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「ルシアンよ!」と呼んだら乙女ゲームが崩壊しました。〜メリバ転生した大天使は最強騎士で全ルート救済する〜  作者: 久茉莉himari


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【26】勘違いが終わる時。〜両片思いが、告解になってます〜

遥斗がルチアーノとの約束の時間に、

美術部の準備室に行って、ドアをノックすると、

「鍵は開いている!入れーーー!!」

というルチアーノのやかましい声がした。


遥斗がドアを開けて、準備室へと入る。


金曜日のような、

フラスコなどを組み立てた器具は無く、

ホッとしていると――


正面の奥に、なぜか教卓があり、

その後ろに学ランに黒いマントを着たルチアーノがいた。


遥斗はもう質問をするのも面倒くさくなって、

「話って何ですか?」

と、ドアを閉めながら訊いた。


ルチアーノがコンコンと裁判官のような木槌を叩く。


遥斗はそれを見て、

あの黒マントは裁判官の雑なコスプレなんだな、と気付いた。


だが、遥斗の冷めた視線にも気付かず、

ルチアーノが意気揚々と口を開く。


「ハル!

お前はそもそも俺様とアンジュちゃんの関係を誤解している!


お前の気持ちは分かる!分かり過ぎる!

アンジュちゃんのような、

神聖で見た目も心も美しい女の子が、

俺様に惚れちゃってると誤解する気持ちは!!


だがな!!

アンジュちゃんは俺様に惚れて無いし、

俺様も初恋はまだだッ!!」


遥斗が驚きに目を見開く。


「……アンジュちゃんはルチアーノさんを好きじゃないんですか……!?」


そう声を震わせる遥斗を無視して、

ルチアーノが再びコンコンと木槌を叩くと、

美術部から繋がっているドアが開き、

アンジュが現れた。


遥斗が固まっていると、

アンジュはにこりと微笑み、高らかに告げた。


「ハルよ!

私とルチアーノは知人でしかないぞ!」


その言葉に叫んだのは――

ルチアーノだった。


「知人!?

アンジュちゃん……!!

俺様とアンジュちゃんは友達じゃないんですか……!?

酷い……俺様ショーック!!」


木槌を胸に抱き、

フラフラと椅子に倒れ込むルチアーノに、

アンジュがやさしく言う。


「そうだな!

今はクラスメイトであった!

ルチアーノは友達だ!」


ルチアーノが木槌を床に捨てて、

特大クラッカーを鳴らし、薔薇の花びらを撒き散らす。


「やったーーー!!

アンジュちゃんから友達認定頂きました〜❤️❤️❤️」


その瞬間――

遥斗が下を向き、低く言った。


「……アンジュちゃん……ごめん……」


アンジュがふわりと遥斗の前に立つ。


「ハルよ、どうした?

なぜ謝るのだ?」


遥斗が下を向いたまま、続ける。


「俺は……アンジュちゃんがルチアーノさんを好きだと思ってた……。

いつも、いつも、ルチアーノさんと一緒で……。

図書委員だって、ルチアーノさんと一緒にいたいから、

二年連続でなったんだって……!」


その時、

遥斗の瞳から涙が零れて、床にポツリと落ちた。


「あの日、告白しようとしたのは俺の方だったんだ……」


あの日とは?と考えているアンジュをよそに、

遥斗の独白は続く。


「アンジュちゃんがルチアーノさんを好きなのは分かってた。

でも振られてもいいから、俺の気持ちを伝えたかった。


だけど、先にアンジュちゃんに好きだって言われて、

友達として好きだってだめ押しされたみたいで……頭に血が上った。


だからやけくそになって、おれんちくる?って言った。

アンジュちゃんが俺に呆れて、二度と好きだなんて言わないように……」


そして、遥斗は崩れるように、床に座った。


「それなのにアンジュちゃんは俺に付いて来た。

しかも、昼寝までして……。


正直からかわれてるのかと思ったよ。


俺は混乱して……

アンジュちゃんを困らせたくなって……

寝顔を撮ったんだ……。


それで……脅しみたいなことまで言った……」


ルチアーノが木槌でバンバンと教卓を叩く。


「さては……!!

ホースで水を掛けようとしたのも……!!」


遥斗は力なく頷いた。


「……そう。

ちょっと水を掛けて……

そうしたらアンジュちゃんは、

絶対にルチアーノさんに助けを求めるって確認したかったんだ……。


馬鹿だよな、俺は……」


考え込んでいるアンジュに、

遥斗が泣きながら、笑う。


頬を伝う涙が、夕陽でオレンジ色に染まる。


「アンジュちゃんは、もう俺のことなんか忘れて。


最後まで自分勝手でごめん。


でも俺、アンジュちゃんの気持ちを知った今、自分を許せないんだ」


そして、立ち上がり、続ける。


「金曜日、一緒にクリスマスツリーを見てくれてありがとう……。

幸せな勘違いをありがとう……。


さよなら、アンジュちゃん!」


そう言い残し、準備室から駆け出して行く遥斗。


次の瞬間――


選択肢:

①「ハル……!待って!」

②「そんなの、気にしてない!」

③「私の気持ちはどうでも良いの!?」


ロクシーの軍師の目が、

パソコンに釘付けになる。


「アンジュちゃん……いくらなんでも……あのハルの話を聞けば……!!

ここはボーナススチル場面だよ!!」


アンジュが叫ぶ――


「ルシアンよ!」


「はい!」


0.23秒で現れ、跪くルシアン。


「私を連れてハルを追うのだ!

まだ『あの日』がどの日なのか、私には分からない!

ハルに訊かなければ……!!


でなければ、

ハルの告解を聞いたとしても、

ハルに本当の神の許しを与えられない!」


ルシアンのヘイゼルグリーンの瞳がギラリと光る。


それは大天使の戦士の眼。


そして、ルシアンは誓うように胸に手を当てて応える。


「……御意……!」


そうしてルチアーノの前から、

一陣の風と共に、アンジュとルシアンが消え去った。




一方、理事長室では。


強炭酸水片手にロクシーが怒り狂っていた。


「いくら……いくら……アンジュちゃんが敬虔なカトリック教徒でも!

いくら、恋愛偏差値ゼロでも……!


あのハルの告白を聞いて、何で『告解』になるのよ!?


ハルは神の許しが欲しいんじゃないッ!

あれは恋!

両片思いの決定的な場面なの!!

違う!?」


ロクシーの絶対零度の視線が突き刺さり、

立ったままピョンと跳ねるルチアーノ。


ルチアーノがそそくさとロクシーの前に

『ルシアン特定水晶玉』を置く。


そして頭の天辺から大量の汗を吹き出しながら言った。


「ルシアンならば、ここにおります!!」


ロクシーが盛大な舌打ちをしながら、

水晶玉を覗き込む。


そこには――

遥斗の家の玄関のドアを、

高速でノックしているルシアンがいた。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

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