【37】バレンタインイベント、開幕前。〜メリバを呼ぶ当て馬〜
その後、理事長室では――
恒例行事となった、強炭酸水での祝杯をロクシーとルチアーノが挙げていた。
但し、グラスはフランス『サンルイ』製のティスルシャンパンフルートで、
ゴールド装飾が施されたもの。
その価格、1脚13万円だったりする。
ロクシーがニヤリと笑う。
「あんた……見直したわ……!!
ハルの涙の告白と『ラッキーマン』としての覚悟を引き出させた……!!
これで、ハルは、あんたには心を開く!」
ルチアーノが照れたように、
パチンと手のひらで額を叩く。
「いえいえ!
ロクシー先生の脚本の賜物でございます!」
ロクシーはグビグビと強炭酸水を煽ると、
一拍置いて言った。
その目は、もう、笑っていない。
軍師モード・オン。
「これでクリスマスイベントも、友情イベントも成立した……!
でも次こそ、このメリバ確定乙女ゲームの最大にして最重要分岐点………
バレンタインイベント……!」
ルチアーノのシャンパンフルートを持つ手が震える。
「しかし……!!
アンジュちゃんは、バレンタインに全く興味が無いでありますよ!?
ルシアンが、以前バレンタインデーにプレゼントを渡そうとした時も、
『聖人の祝日と私に何の関係がある?』
と言った程であります!!」
ルチアーノの焦りをよそに、
ロクシーがフフフと低く笑う。
途端に、ルチアーノの背筋に悪寒が走る。
「問題はそこじゃない!
それはね、私たちが外堀を埋めれば良いこと!
問題は……
このバレンタインイベントで、
ハルの当て馬……
闇落ちしてメリバに追い込む『橘颯真』くんが、
初登場するのよ!」
ルチアーノは何も言えず――
ソファに座ったまま、ピョンと跳ねた。
翌日、登校して来たアンジュの机の上には、
コンビニの袋の中にホカロンが入っていた。
『今日の移動教室は寒いから使って下さい』
アンジュは妙に角ばった文字を、
白く細い指先でそっとなぞる。
(ラッキーマンよ!
そなたの信心深さ……!
私も誇りに思うぞ……!)
アンジュがそう思っていると、
ルチアーノがアンジュの手元を見て言った。
「アンジュちゃん、今日の『ラッキーマン』の差し入れは何ですかい!?」
そう、これもロクシーの脚本。
ルチアーノは必死に演技を続ける。
そうして、ルチアーノはコンビニの袋を覗く。
「あ、ホカロンだ。
俺にも一個くれませんか?お姫様☆」
アンジュが幼さの残る美しい笑みを浮かべて宣言する。
「それは、ならぬこと!
これは私への供物である!」
「なーるなる☆
でも、アンジュちゃん……知っておりますか?」
そこで、なぜかふわっと髪の毛をかき上げるルチアーノ。
「それは“ケチ”という行為だよん♪」
アンジュが深く頷く。
「なるほど!
ならば、私は“ケチ”である!」
アンジュがニコニコと笑って言う。
ルチアーノは、素早く前の席の遥斗を見る。
遥斗は翔太と話しながら、
アンジュをチラリと見てやさしく微笑むと、
直ぐに目を逸らした。
そしてルチアーノは――
(俺様は、またもやり切りました……ロクシー先生!!)
と心の中で叫んでいた。
それからもアンジュと『ラッキーマン』の交流は細々と続いた。
もちろん、裏側では、
ルシアンが全てをアンジュの為に最適化していることを
アンジュは知らずに。
そして、二月に入る。
バレンタインデーが近くなると、
学校中がソワソワしだす。
白鳥学園でも、
もちろん好きな人や、
普段口も利けないような憧れの人、
それにファンだという人達にもチョコレートを渡す。
それに他校の学生が、
校門で待ち伏せして意中の人に渡すのも定番だ。
特に“神谷伊織”に転生したルチアーノと翔太と遥斗は、
学校のアイドル的存在なので、
チョコレートの量は物凄い。
「あー面倒くさいなあ……毎年毎年!
俺様の魅力って凄まじいからなあ……」
そう、ルチアーノが弁当をつつきながら、
ため息と共に口火を切る。
――脚本通りに。
翔太がアハハと笑って言う。
「ルチアーノくん、モテるもんね!
今年は紙袋忘れないでね!」
“神谷伊織”は去年、
紙袋を用意していなくて大量のチョコレートを持ち帰る羽目になり、
散々な目に遭ったのだ。
ルチアーノが余裕で答える。
「今年は、俺様はNASA監修の折り畳みリュックを持参するから、
心配なーい☆
翔太だって超モテるだろ?
対策は考えてるのか?」
「それがさぁ……」
翔太が珍しくテンション低く答える。
「俺、バレンタインデーの日、部活なんだよね。
部活の終了時間なんて、
うちの学校の生徒なら誰でも知ってるじゃん?
他の学校の子たちも探りを入れてるみたいでさ……
逃げられそうもないよ~!」
「体育館の前と校門で待ち伏せでしょうね」
遥斗がアッサリと言う。
すると、翔太が焦った声を出した。
「ハル~!
ハルだって毎年チョコレート貰いまくってるじゃん!
何か良い方法、無い!?」
「体育館は無理でも、校門くらいなら……」
遥斗の言葉に、食いつく翔太。
「なになに!?」
「佐原先輩に聞いたんですけど、
裏門がリニューアルされたらしいんですよ。
正門と同じく、警備員さんも置いてるって。
他校の生徒なら、まず正門で待つんじゃないですか?
その方が確率高いし」
「成る程ね~!
よし、帰りは裏門にしよっ!」
その瞬間――
ルチアーノの目がギラリと光る。
そして、さり気なーく言った。
「そうなんだよな~。
橘くらい強いと、
いくら人気があっても、一睨みで済むのになあ〜」
翔太がルチアーノに向かってニカッと笑う。
「あーD組の橘くんね!
ルチアーノくん、知り合いなの?」
ルチアーノがムフフと不敵に笑う。
「俺様の家と近所でさ☆
中学の時はラグビーやってて、
高校入ったら格闘技に目覚めちゃって……今三つくらい習ってる。
それで凄く強いんだ……!!」
翔太が頷く。
「俺も知ってる!
それに超イケメンだよね!
俺、近くで見た時ビビったもん」
その言葉に、ルチアーノがパチンと指を鳴らす。
「自分もイケメンなのに他のイケメンも認める……!
流石俺様の友達、中野だ☆
中野には俺様とお揃いのNASA監修の折り畳みリュックをやろう!」
「わーい!ルチアーノくん、ありがとう!」
無邪気に喜ぶ翔太。
アンジュも橘のことは知っていた。
この乙女ゲームのキャラクターとして。
名前は橘 颯真
運動神経抜群なのに、
部活に入らず格闘技に夢中で強い。
その上、成績も上位だ。
だが、アンジュが転生した“凜花”とは、
今までの学校生活で全然接点が無かったので、
喋ったことおろか、挨拶したことも無かった。
それにアンジュの頭の中は、疑問でいっぱいだった。
――なぜ、人間は、
こんなにも聖バレンタインの祝日に夢中なのだろうか?と。
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