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境界のソフィア ~人類最後の希望はAIが理解できない力でした~  作者: あかと


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不穏な痕跡


 帰り道。


 三人の足取りは重かった。


 空は灰色。


 風も冷たい。


 マリーが口を開く。


「まさか本当にいるとはね」


 聖機教団。


 落書きだけの存在ではなかった。


 人間がいた。


 思想を持った人間が。


 ジャン爺も難しい顔をしている。


「厄介じゃの。しっかり洗脳されとったわ」


 隠れ家へ戻り、扉を閉める。


 ようやく緊張が少しだけ解けた。


 工房へ移動する。


 マリーは椅子へ腰を下ろした。


「でも魔導銃は大成功だったね」


「そうじゃの」

 

 ソフィアは机の上へ置かれた魔導銃を見る。


 今日の戦闘は結果だけ見れば圧勝だった。


 アニマル型も問題なく撃破できた。


「実戦投入は成功じゃな」


 ソフィアも肯定の返事をする。


「うん」


 火魔法だけの頃とは違う。


 火球を保存できる。


 魔力が無くても撃てる。


 威力もある。


 魔導具は確実に戦力だった。


 しかし。


 問題が消えたわけではない。


 聖機教団。


 あの男。


 そして修理されたアニマル型。


 人間側にも敵がいる。


 その事実が重かった。


 夕方。


 食事を終える。


 今日も保存食だった。


 静かな食卓。


 やがてマリーが言った。


「ねえ、これから探索範囲を広げない? 魔導銃も出来たし、これなら前よりも安全に探索できるんじゃないかな?」


 その提案にジャン爺が腕を組んだ。


「ふむ。しかし時期尚早かもしれんの。聖機教団のこともある」


 意見は分かれた。


 今なら魔導銃がある。


 以前よりは確かに安全だ。


 だが。


 敵も見つかった。


 隠れ家の位置が知られる危険もある。


 しばらく話し合う。


 結論は出なかった。


 その時だった。


 モニターが鳴る。


 ピッ。


 三人の視線が向く。


 監視用カメラだった。


 ジャン爺が操作する。


 画面が切り替わる。


 映ったのは隠れ家周辺。


 夜の道路。


 何もない。


 そう思った。


 だが。


 ソフィアが目を細める。


「止めて」


 ソフィアに言われてジャン爺が映像を停止した。


 道路脇にある木の幹。


 そこに何かがあった。


 小さな印。


 白い塗料。


 マリーも気付く。


「あれ?」


 ジャン爺が映像を拡大した。


 三人は黙る。


 見覚えがあった。


 IMSの紋章だった。


 小さい。


 だが間違いない。


 誰かが描いた印。


 ソフィアの表情が変わる。


 冷たくなる。


「いつ?」


 ジャン爺が記録を確認した。


「今日じゃ」


 空気が重くなった。


 誰かが近くまで来ている。


 しかも。


 隠れ家周辺に。


 マリーの顔色が悪くなる。


「見つかった?」


 ジャン爺は首を振った。


「まだ分からん」


 だが安心もできない。


 偶然かもしれない。


 探索してるだけかもしれない。


 可能性はいくらでもあった。


 ソフィアは立ち上がる。


「確認してくる」


 マリーも立った。


「私も行く」


 ジャン爺が懐中電灯を渡した。


「気を付けるんじゃぞ」


 夜。


 二人は外へ出た。


 風が強い。


 木々が揺れる。


 懐中電灯の光だけが道を照らしていた。


 慎重に進む。


 やがて問題の場所へ到着した。


 木の幹に白い印でIMSの紋章が刻まれている。


 映像の通りだった。


 マリーが近付く。


「誰かが描いたんだね」


 ソフィアは周囲を見る。


 足跡はない。


 物音もない。


 だが。


 違和感があった。


 印の下。


 地面に何かが落ちている。


 小さな紙片だった。


 ソフィアが拾う。


 汚れている。


 だが文字は読めた。


『観測地点A』


 二人は顔を見合わせた。


 マリーが息を呑む。


「観測?」


 ソフィアは紙を見つめた。


 聖機教団。


 IMS。


 観測地点。


 嫌な予感しかしない。


 これは落とし物ではない。


 記録だ。


 誰かが残した記録。


 つまり。


 周辺には他にも観測地点がある可能性が高かった。


 冷たい風が吹く。


 ソフィアは紙を握り潰した。


 新しい問題だった。


 聖機教団は近くにいる。


 それも想像以上に近く。


 静かに。


 確実に。


 聖機教団は何かを始めようとしていた。




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