第9話
カマエルはアスタロトに顔を近づけ「ああ、俺は絶対ここの連中が怪しいと睨んでいるのだがな」と、嫌な笑みを浮かべた。金色の瞳が細くなる。
「地獄に一番通じてるのは、こいつらだしな」
仲間達を侮辱され、更に威圧的な態度を振りかざすカマエルに対し、アスタロトは怒りに震えた。
「こいつらがいるから鍵が保管されていた場所は言わないが、俺は部下を連れて確認しに行ったのさ。そしたらどうだ? 見事に消えちまっていたよ、鍵が! あの場所で、いったい何をするつもりだ? 何を企んでいるんだあ? ああ?」
そう言うとカマエルは住民達を睨み、ぐるりと威嚇するように見渡した。
アスタロトは、この我慢ならない傲慢な大天使に言い返そうとした。
と、その時――――。
「ちょっと! 何の騒ぎなの?」
(――――ウリエル?)
ちょうどルシフェルに報告書を届けに来た彼女が、この騒ぎを聞きつけたのだろう。
そして――――。
「カマエル殿、今すぐ翼を消しなさい! あなた達もよ」
ウリエルはカマエルと、その部下達に向かって指を突きつけ叱責した。
「我々は天界の者だ。何故翼を消す必要がある? 何故こいつらに気を遣う必要があるんだ?」
「ここは管理界の住民達の聖域です。この者達へ敬意を払いなさい。そうしないと私が許しません!」
ウリエルはこの破壊神のような激しいカマエルに対して、厳しく詰め寄った。
「ウリエル様、すみません……。カマエル様が我々の中に鍵を盗んだ者がいると」
役人の一人が、彼女に駆け寄り伝えた。
「……鍵って? どういう事なの、アスタロト?」
ウリエルはアスタロトの方を振り返った。
「君が以前管理していた地獄界の鍵が、何故か無くなってるそうなんだ。それをこいつ、カマエルが、俺らの中の誰かが盗んだと疑ってるのさ」
「えっ? でも、あそこはもう……」
「ああ、もう使われていないはずなのに」
「なのに何故……?」
ウリエルは戸惑った。
かつて自分が管理していた場所に、知らぬ間に誰かが入り込んだのか?
「おい、ウリエル! とにかく俺達は徹底的に捜査を続けるぞ! 容赦しないからな!」
「何も出てくるはずないさ!」
「アスタロト、ここは私が――――」
「そろそろお引き取り願いたいのだがね、カマエル殿」
群衆のヤジが一瞬で静まった。
その声は、四大長官の一人ベリアルだった。




