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境界のソフィア ~人類最後の希望はAIが理解できない力でした~  作者: あかと


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出会い


「その火の球は何!? 何なの!? 教えてよ!?」


 茶髪の少女は身を乗り出した。


「ねえ! どうやったの!?」


「……」


「火炎放射器みたいなもの?」


「違う」


「隠し兵器?」


「違う」


「じゃあ何?」


 茶髪の少女は目を輝かせていた。


 警戒心というものがないらしい。


 ソフィアは少し呆れた。


「どうしてそんなことを聞くの?」


「だって見たもん」


 少女は即答した。


「昨日も一昨日も」


 疑いを深めたソフィアの目が細くなる。


「……私を付けてたってこと?」


 茶髪の少女は慌てて両手を振った。


「あ、違う違う!」


「別に襲おうとしてたわけじゃないから!」


「じゃあ何」


「観察?」


「気持ち悪い」


「ひどい!」


 茶髪の少女は本気で傷付いた顔をした。


 だがすぐに咳払いする。


「その……」


「最初はAI信奉者かと思ったんだよ」


 ソフィアは黙って聞く。


「ほら、あのAIの手先みたいな人達」


 ソフィアは顔をしかめた。


「あんなのと一緒にされるなんて心外だわ」


「だから様子を見てたの」


 茶髪の少女は肩をすくめた。


「でも違った。大型モニターを見て『気持ち悪い』って言ってたし食料を探してる時も普通だったし、アニマル型に襲われた時も必死だったからね」


 そこで茶髪の少女は笑った。


「だから大丈夫かなって」


 ソフィアは小さく息を吐く。


 なるほど。


 だから昨日のスーパーでも気配がしたのか。


 あれはこの少女だったらしい。


 少女は名乗る。


「私はマリー・ウィルソン。マリーって呼んでね。あなたは?」


「ソフィア・ヘイハースト」


 急にフルネームを名乗る茶髪の少女に対して、少しは相手を疑いなさいよと不安を覚えたが、ソフィアも考え直す。


 こんな世界になったんだ。


 フルネームだろうがなかろうが余り変わりはしないだろう。


「へぇ」


 マリーは何度か頷き、右手を差し出した。


「よろしく」


「まだ仲良くなるとは言ってない」


 即答だった。


 ソフィアは右手を握り返しもしなかった。


 マリーは苦笑する。


「警戒心が強いなぁ」


「当然でしょ」


 こんな世界だ。


 信用できる人間など、そう多くはないだろう。


 マリーも理解しているのか、それ以上は言わなかった。


 その代わり。


「でもさ、ここにずっといるのは危ないよ。アニマル型が戻ってくるかもしれないし」


 ソフィアは周囲を見る。


 確かにその通りだった。


 あの機械は完全には破壊できていない。


 また現れる可能性はある。


「隠れ家があるの」


 マリーが言った。


「来る?」


「行かない」


「……その炎、もしかしたら強化できるかもしれないと言っても?」


「……」


 ソフィアは少し考える。


 怪しい。


 だけど、今までの会話でマリーに敵意がないことはわかる。


 寧ろ私に対しての警戒心が薄すぎて心配になるくらいだ。


 いくらある程度は見ていたからって、そんなに早く他人を信用できるものだろうか?


 しかし、炎が強化できるのは魅力的だ。


 もしなにかあれば炎を投げて逃げればいい


 そう考えたソフィアは口を開く。


「……案内して」


 マリーはぱっと笑顔になった。


「うん!」


 二人は鉄扉の奥を進み始める。


 薄暗い通路。


 古い地下施設だった。


 しばらく歩いた先で明かりが見える。


 電球だ。


 まだ電気が生きているらしい。


 そして。


 一つの部屋へ辿り着く。


 工具。


 機械部品。


 配線。


 作業台。


 まるで工房だった。


 その中央で。


 一人の老人が椅子に座っていた。


 白髪。


 深い皺。


 作業着姿。


 老人はゆっくり顔を上げる。


 そしてソフィアを見る。


「ほう」


 低い声だった。


「客か」


「うん!」


 マリーが元気よく答える。


「仲良くなったの!」


「なってない」


 ソフィアは即座に言った。


 老人は少し笑う。


 そして立ち上がった。


「ジャンだ。みんなからはジャン爺と呼ばれとる」


 老人はソフィアへ手を差し出した。


「よろしくな」


 ソフィアは少し迷う。


 だが。


 ゆっくりとその手を握った。


 温かかった。


 久しぶりに触れた人の手だった。


「ソフィアです」


 ジャン爺は頷く。


 そして。


 ふとマリーを見るとふくれていた。


「私とは握手しなかったくせに」


 ソフィアは知らないフリをする。


 マリーは無言で右手を差し出し続けていた。


「……」


「……」


 ソフィアは根負けする。


「悪かったわよ」


 そう言って、マリーの右手を握り返した。


「えへへ」


 ご満悦のマリーはジャン爺に向かって勢いよく喋り出した。


「ねえこの子ね、手から火の球を出したの!」




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