表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界のソフィア ~人類最後の希望はAIが理解できない力でした~  作者: あかと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/16

試射


 地下施設の工房。


 机の上には魔導銃が置かれていた。


 金属製の銃身。


 側面には魔法陣。


 見た目は銃だ。


 だが中身は普通ではない。


 マリーが胸を張る。


「完成版だよ!」


 ジャン爺も満足そうだった。


「昨日より改良したからの」


 ソフィアは魔導銃を手に取る。


 思ったより軽い。


 引き金に指を掛ける。


 しかし何も起きない。


「撃てない」


 マリーが笑った。


「まだ登録してないもん」


 そう言うと銃の側面を指差した。


 小さな装置が付いている。


「指紋認証」


 ソフィアは少し驚いた。


 終末世界で聞く単語ではない。


 ジャン爺が説明する。


「誰でも使えたら危険じゃからな」


 確かにその通りだった。


 ソフィアは指を乗せる。


 小さな音が鳴る。


 登録完了。


 マリーが満足そうに頷いた。


「これでソフィア専用!」


「試してみる?」


 ソフィアは即答した。


「もちろん」


 三人は施設の外へ向かった。


 空は曇っていた。


 風が少し冷たい。


 試射場所は以前と同じ林だった。


 倒木が転がっている。


 ソフィアは魔導銃を構えた。


 マリーが魔導弾を差し出す。


 金属製の小さな弾。


 内部には火球の魔法が封じられている。


 らしい。


 見た目では分からない。


「本当に撃てるの?」


「試射した時は大丈夫だったよ!」


「本当に?」


「うん!」


 マリーが自信満々すぎて、ソフィアは少し不安になった。


 ジャン爺が笑う。


「なに、大丈夫じゃ。銃自体は耐えられるようになっとるから、爆発するとしても撃った先の方じゃ。指を失ったりすることはないわい」


 余計不安になる。


 爆発する可能性を含めないでほしい。


 それでも試さない理由はない。


 弾を装填する。


 狙いを定める。


 倒木。


 距離は二十メートルほど。


 引き金を引いた。


 パンッ。


 乾いた音。


 次の瞬間。


 轟音が響いた。


 火球が飛び出したのだ。


 倒木へ直撃。


 赤い炎が広がる。


 木片が吹き飛んだ。


 熱風が頬を撫でる。


 三人とも固まった。


 数秒後。


 マリーが叫ぶ。


「成功したー!」


 飛び跳ねている。


 ジャン爺も目を丸くしていた。


「想像以上じゃな……」


 ソフィア自身も驚いていた。


 威力が高い。


 普通に火球を撃つのとは少し違う。


 魔法が圧縮されているような感覚だった。


 倒木は黒く焦げている。


 中心部は砕けていた。


「威力が強くなってる」


 マリーが得意げな顔をする。


「でしょ?」


 その後も試射は続いた。


 二発。


 三発。


 四発。


 結果は上々だった。


 ただし問題も見つかった。


 五発目。


 引き金を引く。


 しかし不発だった。


「あれ?」


 マリーが首を傾げる。


 ソフィアも確認する。


 壊れてはいない。


 弾も正常だ。


 ジャン爺が魔導弾を分解した。


 数分後。


 原因が判明する。


「魔力じゃな」


 ソフィアが顔を上げる。


 ジャン爺は弾の内部を指差した。


「魔法が抜けとる」


 つまり。


 時間経過で消えた。


 マリーが頭を抱える。


「保存できてないじゃん!」


 せっかく完成したのに。


 ソフィアは逆に冷静だった。


 失敗ではない。


 問題点が見つかっただけだ。


 研究ではよくある話だ。


「何日くらい保つの?」


 ジャン爺が答える。


「まだ分からん」


 マリーも頷いた。


「検証しないとね」


 新しい課題ができた。


 だが三人とも少し楽しそうだった。


 昼過ぎ。


 帰り道。


 ソフィアは魔導銃を眺めていた。


 魔法。


 技術。


 別々だったものが混ざり始めている。


 もし改良が進めば。


 もっと強くなる。


 もっと便利になる。


 戦う力になる。


 そして。


 人類が生き残る力になるかもしれない。


 地下施設へ戻る。


 昼食は保存食のスープだった。


 温かい湯気が立つ。


 マリーは食べながら設計図を書いている。


 ジャン爺は修正案を考えている。


 二人とも完全に夢中だった。


 ソフィアは少しだけ笑った。


「また寝不足になるわよ」


 マリーはスプーンを止める。


「大丈夫!」


 その目の下には薄いクマがあった。


 全然大丈夫ではない。


 ジャン爺も同じだった。


 ソフィアは呆れる。


 だが悪い気分ではなかった。


 研究施設にいた頃。


 一人だった。


 今は違う。


 何かを作る仲間がいる。


 夕方。


 工房からマリーの大きな声が響いた。


「ジャン爺!」


「なんじゃ!?」


「思いついた!」


「またか!」


 ソフィアは本を閉じる。


 どうやら静かな夜にはならないらしい。


 それでも。


 少しだけ口元が緩んだ。


 魔導具。


 まだ未完成。


 だが確実に前へ進んでいる。


 一方、その頃。


 遠く離れたオックスフォード市街。


 一機の監視用ドローンが、焼け焦げた倒木を発見していた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ