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「ルシアンよ!」と呼んだら乙女ゲームが崩壊しました。〜メリバ転生した大天使は最強騎士で全ルート救済する〜  作者: 久茉莉himari


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50/52

【50】チンケなプライドと片想い。〜友情イベント、ギター編が俺様色になってます〜

そして、翌日。


豪華すぎる理事長室のロクシーのデスクには、ズラッと強炭酸水のペットボトルが並べてあった。


そして、ルチアーノもまた、真紅のシルクのハンカチを1ダース用意し、念のために薔薇のコサージュの替えも3個用意していた。


そうしてやってきた昼休み。


颯真は素早く食事を終えるとC組に向かう。


「ルチアーノ!」


突然現れた颯真。


だが、それはロクシーから聞いているタイミング通り。


ルチアーノがパチンと両手の指を鳴らし立ち上がる。


「珍しいヤツが来たな☆」


そして、その場で一回転するルチアーノ。


既にロクシーのパソコンを見る目には、殺気が宿っている。


だが、颯真はそんなルチアーノを全く気にせず、笑顔で言った。


「珍しいって何だよ。

あのさ、昨日アンジュのお見舞いに行ったんだよ」


遥斗の箸が止まる。


「それでルチアーノ達に早く会いたいって言ってたんだ」


ルチアーノがふわりと真紅のシルクのハンカチを胸ポケットから取り出し、目元を押さえる。


「……そうか。アンジュちゃんの具合どうだった?」


颯真はふと、声を落とし答える。


「元気そうに振る舞ってるけど、見てて痛々しいよな、やっぱり」


「そうなのか……。

橘よ、ありがとう……!!」


今度はハンカチを噛みだすルチアーノ。


ロクシーがパソコンを見ながら、無言でバキッと強炭酸水の蓋を開ける。


颯真が爽やかな笑顔で聞き返す。


「何が?」


「アンジュちゃんを送り届けてくれたこと☆」


(助けたのは、俺様のズッ友ルシアンだけどな……!!)


という言葉を飲み込みつつ、ルチアーノも笑顔を浮かべる。


「その件に関してはノーコメント!」


颯真は悪戯っぽく笑ってルチアーノに答えると、遥斗に向いた。


「君、一ノ瀬くんだよね?」


「……はい」


遥斗の淡々とした返事にも、颯真は笑顔だ。


「俺、アンジュと同じクラスの橘っていうんだ。

よろしく」


「ハルだって、お前のこと、もー知ってるよ!

この天然イケメン野郎が〜☆☆☆」


ルチアーノが爆笑しながら、両手で真紅のシルクのハンカチをマジシャンのように振って言う。


翔太の目はルチアーノの手元に釘付けだ。


颯真はちょっと顔を赤くしてルチアーノを睨んで言った。


「うるせーな!礼儀だよ、礼儀!

お前は黙ってろ!」


そして、颯真が再び遥斗に向き直る。


「アンジュがギターの演奏が聴きたいらしいんだ。

それで一ノ瀬くんが、凄く演奏が巧いから録音して欲しいって。

一ノ瀬くんの都合に合わせるから、なるべく早く録音させてくれない?」


「……お断りします……」


遥斗の小さな、それでいて断固とした声に戸惑う颯真。


「え?」


「俺のギターなんて、大したもんじゃないですよ」


「でもアンジュは一ノ瀬くんのギターが聴きたいんだよ。

一曲だけでもいいから……」


「だから、お断りします」


「お前なあ……!」


颯真が遥斗に詰め寄る。


「アンジュは傷ついてんだよ!

そのアンジュがお前のギターを聴きたいって言ってんだよ!

お前、アンジュの友達だろ!?

一曲ギター弾くくらい、何でしてやれないんだよ!?」


「弾きたくないんです」


遥斗は席を立つと、教室を出て行こうとする。


「一ノ瀬!待てよ!」


引き止めようとする颯真の肩を、ルチアーノがふわりと掴む。


その両手にはいつの間にか、真紅のシルクのハンカチが片手に6枚ずつ握られていた。


そして、ルチアーノが妙にしおらしい声音で言う。


「橘よ……俺様からも言ってみるから。

アンジュちゃんには上手く誤魔化しといてくんないカナ?」


「……分かった……」


颯真は不承不承に頷いた。




放課後、遥斗は一人で部室にいた。


今日は部活は休み。


誰もいない部室で、アンジュの為に作って川原で弾いた曲を弾いていた。


パチパチと拍手の音がして顔を上げると、ルチアーノが部室の隅に立っていた。


「ルチアーノさん、趣味悪いですよ。

盗み聞きですか?」


ルチアーノがふわっふわっふわっと三回髪をかき上げてから、答える。


「俺様は、そーっと入ってきたんだよん☆

気付かなかっただろ?」


ルチアーノはニコニコと笑って言った。


「なあ、ハル。

一曲くらい弾いてやれよ」


遥斗は首を横に振ると、小さく答える。


「それでアンジュちゃんは、また俺の演奏を繰り返し聴くんですか?

それじゃ駄目だ……」


ルチアーノが一回側転すると言う。


「分かんねえぞ。

こうやって一回で飽きちゃうかもな☆」


遥斗はフッと笑った。


「それだけじゃないんです」


髪の毛を整えながら、ルチアーノが前のめりで訊く。


「ん?何だ!?何だ!?」


遥斗はポツリポツリと言った。


「俺達は、まだアンジュちゃんに会えなくても、橘くんは事件の翌日に……昨日もう会ってるんですよね」


「そりゃあ……あいつは(ルシアンの次に)助けた一人だからな☆」


「俺ね、アンジュちゃんに会いたいんですよ」


「ハル?」


遥斗は自分のギターを見ながら、話し出す。


「何の役にも立たない俺だけど、ただ会いたい。

でも、それも出来なくて…。

それを橘くんは何てことなく叶えて、

アンジュちゃんに頼られて……俺、正直嫉妬しました。

嫉妬する資格なんてないのに。

自分からアンジュちゃんと離れるって決めて、

別れたくせに。


こんな醜い感情で弾きたくないんです。


アンジュちゃんには……せめてあの日の演奏だけ、あんなギターを弾いた人がいたなってだけでいいから、それだけ憶えていて欲しい。

俺みたいなヤツでも、チンケなプライドがあるんです。

汚い演奏を傷ついてるアンジュちゃんに聴かれたくない……」


「ハ~ル~よ〜☆☆☆」


ルチアーノがそう歌うように言って、ゴチンと遥斗の頭に自分の頭をぶつける。


「いって……」


遥斗が呻くと、ルチアーノがフンと鼻を鳴らした。


「嫉妬なんて、好きなら当然じゃねーか!

LOVEにジェラシーはつきものなの!


でもまあ、俺様はハルの言いたいことも分かる。

それが、俺様クオリティ☆☆☆


俺様もズッ友に、どうしよーもない香水しか作れないって分かっていたら、作れない!ハイッ!作らない!!」


「……ルチアーノさん……」


遥斗がルチアーノを真っ直ぐに見る。


ルチアーノはパチンとウインクすると、キメ顔で言った。


「でもさ☆

今のアンジュちゃんの為に出来ることは、何でもしてやろうぜ☆

例え、些細なことでもな!

ギターの件は俺様から橘に断っておいてやるよん!

俺様、尊い☆☆☆」


「すみません」


ペコリと下げた遥斗の頭を、ルチアーノがぐしゃぐしゃと撫でた。


そして、その10分後。


ルチアーノは理事長室の大理石の床の上で、正座をしていた――

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

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