【32】クリスマスイベント、完全通過。〜ラッキーマン、聖夜に飛ぶ〜
翌日のクリスマスイブ。
アンジュは東京タワーのクリスマスツリーを見に行こうと決めていた。
それは――
遥斗と以前クリスマスツリーを見に行った時に、
「じゃあ、イブも見に来ませんか?」
と遥斗に言われて、アンジュは
「クリスマス・イブも一緒にここに来て、
神に感謝と聖なる祈りを捧げよう!」
と約束したからだ。
だが、何度スマホに電話をしても、遥斗は出ない。
しかし、大天使ガブリエルとして、
約束を破ることなど、神への裏切り。
そこで、
『私はこれから、東京タワーのクリスマスツリーを見に行くぞ!では現地で!』
とメッセージを送り家を出た。
東京タワーのクリスマスツリーのイルミネーションは21:30まで。
アンジュはなるべく目立つように真っ赤なダッフルコートを着て行った。
そうして、20:30に、東京タワーに着いた。
遥斗と一緒に見に来た時よりも、
当然だがクリスマスツリーの前は混雑していた。
幸せそうなカップルや家族連れ、友達同士。
アンジュは、ただ輝くツリーを静かに見つめ、
心の中で聖なる祈りを唱えていた。
そうして10分もすると、
「あなた、アンジュさん?」
と言う声と共に肩を叩かれた。
アンジュが振り返ると、
会社員らしき二人連れの女性が立っていた。
アンジュが「おう!私だ!」と答えると、
二人は一瞬後ずさったが、
「良かった~!」
と言って顔を見合わせて笑うと、
アンジュの前にプレゼント包装された袋を差し出した。
アンジュが不思議そうに訊く。
「これは何だ?」
すると、一人の女性がホッとしたように話し出す。
「それね、
さっき突然男の子に、
ツリーの前に一人でいる金髪の赤いダッフルコートを着た
『アンジュ』っていう子に渡してくれって押し付けられたの。
自分と同じ年くらいだからって言って、
走っていなくなっちゃって……。
どうしようかと思ったけど、渡せて良かったわ~!」
アンジュが高らかに告げる。
「わざわざ私を探して、
供物を届けてくれるとは!
礼を言うぞ!」
また一歩、女性たちが後ずさる。
女性たちは
「いいのよ、渡せたから!」
と笑って言うと、足早に去って行った。
アンジュはリボンを外し、袋を開けてみた。
(神の御生誕の前日の供物とは何であろう?)
という気持ちで。
思わず、青い瞳を見開く。
その袋の中には、
アンジュが『ラッキーマン』に渡した手袋と同じ柄の手袋、
そしてマフラーとクリスマスカードが入っていた。
小さなクリスマスカードを開いてみる。
いつもの妙に角張った文字。
『Merry Christmas!
あなたがいつも幸せでいるように願っています』
アンジュは辺りを見回した。
『ラッキーマン』らしき人はいない。
アンジュは人混みをぬって走り、
『ラッキーマン』を探した。
次の瞬間――
選択肢:
①「ラッキーマン……!どこなの!?」
②(……ありがとう……ラッキーマン……!お礼を言わせて!)
③「なんか……怖くなってきたんだけど……」
アンジュの目的はただ一つ。
間違いを指摘したかったのだ。
(ラッキーマンよ……!!
今日、この日に、幸せを願うべきなのは神である!)
それでも見つからず、
息が切れて丁度ひとり分空いていたベンチに座った。
そして、ふと、気づいた。
なぜ、『ラッキーマン』がここに来たのか、理由が分からない。
アンジュは遥斗と約束したことを、
誰にも話していなかったから。
そして、閃いた。
(ラッキーマンも、この東京タワーのクリスマスツリーの前で聖なる祈りを捧げたいのだな!
確かに美しく、神の誕生日に相応しい!)
そうして、
『ラッキーマン』にプレゼントされた手袋とマフラーを着けてみる。
『ラッキーマン』が現れ、
間違いを指摘出来ることを期待して。
そのマフラーと手袋は暖かかった。
アンジュはマフラーに顔を埋める。
「あったかーい♪」
『ラッキーマン』は、
アンジュがプレゼントした同柄の手袋とマフラーを
わざわざ探してきてくれたのだ。
(幸せを願う相手と日にちを間違っていたとしても、
ラッキーマンとはやはり信心深い!)
アンジュがそう確信していると、
ふわっと冷たい感触が頬を掠めて、アンジュは顔を上げた。
粉雪が降り出していた。
アンジュは傘を持っていなかったので、
コートのフードを被った。
そしてツリーの前まで歩いた。
光り輝くツリーのイルミネーションが消える。
あんなに集まっていた人びとが、
ゾロゾロと帰って行く。
アンジュは真っ暗なツリーの前で、
赤いコートを粉雪で白く染めながら、
しゃがんで神へと祈る。
その時、すっと人の気配を感じた。
アンジュが振り返ると、
アンジュの脇に透明なビニール傘が置かれてあった。
アンジュが立ち上がり、周りを見回す。
だが、誰もいない。
アンジュは黄色地に赤いチェックの手袋で、
しっかりと傘を握った。
(これは……聖なる奇跡!
神に感謝を……!!)
アンジュが広場から消えると、
一人の男が真っ暗なツリーの前に立った。
「メリークリスマス、アンジュちゃん」
ただ、またもやルシアンが現れて、
アンジュの背中にビニール傘を置こうとした寸前に、
ビニール傘を掴まれて、地面に置かれてしまったが、
それも気にならない。
遥斗はにっこり笑って呟いた。
「手袋とマフラー着けてくれて、ありがとう。
とっても似合ってたよ」
遥斗の手には、
黄色地に赤いチェックの手袋が嵌められていた。
粉雪が、ただ静かに、
遥斗の髪に肩に、降り積もっては、消えていった。
一方、理事長室では――
イレイナが世界最高級のシャンパンを開けていた。
それは
『グー・ド・ディアンモンズ/テイスト・オブ・ダイヤモンズ』
価格は、2億2千万円から、2億9千万円。
ボトルには、
19カラットのダイヤモンドと、
18金のホワイトゴールドが、
ふんだんに施されている。
イレイナは惜しげもなくシャンパンフルートに注ぐと、
水晶玉をさらりと撫で、
テンション高く言った。
「あの真っ暗なツリーの前で、
赤いコートに粉雪が舞い散って……!!
しゃがんで神へと祈るアンジュを、
学ラン姿でビニール傘から守るルシアン!!
良い画が撮れたわ❤️❤️❤️」
ロクシーとルチアーノも
強炭酸水をシャンパンフルートに注いで乾杯している。
「もう……選択肢は選ばれなかったし……!!
ルシアンが出て来た時……どうなるかと思ったけど……
ハルがルシアンに慣れてて良かったーーー!!」
そうロクシーが言えば、
ルチアーノもグビリと強炭酸水を一口飲み、
特大クラッカーと薔薇の花びらを散らしながら、
顔を真っ赤にして叫ぶ。
「流石、ロクシー先生です!
クリスマスイベント通過しましたーーー!!」
そんな中、ルシアンが静かに言った。
「ロクシーよ、怒らないのか?」
ロクシーがパチンとウインクする。
「ルシアンが傘からアンジュちゃんを守るのは想定内!
でも、ハルはもうルシアンに慣れてるからね!
気にしない確信があったの!」
「そうか」
ルシアンが無表情で一言返すと、
ロクシーの目がギラリと光った。
まさに勝機を見出した軍師の目。
「ラッキーマンは"飛んだ"!
次はまた重要アイテム……アンジュちゃんへの誕生日プレゼント確保よ……!!」
ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)
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