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境界のソフィア ~人類最後の希望はAIが理解できない力でした~  作者: あかと


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13/16

改良


 朝方、工房の灯りがまだ点いていた。


 ソフィアは食堂へ向かう途中で足を止める。


 嫌な予感がした。


 扉を開く。


 予感は当たった。


 マリーが机に突っ伏している。


 ジャン爺は椅子に座ったまま眠っていた。


 工具。


 設計図。


 部品。


 工房は完全な戦場だった。


「また寝てないの?」


 ソフィアが聞く。


 マリーがゆっくり顔を上げた。


「少しは寝たよ」


 目が死んでいた。


 ジャン爺も目を擦る。


「二時間は寝たの」


 本当に少しだった。


 ソフィアは呆れる。


 朝食後。


 工房へ移動する。


 机の上には新しい魔導弾が並んでいた。


 前回とは少し形が違う。


 側面の魔法陣も複雑になっている。


 ソフィアが一つ持ち上げる。


「変わった?」


 マリーが頷く。


「かなり」


 ジャン爺が補足した。


「魔法陣を作り直したんじゃ」


 保存。


 維持。


 固定。


 幾つもの役割を持つ魔法陣らしい。


 ソフィアは半分も理解できなかった。


 マリーが笑う。


「簡単に言うと魔法が逃げにくくなった」


 それなら分かる。


 前回の問題は魔法が消えたことだ。


 時間が経つと魔導弾の中身が抜けてしまう。


 使う前に空になる。


 それでは意味がない。


「試したの?」


 ソフィアが聞く。


 マリーは首を振る。


「まだ」


 ジャン爺が魔導弾を指差した。


「今日が本番じゃ」


 昼前。


 三人は再び林へ向かった。


 試射場所は以前と同じだった。


 倒木。


 岩。


 開けた空間。


 危険は少ない。


 ソフィアは魔導銃を構える。


 改良型魔導弾を装填。


 狙いを定める。


 引き金を引く。


 パンッ。


 轟音。


 魔導弾が飛んだ。


 火球が現れる。


 そのまま倒木へ直撃。


 爆ぜる。


 木片が舞う。


 前回と同じ威力だった。


 マリーが拳を握る。


「よし!」


 ジャン爺も頷いた。


「問題はここからじゃな」


 そこから待った。


 一時間。


 二時間。


 昼食を挟む。


 さらに待つ。


 午後。


 再び魔導弾を装填した。


 引き金を引く。


 

 火球が飛ぶ。


 問題なし。


 マリーが飛び上がった。


「成功!」


 まだ終わらない。


 夕方。


 さらに確認。


 結果は同じだった。


 魔法は消えていない。


 威力も落ちていない。


 ジャン爺が大きく息を吐く。


「ようやく完成じゃな」


 ソフィアも少し安心した。


 これなら使える。


 実用品だ。


 魔導具がただの試作品ではなくなる。


 帰り道。


 マリーはずっと機嫌が良かった。


 鼻歌まで歌っている。


「そんなに嬉しい?」


 ソフィアが聞く。


 マリーは即答した。


「嬉しいよ」


 夕日が差し込む道を歩く。


 マリーは前を向いたまま話す。


「だってさ、初めて未来に向かってるって感じがするじゃん」


 マリーは照れたように笑った。


 ソフィアは黙る。


 マリーの言葉を考える。


 未来。


 確かにそうだった。


 この三年。


 生き残ることばかり考えていた。


 食料。


 水。


 寝床。


 明日を迎えること。


 それだけだった。


 でも今は違う。


 何かを作っている。


 明日より先を見ている。


 それは大きな違いだった。




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