みます。天界だけではなく、地獄界全体の問題でもあるのだから、早急な解決を望む。いいですね」
「わかりました、ザドキエル殿。以前の地獄の方はアスタロトに調査を任せてます。彼は、こういう事にかけては優秀ですから」
ルシフェルはそう言い目を細めた。そしてガブリエルに顔を向けると「ガブリエル殿、地上の天使達に、この問題を知らせておくように。くれぐれも警戒をするようにと」と、伝えた。
「ええ、承知いたしました」
長い髭を揺らせながらラジエルは、ミカエルの意識下に向け『ミカエル殿、この全天界の警護を頼みましたぞ。”何か”が起きているのは確かなのだから、セラーフィーム達にも警告を発してもらえぬか』と、恭しく頭を下げた。彼はミカエルに対して、全信頼を寄せていたのだ。
「わかりました。ラファエル殿と共に熾天使界へ向かいましょう」
ミカエルの言葉に、ラファエルも力強く頷く。
会議が終了すると、ラジエルとザドキエルは巨大なオーロラの翼を広げ、光の如く宇宙へと飛び立って行った。
「ウリエル、お前はアスタロトから調査の結果を聞いてくれ」
相変わらず書物に記録を書き込んでいたベリアルは、顔も上げずウリエルに伝えた。
「わかりましたわ」
ウリエルはそ~っと、背後から彼が書き綴っていた書物を覗き込んだ。
(うわっ、達筆すぎて読めない……)
ベリアルは彼女に気づくと「覗くな!」と、手にしていたペンで小突くフリをした。
「ごめんなさ~い」
ウリエルはペロッと舌を出した。
大会議室から出る際ウリエルは、ガブリエルに重く忌々しい扉を開けてもらい(彼女もウリエルより背が高いのだ)感謝したのだが、「あなた達、つき合ってるの?」と聞かれ、危うくコケそうになった。
「へ……?」
ガブリエルは、まだ会議室にいたベリアルの方を意味ありげにチラリと見る。
(はい~? なんで?)
「まさか! そんなわけないじゃないですか~、あんな堅物と」と笑い飛ばした。
と、その時ベリアルが部屋から出て来た。
(今の会話聞いてないわよね)
ウリエルは、ちらっと彼を見た。
ベリアルはガブリエルが一緒にいるのが分かると、軽く挨拶し、足早に行ってしまった。
ガブリエルを見る彼の目は、穏やかで優しかった。
(んもう~、ガブリエル様ったら。毎年のように彼が舞踏会のパートナー申し込んでるんだから、気づきそうなもんだけど)
ベリアルがガブリエルに好意を抱いている事は、もう周囲にバレバレなのである。
気づいてないのは、当の本人だけで……。
(可哀想なベリアル様……)
ウリエルは彼の事が気の毒になった。
ルシフェルはまだミカエル達と話し中だった。
ルシフェル、ミカエル、ラファエル――――。
この三人が揃うと、美形のうえ背は高いわで、女子天使達(特に生徒達)の間で、ちょっとした騒ぎになる。これにベリアルが加わると、たちまちざわつき始めるのだ。
ルシフェルとミカエル、そしてベリアルの三人は特に「イケメン三銃士」なんて呼ばれてるくらいなのだ。
(今年の舞踏会も、”イケメンランキング”なんて密かに付けるのかしらねえ、生徒達は……)
大会議室を離れながら、ふとウリエルは思った。




